ベッドだけきれいなのは、なぜかしら?
片付けとか、断捨離とか、丁寧な生活とか。そういうものとは縁遠い。
オーガニックと聞けば鳥肌が立つ、無添加と見れば恐れおののく。
わたしは、びっくりするくらいそういうのに疎い。
歳を重ねると、SNS上でのみ繋がっている友人たちの投稿は、どんどん無毒になっていった。
無邪気な子供の笑顔や、整ったキッチン、美しい焦げ目のついたキッシュ。
LINEのアイコンも子供の写真に変わっていて、実名で表示されない人はたまに「誰!?」となってしまう。
とにかく、わたしはずっと不健康に生きている。
酒もタバコも嗜み、好きな食べ物は居酒屋の軟骨唐揚げだ。
会社に勤めている理由のひとつは家事が苦手だから。
片付けは苦手なので、思いついたら全部捨てる。断捨離よりも、ずっと暴力的な捨て方で。
生き方そのものが、丁寧さとは程遠く、そして散らかっている。
そんな雑然とした生活を送るわたしが、一人暮らしをしている時から続けていることがひとつだけある。
ベッドメイクだ。
シーツをピシッと張って、3つある枕の高さを揃え、掛け布団の端と端を揃える、
たったこれだけ、続いている。
別にこだわりがあるわけではない。毎日でもないし、やらない日が続くこともある。
でも、これをやった日の夜は気持ちがいい。
その昔、江國香織の小説で毎日ベッドメイクして仕上げにアイロンをかける描写を見かけた時から、これだけはほんの些細な習慣として続いている。
きっとこの先、わたしが年老いても、きっと生涯ガサツな生活をおくるだろう。丁寧な暮らしとは程遠く、オーガニックに縁がない酷い生活を。
しかし、ベッドメイクは続けるかもしれない。これが、雑然としていてジャンクな生活を送っている私の、ささやかな習慣。
「なぜかしら。ぐちゃぐちゃな生活の中で、突然整ったベッドがでてくると、なんだかざまあみろって気持ちになるのよ。」