「ストーリー」が人を動かす
昨日の記事で取り上げた『説明の技術』
という本の中で、「ストーリー」の
重要性について書かれていた。
「ストーリー」が人の琴線に響くという
話は、今さら取り上げるまでもないかも
しれないほど、良く語られているのが
事実であろう。
コミュニケーションの切り口でも、
あるいはマーケティングの切り口からも、
「ストーリー」を活用することで
高い効果を得られる。
その「ストーリー」の重要性を語る
パートにおいて、興味深いデータが
引用されていた。
『TED』は皆さんもご存知だと思うが、
念のため補足説明をこちらに書いておく。
「Ideas worth spreading(広める価値のあるアイデア)」
というスローガンの下、
短くも力強いプレゼンテーションを通じて、
それらアイデアを広めようとする
アメリカのNPOメディア。
元々は、
Technology(テクノロジー=技術)
Entertainment(エンターテインメント=娯楽)
Design(デザイン)
の分野に特化するということで、
頭文字を取って『TED』なのだが、
今やカバーしていない分野はない。
その『TED』において、特に評価が高い
プレゼンテーション500本を分析して、
構成要素が何であるかを研究した、
ハーバード大の講師がいた。
その結果によると、なんと話の65%が
「ストーリー」で出来ていたというのだ。
ちなみに、残り25%は「論理的な話」、
10%は「話し手の人柄についての話」で
構成されていたそうである。
「ストーリー」こそが、人の記憶や感情を
大きく揺さぶり、粘り強く訴えかける
ということを如実に示している。
「ブランド」を作る上では、
正に「ストーリー」が極めて重要な
カギを握る。
少し思い返すだけでも
ルイ・ヴィトンのトランクは、タイタニック号の沈没後に引き揚げられた後も、中身が濡れていなかった。
ロレックスの「オイスター」は「どんなに長い間水中にあっても部品が損なわれない」という事実から名付けられた。イギリス人女性で初の快挙となるイギリス海峡横断をメルセデス・グライツが成し遂げた際、その腕にあったロレックスが正確に時を刻んでいたことから、その名声は一層高まった。
というような話がすぐに出て来る。
こういったストーリーは、ブランドに
対する信用、信頼の証として、
長く記憶に残りやすい。
リッツ・カールトンや帝国ホテル、
加賀屋旅館のような宿泊施設、
フェラーリやポルシェのような車、
「ブランド」と呼ばれるものには
必ずと言ってよいほどその裏に
「ブランド・ストーリー」を
抱えているものである。
先日、尊敬する知り合いのご子息が
某商社をやめて日本酒の蔵元で
働いているというお話を伺った。
その蔵元が、富山県にある白岩酒造。
そして、作っているお酒が「IWA」と
いう超高級な日本酒。
超高級シャンパンの代名詞、
「ドンペリニヨン」。
その第五代醸造責任者だった
リシャール・ジョフロワ氏の手により
生み出された酒だ。
詳しくはこのサイトを是非見て欲しいが、
彼がなぜドンペリをやめた後、
ここ日本は富山の地にやって来て
日本酒にチャレンジしているのか、
どういった日本酒を醸しているのか、
どんな素晴らしいコラボレーターと
組んでいるのか、等々、
ワクワクするストーリーが
上質なデザインのサイトに
詰め込まれている。
こちらのお酒、720mlで13,000円だ。
いきなりそれだけ見たら、「高い!」
と感じてそれっきりかもしれない。
しかし、背後にある様々なストーリーを
読み、ワクワク感を刺激され、
どんな味がするのか想像する。
それらすべての体験を踏まえれば、
十分に価値のあるお金の使い方だと
納得できる。
正に、ストーリーが人を動かすのだ。