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2024年に読んでよかった本10冊
今年は60冊ほど本を読みました。毎年恒例となってますが、今年もおもしろい本にたくさん出会えたので、その中でも特によかった本を10冊まとめておこうと思います!
半導体戦争 - 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防
今年、NVIDIAが時価総額で世界1位となる出来事がありましたが、半導体産業は破竹の勢いで発展を続けています。本書では、そのような半導体産業について、技術競争、経済競争、軍事競争の3つの観点を織り交ぜながら、その歴史と今後の方向性が描かれています。
本書を通して、1つのシリコンに100億個以上のトランジスタが搭載できるようになるまでの技術の進歩や、TSMCやASMLといった企業が技術的・軍事的になぜこれほどまでに重要なのかを理解することができました。自分は半導体企業の本社が集結しているサンタクララに住んでいますが、家の近くにある企業の話がたくさん出てきて、それぞれの企業が半導体産業においてどのような役割を果たしているのかを知ることができて興味深かったです。
11の国のアメリカ史 - 分断と相克の400年
今年は、アメリカ居住者として初めて迎える大統領選がありました。選挙前後の国内の熱気をリアルに感じるとともに、共和党と民主党でアメリカが大きく分断されている現実を改めて痛感する出来事でした。本書では、様々な民族が様々な地域へ入植しながらアメリカという国を作り上げていくまでの過程が描かれており、なぜアメリカは地域によってこれほどまでに文化や考え方が異なるのかについて理解を深めることができました。
また、今年はアメリカ国内をたくさん旅行しましたが、地域ごとに人種構成や文化が大きく異なり、同じ国の中にいながらまるで別の国を訪れているように感じることが多々ありました。例えば、今年ニューオーリンズを訪れた際、人口の半分以上が黒人だったり、フランス文化が融合されていたりと、そのユニークさに驚きましたが、本書を通して、なぜこのような特性を持つに至ったのかを知ることができました。アメリカ成り立ちの歴史を知識として持っていることで、今後の国内旅行がより一層楽しくなりそうです。
狂人たちの世界一周
本書は、1968年に開催されたヨットによる無寄港世界一周レース「ゴールデン・グローブ・レース」に参加した9名の人生を描いたドキュメンタリーです。当時の技術では世界一周には10ヶ月程度必要とし、現代のように遠く離れた人と簡単に連絡を取ることもできない時代でした。そんな中、出港した参加者たちは孤独な環境から徐々に極限状態に置かれていきます。そして、最終的にゴールしたのはたった1名だけで、残りは途中で離脱や自殺をするという異様な結果に終わります。
最近世界一周に興味を持っており本書を手に取りましたが、本書は世界一周について描かれている本というよりも、孤独な旅が人間の心理にどのような影響を与えるのかについて描かれた人間ドラマでした。思っていたよりもシリアスな内容ではありましたが、一人ひとりの航海中の内面の変化がリアルに伝わってきて興味深く読むことができました。
Androids - The Team that Built the Android Operating System
Androidは今や世界のシェアの7割を超えています。本書では、かつて小さなスタートアップだったAndroidがGoogleに買収されてから今に至るまでの過程が描かれています。当時のGoogleは100%ソフトウェアの会社であり、OS開発に必要なスキルを持つ人材を社内から得るのに苦労する中、過去に他社でOS開発に携わっていた人材を人間関係を駆使して次々と招き入れてチームを組成し、短期間でローンチに漕ぎつける様子は圧巻です。
また、コアライブラリ、グラフィック、フレームワークなど、OSに必要なコンポーネントの開発プロセスがリアルに描かれており、非常に興味深かったです。OSを0から構築するというのはWebサービスを構築するのとは比較にならないほど難しく、技術的な課題にひとつひとつ対処していく過程は、エンジニア経験のある方にとっては特に楽しく読める内容だと思います。
ユニクロ
ユニクロはアメリカにも多くの店舗があります。自分の家の近くのショッピングモールにも入っており、渡米後もユニクロで服を買い続けています。本書では、そんなユニクロが山口の商店街にある小さな紳士服店から世界で戦うアパレルチェーンへと成長する過程と、それを一代で実現した柳井さんの性格や考え方が描かれています。上場までの道のりやフリースブーム(自分が小学生の頃にブームが到来したのを今でも覚えています)、そして現在のグローバルチェーンに至るまでの話はまるでドラマを観ているようでした。
自分は日本企業の米国展開に携わっていることもあり、海外展開の話が特に興味深かったです。日本の商品を海外で受け入れてもらうのは非常に難しいですが、ユニクロは一度失敗を経験しながらも諦めずに愚直に努力を重ねて現在の地位を築いており、その姿勢には背筋が伸びる思いがしました。
クリエイティブ都市論 - 創造性は居心地のよい場所を求める
居住地の選択は、収入、出会う人々、パートナー、子供や家族に与えられる選択肢など、人間の生き方のあらゆる側面に影響を与えます。自分はアメリカに住んで2年以上が経ちますが、今後の人生においてどこに住むのがよいかを考える機会が増えました。本書は、個人の性格やライフステージごとに、どのような環境に身を置くのがよいのかを考える指針を示してくれます。
自分の住むサンフランシスコ・ベイエリアには、優秀な起業家やテック系の人が世界中から集結しており、自分の人生において仕事が最優先である限りにおいては非常に魅力的な環境だと思っています。一方、家族と一緒にいる時間やパートナー探しなどを最優先に考えるのであれば、間違いなく日本の方が魅力的な環境だと感じます。人生における優先順位を定期的に見直しながら、その時々で最適な場所に住み続けていきたいです。
世界をつくった6つの革命の物語 - 新・人類進化史
本書は、「ガラス」「冷たさ」「音」「清潔」「時間」「光」という6つの発明の歴史と、それらが社会にどのような変化をもたらしたかを描いています。これらは現在ではいずれも当たり前のものですが、当時からしたら今でいうところの宇宙開発くらい文明を進歩させるものであり、それらがどのように実現されたのかがまとまっていて非常に興味深いです。
また、ある発明が別の発明へとドミノ倒しのようにつながっていきます。例えばガラスの場合、メガネが作られるようになることで識字能力が上がったり、顕微鏡が作られるようになることで人体の理解が進んだりしました。サイモン・シンの「フェルマーの最終定理」や「暗号解読」などのノンフィクションの歴史本が好きな人は、本書も間違いなく楽しめると思います。
ようやくカナダに行きまして
現在カナダに留学中の光浦さんの、カナダでの生活を綴ったエッセイです。日本と異なる環境での苦労や不安、留学先での人間関係の悩みなどが生々しく描かれています。新たな地で生活を始めることの大変さと、それを上回るほどのワクワク感が伝わってきて、渡米直後の自分の気持ちを思い出して新鮮な気持ちになりました。自分も50歳になっても、光浦さんのように新しい環境に身を置き続けるような人生にしたいです。
ティンダー・レモンケーキ・エフェクト
本書は、著者の葉山莉子さんがTinder上でマッチングした人とデートではなく「日記交換」をおこない、その内容をまとめて1冊の本にしたものです。日記を通して徐々に相手と深い関係性を築いていく様子を追体験することができます。日記形式なのでサクサクと読み進められ、また著者も相手も文章がとても上手く、楽しく読むことができました。
本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む - 走れメロス・一房の葡萄・杜子春・本棚
本書は、これまでの人生でほとんど本を読んでこなかった「みくのしん」さんが、「走れメロス」などの作品を読む様子を追体験する本です。1行1行をじっくりと読み進めていくのですが、並外れた想像力を持っており、1行ごとに喜怒哀楽が溢れ出します。同じ本でもこれほど感性豊かに読めるのかと感動するとともに、自分もこれくらい丁寧に本を読んでいきたいと思いました。
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