今年の全日本DM大賞グランプリ
リクルートのスタディサプリ。
「スタサプ♪」というジングルを
広告で聞いたことのある人も
多いものと思われる。
去る3月5日に発表された、第35回
全日本DM大賞でグランプリに
輝いたのが、この「スタサプ」の
ラインナップのうちの一つ、
「ENGLISH法人サービス」という
オンライン英語学習プログラムの
DMだった。
このDMの目的は、上記のオンライン
学習プログラムの法人契約を獲得
すること。
宛先は、大企業の人事部長。
オンラインゆえに、研修コストが
削減できるというメリットを、
どのように訴求すれば効果的かを
考えたようだ。
実行に移した案は2つ。
1つは、研修コストを「削る」ところに
引っ掛けて「鰹節」を同梱したDM。
もう1つは、オンラインと対比する上で
アナログ学習を代表する「単語帳」を
模したDM。
これら2種類のDMを実際に送付した
ところ、資料請求は従来の40倍へと
アップしたという。
更には、申し込みに至った大企業も
32社に上るなど、非常に効果的な
DM施策となった様子だ。
今回の施策を見て真っ先に感じた
ことは、ターゲットとして
「大企業の人事部長」
を明確に想定した上で、
その人物像、言い換えればペルソナを
かなり具体的に想像してDMを作った
のではないか、という点である。
研修コストが「削れる」から
「鰹節」を同梱という、
ベタベタなオヤジギャグ的センス。
これを喜んでくれそうな人たちが
ターゲットなのだ、ということを
明確に想定していたと思われる。
もう片方の「単語帳」も、最近の
若者がどこまで利用しているのか
甚だ怪しいと思うが、少なくとも
大企業の人事部長レベルの方々が
学生時代だった頃(20~30年前?)
はよく使われていたはずで、かなり
懐かしさを感じさせるアイテムで
あることは間違いない。
以前は大判ハガキのシンプルなDM
だったようだが、今回は鰹節だの
単語帳だの、非常に凝ったDMを
送り、その効果が「飛躍的に向上」
したと評価されている。
効果の数字的な検証ができるほど
情報が開示されていないが、
ごく簡単にシミュレーションを
してみよう。
資料請求が40倍、大企業の申し込みが
32社とあるので、仮に、資料請求から
申し込みへのコンバージョンを2割と
すると、160社ほどから資料請求が
あったことになる。
160÷40=4、あくまで仮定だが、
以前は資料請求がたったの4件という
計算だ。
何通DMを送ったかについても
手掛かりがないが、仮に大企業の
数として上場企業数をあてがう。
日本取引所グループの情報では、
2月末時点で3,759社とある。
既に顧客となっている会社や、
過去に離反済の会社などを除き、
ザッと3,000社に送ったとしよう。
以前は、4÷3,000=0.13%の反応率が、
今回は、160÷3,000=5.3%となる。
あくまで一般論としてだが、DMで
5%の反応があるのは相当すごい。
ここで、かけた費用に対する効率が
どうだったかも気になるところ。
これも、フェルミ推定よろしく
適当に試算してみる。
以前の大判ハガキは、
・切手代 63円×3,000通=189,000円
・印刷代 50円×3,000通=150,000円
・デザイン費 一式100,000円程度?
合計 439,000円。
今回の施策は、
・切手代 94円×3,000通=282,000円
・制作物 100円×3,000通=300,000円
・鰹節代 150円×3,000通=450,000円
・デザイン費 一式1,000,000円位?
合計 2,032,000円。
せいぜい5倍程度の費用で済むのでは
ないか、との試算になった。
完全に当てずっぽうだが、
当たらずとも遠からずのはず。
費用5倍で効果40倍なら、十分投資に
値するだろう。
情報が足りないので、ROIの計算などは
さすがに出来ないが、この程度の情報
でも、費用対効果の面でバッチリ成果が
出ているとの見込みはつく。
このDM大賞、ちゃんと成果が出ている
ことが受賞の条件にもなっており、
ただ目立つとか、奇抜というだけでは
勝てない。
「鰹節」を送るなんて聞くと、その
奇抜さがつい目立ってしまうが、
きっちり数字の検証がされて、
効果が着実にあったという点にこそ
注目すべきだろう。