因果関係と相関関係の違いを峻別する
昨日は、数ヶ月に一度のオンライン
コーチングセッションを実施して
いました。
自分がコーチしてもらう方ではなく、
お代をいただいてコーチをする方です。
お相手は、カテゴリーは全く異なる
ものの、同じマーケターさん。
ということで、日々の仕事における
悩みの相談から、今後のキャリアを
どのように作っていくかに至るまで、
共通言語を駆使しつつ、1時間ほどの
時間を使って様々なお話をしました。
話題に出た中の一つに、
「因果関係」と「相関関係」に関する
トピックがありました。
彼曰く、この両者の概念を峻別できて
いない同僚がいるとのこと。
この概念の違いについて、
丁度良い機会なので、整理がてら
少しばかり書いてみようと思います。
いずれの概念も、マーケティングの
実務では割と重要です。
両者はしばしば混同されますが、
実際には全く異なる意味を持っている
と言えるでしょう。
「因果関係」とは、文字通り、
何らかの原因が、何らかの結果を
引き起こす関係を指しています。
因果関係が存在する場合には、
原因がなければ結果も生じません。
他方、「相関関係」は、二つの事象が
同時に起こる傾向を示しますが、
それが必ずしも因果関係であるとは
限りません。
相関関係が存在するだけでは、
「これがあれば必ずこれも起きる」
というような約束ができないという
ことになります。
もう少し具体的な例を出しましょう。
仮に、ある商品について、TVCMを
オンエアしたとします。
オンエア期間中に、店頭売上の増加が
ありました。
この場合、TVCMと売上増加の間には
因果関係はあるのでしょうか?
これだけでは、一概に因果関係がある
とは言い切れません。
相関関係があったことは、
間違いのない事実でしょう。
しかし、因果関係があったと言い切る
ためには、TVCM以外に売上増加に
寄与した要因が他にもなかったか、
確認をする必要があるのです。
TVCMオンエア期間中に、
デジタル広告も流していたかもしれないし、
有名人がたまたまその商品のファンだと
コメントをしてくれたかもしれない。
店頭で値引きをしていたかもしれないし、
大手小売チェーンが派手な陳列をして
くれていたかもしれない。
それら多様な要因が複合的に売上増を
支えていて、TVCMを抜いたとしても
売上は変わらなかったという可能性も
あり得るわけです。
実際、売上に寄与する変数は、
複数あるのが当然でしょう。
これらの変数を使ってモデルを組み、
売上との「相関係数」を求め、
それが1に近いほどモデルの精度が
高い(=説明能力が高い)と考える、
そんなことを仕事にしている方も
いらっしゃいます。
というわけで、マーケターたる者、
相関関係を見て、これを因果関係があると
見誤ってはなりません。
私がコーチをしたお相手は、
とても優秀な方ゆえ、両者の峻別が
きっちり出来ていましたが、
たとえベテランであっても、
うっかり油断すると間違えてしまう
ことがあるもの。
この辺の感覚を鋭敏にするためには、
論理的思考力を身に付ける努力を
したり、昨今「ブーム」といっても
過言ではない統計学を学んだりするのが
良いと思います。
何よりひとまずは、はじめの一歩として、
因果関係と相関関係が違うのだと
強く意識することが、
非常に大切だと言えるでしょう。