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    読んだ本の感想を随時更新します。

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怪談:気付かないということ

ぼくは、わりに色々なことに気付かないタチだ。友達に「髪切ったね」と声を掛けたら「切ったの3週間前だよ」と驚かれるのはザラだし、家の近くで新しいお店を発見したことを親に報告すると「5年前からあるよ」などと言われたりもする。「それなりに一生懸命に生きているつもりなのに、どうしてこんなにも周りが見えていないんだろう」と、そのたびに軽く落ち込む。ただ、世の中というものはなかなか上手く出来ていて、たまにはこのポンコツさが役立つこともあるようなのだ。 今住んでいる団地に越してきたのは、

    • 『メグレ間違う』を読んだ

      2022/11/14、読了。 ⁡ ご存知『名探偵コナン』に登場する目暮警部の元ネタ、メグレ警視ものである。あのメグレも間違うことがあるのか、どんな間違いをしたのだろうと興味を惹かれて購入した。表紙の色使いも可愛い。 ⁡ 結論から言えば、メグレが何を間違えたのかは明言されていない。読者の想像に委ねられているといっていい。メグレものは、トリックをあくまでシンプルに抑え、登場人物の心理描写で本領を発揮する印象がある。メグレ警視も「あの時の選択は合っていたのか」と逡巡することがあるの

      • 『超男性』を読んだ

        10月17日、読了。 ⁡ 目次を一瞥して面白そうな短編集だと思い購入したのだが、読み始めてみると長篇だった。それぞれの章題が奇抜なので勘違いしたのだ。「右側にも左側にもない心臓」「テオフラストスの絶賛するインド人」「あなたは誰です、人間ですか?」等。結局面白かったのでどちらでもいいようなものなのだが。 ⁡ 不思議な長篇だった。今まで読んだどの作品にも似ていない。まるで夢をみている時のように、荒唐無稽なのに違和感を覚えない。読後にはなにか壮大な感動さえ覚える。 ⁡ 当初は、理解

        • 『雪国』を読んだ

          2022/9/17、読了。 ⁡ チャンネルを回していたらNHKが本作をドラマ化しているのをたまたま見つけ、そのまま何となく観ていたのだが、主演の高橋一生さんと奈緒さんがあまりにも良かったので原作を読んでみたいと思い購入。 ⁡ ぼくはドラマ視聴時、奈緒さん扮する駒子の心の機微についていけなかった。駒子は繊細すぎて、いちいち何に傷つき怒っているのかさっぱりわからなかったのである。駒子の心情をもっと理解したいと思って本書を読んだが、実を言えば未だよくわかっていないままである。 ⁡

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          『小説 ゲゲゲの鬼太郎〜蒼の刻〜』を読んだ

          2022/9/6、読了。 ⁡ 幼い頃からゲゲゲの鬼太郎が大好きで、文庫オリジナルの物語が読みたくて購入。アニメ第6期の脚本担当の方々による原稿である。 ⁡ 『妖怪おとろし』は、大人も楽しめるダークな要素が目立つ第6期ならではのかなり攻めた展開で驚いた。たしかに妖怪とは、受け入れ難い現実を変形してひとまず処理するための概念という面も持ち合わせる存在であるのかもしれない。別作品になってしまうが「妖怪のせい」だと言ってしまえば救われることもあるのだろう。 ⁡ 『ぬりかべ』は、普段寡

          『小説 ゲゲゲの鬼太郎〜蒼の刻〜』を読んだ

          『科挙 中国の試験地獄』を読んだ

          読了日不明。8月後半から9月前半のどこかだとは思う。宮崎市定著、中公文庫。 ⁡ 科挙制に興味があって読んだ。中国全土の膨大な人口が官僚登用を目指して殺到する、その想像を超えたダイナミックさに惹かれたのかもしれない。 ⁡ 受験者は、現代でいう予備試験のようなものも含めて幾回も試験を受ける。最低第十次試験まで受けなければならない時代もあった。受験者達の並外れた精神力を思うと気が遠くなる。実際受かると、そのあまりの嬉しさに気が狂う者までいたらしい。 ⁡ 詩の判定基準はある程度試験官

          『科挙 中国の試験地獄』を読んだ

          『ルバイヤート』を読んだ

          2022/8/21、読了。 ⁡ 世界史で名前だけは聞いたことのある、オマル=ハイヤームの『ルバイヤート』。「ルバイヤート」という語は、ペルシア語で「4行詩」(複数形)を指す一般名詞らしい。つまり、必ずしもオマル=ハイヤームの詩集名を指すものではないということだ。 ⁡ 何故いきなりこの4行詩集の存在を思い出したかといえば、オモコロライターの岡田悠さんがこの詩集に登場する「酒」の登場頻度でグラフをとっていたからである。 ⁡ 読んでみるとなるほど、確かにやたらと飲酒を勧めてくる。ム

          『ルバイヤート』を読んだ

          『かわいそ笑』を読んだ

          2022/8/15、読了。 ⁡ 梨.psdさんの怪談が好きで、ちょくちょく読んでいる。Twitterの可愛らしいアイコンとは似ても似つかぬ、じめじめした嫌なお話を創られる。九州地方の民俗を拠点に、幾つかの事象から総体的に怪異の存在を知覚させてくれる書きぶりが斬新なのだ。SCP財団の存在を知ったのも梨さんの創作を通してのことである。良質な怪談には多くの考察隊がつく。梨さんの作品から派生したYouTubeのゆっくり解説動画等にも面白いものが多い。本書は、そんな梨さんの初著作という

          『かわいそ笑』を読んだ

          『ヒロシマ・ノート』を読んだ

          8/11、読了。 ⁡ そもそものきっかけは、大学時代のゼミの教授による戦後思想の授業で、本書が取り上げられていたことだった。本書か石牟礼道子の『苦海浄土』を指して、「切実な書」と評されていたのを思い出す。相違ない。読み始めるタイミングを掴み損ねて長らく本棚の肥やしと化していたが、8/6及び8/9のXデーを意識しつつ緊張感を持って読める期間は今しかないと思い集中的に読んだ。 ⁡ 個人的に大江健三郎の小説は文体を上手く消化できなくて読めないのだが(一応断っておくが偏にぼくの未熟さ

          『ヒロシマ・ノート』を読んだ

          『フェルマーの最終定理』を読んだ

          8/6、読了。 ⁡ 7月は全然読了できなかった。昼休みに毎日読書してはいるのだが、元来遅読なのに加えて何冊かの本を読み散らすことに原因がある。まあ活字を取り込めればよいのであって、別に読了することが読書の目的ではないので、気張らずにやっていこうと思う。お付き合い頂けると幸いです。 ⁡ 『フェルマーの最終定理』!なんと格好良い響きなのだろう。数学はおろか算数もさっぱりな自分でも心惹かれるものがある。 ⁡ 3 以上の自然数 n について、xのn乗+yのn乗=zのn乗となる自然数の

          『フェルマーの最終定理』を読んだ

          『羊をめぐる冒険』(上)を読んだ

          2022/7/4、読了。 ⁡ 上下巻をまとめて買うのが苦手だ。いったん下巻を読み始めれば楽しいことはわかっているのだが、上巻を読みながら意識のどこかで「下巻も読まなければならない」と思い続けるのに耐えられない。何冊かの本を同時並行で読み散らすタイプなので、同じ本に集中し続けることが難しい。上巻を読んだ以上、下巻も読まなくてはならないのは、下巻を買っても買っていなくても変わらないのだが、買ってしまうとより「下巻」という存在が頭の中のウェイトを占める。 ⁡ それに、上下巻を読み終

          『羊をめぐる冒険』(上)を読んだ

          『村上朝日堂 はいほー!』を読んだ

          2022/6/21、読了。 ⁡ はいほー!って、なんだか叫んでみたくなる言葉である。白雪姫に出てくる小人たちが言っているイメージがあるが、そういえばどんな意味なのか知らないなあ、と思い調べてみた。 ⁡ [驚き・疲労・退屈・落胆などを表わして] あーあ!やれやれ!(研究社 新英和中辞典) ⁡ 割とマイナスイメージな意味だったので驚いた。もっと陽気な掛け声かと思っていたのに。しかし「やれやれ」という言い回しは、村上さんの文体にリンクする。真偽のほどは定かではないが、意味はあまり重

          『村上朝日堂 はいほー!』を読んだ

          『河童が覗いたインド』を読んだ

          2022/6/18、読了。 ⁡ 5年前くらいまで想像だにしていなかったが、いつの間にかインドという国は、自分にとってかなりのウェイトを占める国になっていた。「どうしてインドを選んだの?」という質問を、今まで何度されたか分からない。その度に「遠藤周作の『深い河』を読んでその宗教観に感銘を受けたから」「変わった文字がやりたかったから」「ヒンディー語は話者人口が多い割に日本では浸透していないため専門性を高めることができそうだから」「経済成長が見込めそうだから」「後期試験の倍率が低か

          『河童が覗いたインド』を読んだ

          『にぎやかな未来』を読んだ

          2022/6/12、読了。 ⁡ 筒井康隆によるショートショート集。解説はショートショートの神様、星新一。かなり読みやすくて、自分にしては珍しくするりと読み終えることができてしまった。 ⁡ 筒井康隆のアイディアの豊富さにはいつも驚かされる。長編に使えそうなものも、さくっとショートショートで消費してしまう。汲めども尽きぬ泉のよう、というよりももはや筒井のそれは間欠泉である。斬新でパンチのあるアイディアが、見るものを驚かせるパワーでこれでもかと吹き上げてくる。シニカルなユーモアと懐

          『にぎやかな未来』を読んだ

          『異人論 民俗社会の心性』を読んだ

          2022/6/12、読了。 ⁡ 妖怪が大好きで、いつか会いたいと願っては妖怪図鑑を飽きずに眺めているような子供だった。それが長じて、次第に民俗学に興味を持つようになった。高層ビルが立ち並び、生命さえ科学技術で操作しようというこの時代にも、光が当たらない闇の部分があるーそこにどうしようもなく惹かれるのは、或いは総てが明らかになってしまうことへの反感の裏返しであったのかもしれない。妖怪を信じるというよりも、信じていたい幼年時代だった。 ⁡ 本書は「異人」という共通するキーワードを

          『異人論 民俗社会の心性』を読んだ

          ちくまの寺山修司全集を読んだ

          2022/5/30、読了。 ⁡ 中2の時の自分は、妙に寺山修司を敬遠するフシがあった。中2で寺山の詩集を読んでいるなんていかにも過ぎてダサい、というのがその理由だった。小学生男子が極限まで押し潰して作る、硬ってえ雪玉のような自意識である。 ⁡ しかし結果的に、中2で寺山修司作品に出会わなくてよかったのかもしれない。もし出会っていたら確実にいかれてしまっていた。匂い立つアングラ!『ライチ☆光クラブ』に心酔するタイプのいかにもな中学生だった自分が、この世界観に触れて平然としていら

          ちくまの寺山修司全集を読んだ