競合のシェアを奪うより
どんな商品であれ、
またはブランドであれ、
どこかしらの「戦場」で戦っていると
言えます。
その「戦場」のことを、
「市場」「マーケット」と呼んだり、
「カテゴリー」と呼んだりするわけですが、
その「市場」や「カテゴリー」には
ライバル/競合が存在するのが常。
その「市場」「カテゴリー」に新しく
参入するプレイヤーは、
そこで既に大きなシェアを持っている
ライバルから、そのシェアを少しでも
奪おうと考えることが多いでしょう。
手っ取り早いのは、そのライバルより
値段を安くして、
「こっちの方が安くてお得!」
というのをウリにして、安い値段になびく
お客様を取っていくことです。
しかし、これをやってしまうのは、
策としては「下の下」だと言って
よいでしょう。
巡り巡って、結局は誰も喜ばない結果に
なりかねないからです。
シェアを取られた競合が喜ばないのは、
言うまでもありません。
そのカテゴリーの商品を扱っている
小売店は、その値下げによって他のお店
からごっそりお客様を取ってこれる
ような強烈なインパクトのある値下げ
でもない限りトータルでの売上は下がる
可能性が高く、そうなると喜べない
ことになります。
(そもそも、そんなインパクトのある
値下げなど滅多にないでしょう。)
安いものを買ったお客様も、
それが安い分品質が劣るものである限り、
最終的には割を食うことになりますよね。
(革新的な商品で、安いのに品質が向上
したというような例外的なケースは、
ここでは想定していません。)
同じ「シェアを奪う」行動でも、
安易な値下げで奪う発想ではなく、
消費者の異なるニーズを満たす、
競合とは異なる価値をお渡しする
ような形で実現したいもの。
これまでにない素敵な色を実現する。
今までなかった新しい機能を追加する。
かつてない至福の使い心地を体験させる。
従来より半分の時間で仕上げられる。
1人用しかなかったのを多人数用にする。
アイデアと工夫で、競合とは異なる
価値を創り出すのです。
そうやって価値を高め、
その分価格も高めれば、
健全な競争を通じてカテゴリーは
盛り上がることにつながり、
売上や利益の額が増加して
メーカーも小売もハッピーです。
より良いものが手に入って、
消費者ももちろんハッピーです。
競合のシェアを奪う発想ではなく、
消費者のハートを奪う発想で。
競合相手にお互いを蹴落としながら
ビジネスを展開するのではなく、
お互いをリスペクトしながら
消費者に提供できる総価値を
最大化する気持ちで。
いずれも後者の発想の方が、
マーケティングが本来担うべき考え方
であり、あり方だと思うのです。
そうすることで、社会がより豊かに
なっていくお手伝いをすること。
マーケターとして、
この発想の視点を常に忘れずに
いたいものです。