『村上朝日堂 はいほー!』を読んだ
2022/6/21、読了。
はいほー!って、なんだか叫んでみたくなる言葉である。白雪姫に出てくる小人たちが言っているイメージがあるが、そういえばどんな意味なのか知らないなあ、と思い調べてみた。
[驚き・疲労・退屈・落胆などを表わして] あーあ!やれやれ!(研究社 新英和中辞典)
割とマイナスイメージな意味だったので驚いた。もっと陽気な掛け声かと思っていたのに。しかし「やれやれ」という言い回しは、村上さんの文体にリンクする。真偽のほどは定かではないが、意味はあまり重視せず、言葉の響きでタイトルを選出したのかもしれない。まあ別にどっちだっていいようなものだけれども…はいほー!
村上さんが30代の頃に書かれたエッセイ集なので、時代の空気感や(語弊を恐れずに言えば)若かりし頃の村上さんの尖りが滲み出ているような気がする。もちろん若い時から既に老成した考えをお持ちなのだが、所々に若者特有の青さの片鱗がこぼれ落ちているのだ。これより後の時代のエッセイに慣れ親しんできた身からすると新鮮だった。とはいえ、若い頃も村上さんは村上さんだったので、ひとりの作家が成熟する過程を垣間見たような気がして愛おしかった。読者冥利に尽きる。我々が老いても、根本的なところはそのままでいられるのかな。いつかゲートボールでもやりながら答え合わせができる日が来るといい。安西水丸さんのイラストも、いつものごとくバッチリはまっている。