本物より美しいバラの絵
昨日に引き続き、「クリエイティブ」
に関する話。
「頭の中で視覚化したものを書く」
というお題を与えられ、20分という
制限時間内でひたすら書いてみる、
という経験をした。
「視覚化」と聞くと、何だか堅い、
難しそう、そんな印象を持つかも
しれない。
というか、少なくとも私はちょっと
苦手意識を刺激された。
「絵心がない」というトラウマにも
似た感情を持っているので、昨日も
触れたVAKでは「Visual優位」である
にも関わらず、どこか心に引っ掛かる
のである。
でも、実際やってみると、意外と
出来なくもないし、興味深い。
今回のお題は、
「見憶えのある〇〇」
〇〇は自分で自由に埋めて、視覚化
を意識して書きましょう!という
ことだった。
少し考えた末、私はテーマに
「見憶えのあるバラ」
を選び、過去の記憶をたどりながら
懐かしいバラの絵との邂逅を心に
思い描き、その時の記憶を時系列で
文章にしたためた。
15分ほどかけて、約900字の作品が
出来上がる。
タイピングや音声入力ならば、
1.5倍、2倍の文字数まで行けそうだ
が、手で書いたのでこの辺が限界
であった。
記憶を元に頭の中で「視覚化」し、
そこにあるものの様子や、登場する
人物のセリフ、そしてそのしぐさ、
様子、周囲の状況、そういった情報
をひたすら文章化していったので
あるが、確かにとてもラクに書く
ことができる。
テクニックを弄することに意識を
使うこともなく、ただただできる
限り忠実に、頭の中に描いた様子
を文字に起こすだけで、意外と
スラスラと文章を書けるという
ことに驚かされた。
「視覚化」された情報は、3次元
で、なおかつ色も付いており、
更には動きまで付け加わっている。
とにかく情報量が多いので、
それらを2次元変換すると、文字
数にして相当な量になるのである。
さて、そこで書いた文章の主役の
話を少しさせてもらう。
私が頭の中で視覚化した場面、
それは、東京ビックサイトで
開かれていたギフトショー会場を
うろうろと歩き回っていたときの
様子である。
そこで出会ったのが、とても
美しいバラの版画をコレクション
していた方の展示。
その時に感じた「既視感」、
交わした会話などを、未だに
憶えている。
それ位、良い意味で印象深い
出来事だったのだ。
その版画というのは、ルドゥーテ
の手によるもの。
エレガントで、観る者の心を
捉えて離さない魅力がある。
このルドゥーテという宮廷画家の
名前は、どこかで聞いたことは
あるだろうか?
最初はマリーアントワネットに、
その後はナポレオンの妻である
皇妃ジョゼフィーヌに重用された
花の版画家である。
名前は知らずとも、彼の作品を
見ればおそらく「見憶えのある」
既視感を多くの人が抱くはず。
彼は、『バラ図譜』、『美花撰』
などの版画作品集で知られ、
日本では河出書房新社が渾身の
作品集を出版してくれている。
表紙にあるこのバラ、見たことが
ある人は手を挙げて!
と言いたいところだ。
半分以上の人は手を挙げてくれる
のではないかと思う。
あまりにも美しいこの版画、
「本物よりも美しい」
と評価する者も多くいたという
から驚きだ。
当時、パリには世界中からありと
あらゆるバラの品種が集められて
いた。
ジョゼフィーヌのわがままを
ナポレオンが聞いてあげたから、
ということらしいのだが、
とにかくパリ郊外のバラ庭園にて
もの凄い数のバラが育種されて
いたのである。
そして、それらのバラの美しさに
魅せられ、品種ごとに一つひとつ、
丁寧に版画を作り込んでいった
男が、このルドゥーテであった
のだ。
詳しい話は、上記『バラ図譜』や
下記のサイトで確認できる。
興味を持たれたら、訪れてみて
欲しい。