期待リターンの推定

こんにちは。

先週はマーケットレビューを含めて更新を休止していました。旅行に行っていたというのが理由です笑

軽井沢に新幹線を使って旅行へ行ったのですが、生憎天気が悪く、浅間山などを見ずに帰ってきました笑

ただ、霧がかかっていてすごく幻想的な景色でした。これはこれで良いものが見れました。

軽井沢には初めて行ったのですが、新型コロナウイルスの影響を思わせるような人の少なさを感じました。お店も所々閉店や休業をしていて、観光人の需要で成り立っている商売は非常に厳しいのだなと感じました。

ここ数年、世の中では何でもかんでもITとかAIとか言われています。最近だと「オンライン化」ということで様々なものをオンライン化する事業や取り組みが活発化してきました。しかしながら、こういった観光などはどう頑張ってもオフラインに勝る効用を産むことはできないと思います。本旅行で私は「軽井沢らしさ」の雰囲気を重視したプランを立てたのですが、いくらVR技術が発達したとしてもこの「らしさ」を完全に再現することはできないです。

私はオンラインとオフラインの活動にはどこか均衡点があると考えていて、今はオンライン化過渡期でそういったものが注目されがちですが、オンライン化が進むにつれてオフラインの良さが目立ってくると思います。

日本経済新聞にも、リモートワークで企業の賛否が分かれた旨の記事が掲載されていましたが、まさに均衡点模索中の状態だと思いました。「全てをオンライン化」ではなく「どこまでをオンラインにした方が良いのか」という方向性で議論を進めていくべきなのではないのでしょうか。


さて、前置きが長くなってしまいましたが本題に入ります。

今回は「期待リターンの推定方法」について簡単なものを取り上げます。

おさらいしておくと、期待リターンとはある証券の将来の値動きの期待値です。つまり、将来の値動きを予想して出した推定値に過ぎないということに注意してください。今回は議論を簡単にするために今回は流動性の高い「株式」を取り上げますが、基本的にはどの金融商品でも同じです。

期待リターンの算出のために使用できるデータは主に以下です。

① その銘柄の過去の時系列株価データ(年次、月次、週次、日次など)

② 他の銘柄や経済指標などの時系列株価データ(日経平均株価、消費者物価指数、失業率など)

③ 財務諸表データ(有価証券報告書、決算短信など)

④ その他(ニュース、SNSなど)

今回は①のみを使用します。全てを包括してその銘柄(あるいは複数銘柄を集めたポートフォリオとしての)期待リターンを算出する方法もありますし、実務にもかなり応用されています。というより、そうしないとなかなか正確な予測に近づけるのは難しいです。しかしまずは基本を習得するために、過去の時系列株価データのみで算出してみます。

今回、主な算出方法を2つ紹介します。まず大前提として、データ数は多い方が様々な分析を行うことができるため、日次データを扱うことが多いです。よって今回も日次データを使用することを前提とします。

(1) 最頻値法

過去の株価データのリターン(変化率)の最頻値を期待リターンとする方法です。例えば、以下のように価格推移した銘柄があるとします。データの期間は1ヶ月としてみましょう。最頻値とは、一番多く出た値のことです。

ノート1

この銘柄の営業日ごとのリターンを算出するとこのようになります。

画像2

このとき、一番多く出たReturnの値は0%、0.2%、-0.7%、-0.3%で各2回ずつす。よって、最頻値はこれら4つの値になります。

この時点で、何か違和感がありますね。推定しないといけないのに最頻値が4つも出てしまいました。

このようなときには、小数点以下の桁数を増やしてみます。そうすると以下のようになりました。

ノートReturn2

こうすると、0.00%と0.17%が最頻値になりましたね。

しかし、これでも絞れませんね。もう一つ小数点以下を増やしてみましょう。

画像4

そうすると0.000%だけが残ったので、最頻値は0%です。よって期待リターンは0%です。

さて、本当にこれを期待リターンにして良いでしょうか?

直感的にも、小数点以下を増やす行為を無限に繰り返せば、最頻値は無くなることが予想されます。

このようなときには、区間を取って最頻値を考えます。

例えば、

... 、-0.1%~0%、0%~0.1%、0.1%~0.2%、...

のようにある一定の範囲ずつで区間を取ります。この時、各々区間の大きさ(幅)は一緒にすることに注意してください。区間幅0.1%(0.1%ずつ区間を取る)とすると、以下のようになります。

-1.7%以上-1.6%未満・・・1回(1/12)

-1.2%以上-1.1%未満・・・1回(1/30)

-1.1%以上-1%未満・・・1回(1/29)

-0.7%以上-0.6%未満・・・2回(1/17、1/25)

-0.6%以上-0.5%未満・・・1回(1/18)

-0.4%以上-0.3%未満・・・1回(1/11、1/34)

-0.2%以上-0.1%未満・・・1回(1/16)

・・・

と順に調べていきます。

しかし、この方法でも同じ回数の区間などが現れそうですし、そもそも期待リターンがある値ではなく、「区間」で出てしまいました。一応、最頻の区間のどこも起こる確率を一定とすれば、期待値の定義通り、区間の真ん中がその区間の期待値となるので、期待リターンをそことおいても良いのですが、その区間のどこも起こる確率が一定という事実は検証できていませんし、本当にそうなのかと疑問が残ってしまいます。

そこで紹介するのが次の手法です。


(2) 平均法

過去の株価データのリターンの平均を期待リターンとする方法です。例えば、10日間の株価データがあるとすると、リターンのデータを9日分用意することができます。最初の日は前日のデータがないため、リターンを定義することができないから、株価データを10日分用意するとリターンは9日分のデータとなります。

よって、リターンがn日分出たら、n-1日という日数で除します。そうして算出されたもの(過去一定期間のリターンの平均)を期待リターンとしようというのがこの方法です。実際に(1)で使ったものと同じデータにこの方法を適用してみると、以下のようになります。

画像5

この平均値は、1/5から1/31までの前日比(リターン)を全て足して、日数(18日)で割って算出しています。Excelだと、averageという関数で簡単に算出することが可能です。この方法だと、期待リターンが区間ではなく「値」として出るので使いやすそうですし、なんとなくそれっぽそうではないでしょうか。

この(1)よりも(2)のほうが「それっぽい」という感情が生まれるのにはきちんと理由があります。

(2)で出た値は、過程で起こった様々な出来事を全て包括して算出されているからです。

例えば、最頻値で計測してしまうと、最頻値(最頻の区間)以外でどんなに珍しいこと(例えばリーマンショックのような大幅な下落や、ITバブルのような急な上昇など)が起こっても、それらは全く考慮されないことになります。

対して、平均で計測すると、そういった大幅な動きも含めて算出しますので、その算出された値にはこのようなものが全て包括されていると考えることができます。


今回は以上とします。とりあえず、期待リターンを簡単に推定する時には過去の平均をとると良さそうだということをなんとなく感覚として持っておいてください。

次回はボラティリティ(標準偏差)を算出・推定する方法を実演してみたいと思います。ぜひフォローの上ご購読いただければ幸いです。


〜まとめ〜

・n日分の日数のリターンの平均の算出方法は、n日分のリターンを全て足したものをn-1で割る。

・過去の値動きの平均を期待リターンとすると、過去の値動き全てを内包した平均となる。

・期待リターンの簡単な推定は、過去のリターンの最頻値よりも平均を取ってみると良い。





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