「食品ロス削減」という社会課題への取り組み
食品業界に関わるようになって
驚いたことの一つが、
賞味期限の明記された商品に
ついての納品に関するルール。
その名も「3分の1ルール」である。
どんなルールかというと、
「メーカーが定める賞味期限の
3分の1を過ぎるまでに納品する」
というルールである。
これだけだと少々分かりにくいと
思うので、一つ例を出そう。
製造日が1月1日、
賞味期限は製造から1年間、
つまり12月31日まで、という
商品があると仮定しよう。
小売店に納品される際には、
1年の3分の1、つまり4月末までに
納品しなければいけない、
というのがこのルールである。
元々は、「鮮度」を気にする消費者
へのサービス向上という大義名分を
受けて、小売各社が自主的に納入
先に課し始めたもののようである。
そのルールを緩和する動きが急速に
広がっているという記事が、
日経新聞に出ていた。
セブン&アイグループが、
「3分の1」を「2分の1」に緩和する
ことにより、食品廃棄ロスの削減等に
つなげる動きをしているとのこと。
上記の例でいえば、4月末ではなく
6月末までに納品すれば良いという
ことになり、2か月ほど「延命」を
することができる。
実際、賞味期限と言うのは
「おいしく食べられる期限」である。
保存状況にもよるが、多少期限を
過ぎてしまったところで、食べたり
飲んだりしてもほとんど問題ない。
これは、皆さんも体感的に分かって
いることだろう。
バイイングパワーを持つ小売、
特にコンビニが「3分の1ルール」を
厳密に要求してくる限り、メーカー
側は何とかしてそれに見合うように
帳尻を合わせる必要がある。
もちろん、より新鮮な食品を入手
したいという消費者の気持ちも
分からないわけではない。
しかし、大量のロスを削減できるの
ならば、ルールの緩和は社会全体に
とっての効率アップとなり、多くの
消費者にとってもハッピーなことに
違いないと思うのである。
同じ食品ロス削減の目的で、
最近は「てまえどり」を推奨する
POPを店頭でよく見かける。
このページにある通り、環境省が
音頭を取って進めている、消費者の
望ましい購買行動を呼びかける
「運動」「呼びかけ」だ。
いちいち賞味期限を見て、より
新しく作られたものを奥から取る
のではなく、手前にあるものから
順に取っていってくださいね、
というものである。
どこまで消費者が言うことを聞いて
くれるのか、正直なことを言うと
心もとない。
しょせん、消費者はわがままであり、
自分の合理性、自分の正義に従って
意思決定を下すのだから、致し方の
ないところ。
それでも、何も言わなければ、
何も起こらない。
「てまえどり」を呼びかけることで、
少しでも食品ロスの削減につながる
ならば、ありがたい話である。
食品ロスは、いわゆる「社会課題」。
SDG'sを持ち出されるまでもなく、
大量生産・大量消費社会が生んだ
負の側面であり、社会全体で解決
していくべき課題だ。
小売大手のリーダーシップや、
行政のイニシアチブによって、
課題解決への意識が社会全体に
広がっていく状況を、自分も
側面支援していきたい。
己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。