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人は見たいものを見る
「Invisible Gorilla」というビデオは
ご存知だろうか?
あまりにも有名な実験なので、
知っている人も多いはずだ。
白いTシャツを着た3人と、
黒いTシャツを着た3人とが、
バスケットボールをパスし合って
いるところを見せられ、白い方が
何回パスを出したか数えなさい、
と指示される。
(ネタバレがイヤな人は、以降
読まないでください。)
YouTubeにアップされているビデオは
わずか1分半ほどなので、観たことの
ない人は是非観てみるとよい。
最初にこれを観たのがいつだったか
思い出せないが、ここ10年以内の
話であることには違いない。
まんまと騙されて悔しかったことを
未だに憶えている。
つまり、ゴリラが見えなかったので
ある。
正に「Invisible」、私にとっては
「見えない」ゴリラだったのだ。
ビデオのタイトルに、
「Selective attention test」
とある通り、何かに選択的に注意を
振り向けているときに何が起こる
のかを、このテストでは明らかに
している。
「パスの回数を数えろ」
と指示され、懸命にパスの回数を
数えることに集中している人には、
周りで起こっている他のことに
注意が向かないのだ。
人の認知能力には限りがある、
という事実を、これほど端的に
示してくれるものはなかなかない
だろう。
この「見えないゴリラ」が、あまりに
衝撃的で広く一般の人たちに観られた
のを受けてか、続編が作られていたと
いうのを知った。
こちらもかなり有名だったのだろうが、
残念ながら私は昨日までついぞ知らず、
何とも単純なことにまたしても騙されて
しまった!
「あぁ、Invisible Gorillaね、知ってる。」
という思いが頭の中に湧いた瞬間に、
私は負けていた。
こちらの続編では、もちろんゴリラも
出て来る。
そして、最初のビデオを観たことが
ある人は皆、
「今回は騙されないぞ」
とばかりに、ゴリラが来るのを心理的
に待ち構えることになる。
そして、案の定ゴリラが現れると、
「やっぱりゴリラだ!今回は騙され
なかったぞ!」
と満足するのだ。
残念ながら、出題者はその先を行って
いる。
ゴリラが出て来た以外にも、重要な
変化が二つも加わっているのだ。
ビデオを観た人はお分かりの通り、
黒いTシャツのチームが一人、
ゴリラが去るタイミングで一緒に
いなくなっている。
もう一つの変化は、カーテンの色が
赤から金色に変わっているのである。
人の認知能力というのは、ことほど
さようにいい加減なものである。
自分に関心のあることに注意力を
持って行かれ、それ以外のことには
注意力が極めて散漫になってしまう、
そういうものなのだ。
だからこそ、悪い事業者に騙される
消費者が後を絶たなかったりする
のである。
自分が知っていること、あるいは
知らないこと、それ自体を知る、
というのを「メタ認知」というが、
認知能力に限りがあるのだという
ことをよく理解し、「メタ認知」
できている状態を常に保てるよう、
自分自身を日頃から客観視する
トレーニングを続けていきたい。
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