見出し画像

2022神戸大国語/第一問/解答速報

【2022神戸大国語/第一問/解答速報】

出典は飯田隆『分析哲学 これからとこれまで』。

問一「哲学のための十分な言語を作り出すことのむずかしさ」(傍線部(ア))とあるが、どういうことか。80字以内で説明しなさい。

〈GV解答例〉
明治初期に西洋に由来する哲学的主題を議論する上で、儒仏に由来する漢語を転用しつつ、他の文学より一般的で抽象的な概念を表す言葉を生み出すという困難に迫られたこと。(80)

〈参考 S台解答例〉
伝統的な儒教や仏教とまったく異なる新しい観念の世界が広がっている西洋哲学の受容には、従来の一般的で抽象的な言葉と概念とは異なる特殊な語彙が求められたということ。(80)

〈参考 K塾解答例〉
西洋哲学という新たな観念世界を近代の日本に定着させるには、その主題や問題を表現しうる非日常的な抽象概念を表す語彙を、短期間で作るという困難が伴ったと言うこと。(79)

〈参考 Yゼミ解答例〉
哲学は日常語とは異なる抽象的で特殊な言葉を必要とするために、西洋哲学の概念を日本に移入する際に、儒教や仏教とは異なる語彙を短期間につくる必要があったということ。(80)


問二「こうした文を生み出したひとが、その意味を説明できない」(傍線部(イ))とあるが、それはなぜか。80字以内で説明しなさい。

〈GV解答例〉
元来、西洋由来の哲学的概念を漢語を転用しつつ翻訳した哲学用語が、日本語の一部として定着することで、元の概念との意味対応が意識されないまま流通するようになるから。(80)

〈参考 S台解答例〉
西洋哲学の用語が日本語の一部として確立し、意味を正確に理解せずとも使えるために、人はその用語で西洋哲学の原語を置き換えるだけで理解したと錯覚しているだけだから。(80)

〈参考 K塾解答例〉
哲学を専門とする者が、西洋の哲学用語を性急に日本語に置き換えて作りだした哲学的文章を、たんにそれも日本語だという理由で理解したような錯覚に陥っているだけだから。(80)

〈参考 Yゼミ解答例〉
西洋哲学の用語を一つ一つ日本語に翻訳した文は、言葉を機械的に置き換えただけで、実は翻訳者自身も原語の概念の正確な意味を十分了解していないまま書かれたものだから。(80)


問三「その底には、哲学観の変化がある」(傍線部(ウ))とあるが、どういうことか。80字以内で説明しなさい。

〈GV解答例〉
秘教的だった哲学を日常の問いに開こうとする動きが、抽象名詞に頼らずその動的用法に注目し、自分の責任で日常に適う哲学用語を使用する哲学者の態度を促したということ。(80)

〈参考 S台解答例〉
日本語の哲学の文章から抽象名詞が減ったのは、哲学用語の使用法を意識し、哲学は日常語に近い言葉で議論する、普通の人のためのものでもあるという認識によるということ。(80)

〈参考 K塾解答例〉
西洋の概念を翻訳した抽象名詞ではなく、日常的で具体的な言葉を用いる動きは、閉鎖的だった哲学を万人に理解可能なものにしようとする意識に支えられているということ。(79)

〈参考 Yゼミ解答例〉
日本の哲学の文章が漢語の多い難解なものから日常語を多用したものに変化した背景に、哲学は学者だけでなく一般の人も対象とするべきだとする考えの変化があるということ。(80)


問四「またしても皮肉なことに、一般の読者のための優れた哲学書を生み出せるほどに日本の哲学言語が成熟したまさにそのときに、この言語に未来はないということになる」(傍線部(エ))とあるが、どういうことか。本文全体の論旨をふまえたうえで、160字以内で説明しなさい。

〈GV解答例〉
文学の分野で、多くの試行錯誤の末、日本語の文学言語が確立した今、グローバル化がその使用を無効化するように、半世紀を経て哲学言語が成熟し一般の読者に哲学が届くようになったこの時代に、同時に進行した哲学の専門化に伴う国際化の帰結として、文学の一分野である哲学でも、それを日本語で表現することの意味が失われつつあるということ。(160)

〈参考 S台解答例〉
日本の近代文学は、日本語で書かれた国民文学に適した文学言語を作り出せた現在、英語のグローバル化による独占的優位を背景に、将来の存在意義が危惧される。同様に、日本の哲学においても、普通の人にも通じる平易な日本語の哲学言語が熟した現在、共通言語として英語を採用する哲学の国際化を背景に、将来の存在意義が危惧されるということ。(160)

〈参考 K塾解答例〉
近代的主題を表現できる日本語が根付いた頃に、英語を中心とする世界文学において日本文学が意義を失いつつあるのと同様に、日常的な語彙で一般の人々に語りかけるというあるべき姿に近づいた哲学的な日本語が、専門化が進むことで英語を共通言語として用いるようになっている哲学の趨勢のなかで、将来性を見出しにくくなっているということ。(159)

〈参考 Yゼミ解答例〉
日本の近代文学は多くの試行錯誤の末に、比較的自在に使える文学言語を所有した時点で、グローバル化の中での少数読者の言語として将来性を失う皮肉な道を辿った。同様に、哲学言語は、平易な日本語で一般読者に哲学の本質を問えるようになったが、同時に哲学が国際化した結果、日本独自の哲学表現は使われなくなる運命になるだろうということ。(160)


問五 (漢字の書き取り)
(a)変貌 (b)芝居 (c)漠然 (d)完璧 (e)膨大

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?