「アイの歌声を聴かせて」感想
2023/12/13 更新分
劇場公開当時「面白かったからお前も観ろ」と紹介されたにもかかわらずタイミングを逃して行けませんでした。
紹介してくれた某氏、本当にすみません。
そんな今まで見逃していた作品なんだけれど今月ついにAmazon Primeに追加されたのでようやく視聴できた。ありがとうAmazon!
今作は「イヴの時間」「サカサマのパテマ」の吉浦康裕氏が監督を務め、
脚本に「コードギアス」「水星の魔女」の大河内一楼氏が参加しているというところで、クオリティは期待しつつもどういう変化球を投げてくるのかなと身構えたいたら思いっきり王道な内容でそこでまず驚いた。
AI x ジュブナイル x ミュージカル のというかなり異色の組み合わせなんだけれどAI社会という舞台を生かした華やかなミュージカルシーンとなんかうまくいってない高校生たちがAI少女によってちょっとだけ救われるハートウォーミングな脚本に思わず心打たれた。
あらすじは
とある高校に突然シオンなる女子高生が転入し、そこに通う主人公サトミは彼女の正体が母が研究しているAIの実験体だと知ってしまう。
ミサトは母の実験の成功のためシオンの正体を隠すために奔走するけれど、シオンは幼馴染のトウマや様々なクラスメイトを引っ掻き回して騒動を起こす。
だがその過程で彼女の幸せのために直向きに動く姿にみんなが影響されて徐々に仲良くなっていく。
その中でシオンがサトミのために起こしたとある行動がきっかけに大問題が発生し…といった内容。
まず映像と音楽が魅力で、登場人物に心の変化が訪れるとき必ずシオンが歌いだす。
演じる土屋太鳳氏の美しくのびやかな歌声と周囲の電灯やロボットなどの電子機器を巻き込んだ演出はまるで華やかなミュージカルを見ているようでそのシーンだけでも見ててとても楽しい気分になれる。
シオンが他のミュージカル調の曲を好んで歌うのかについての背景も描かれており、そしてそれが何故彼女がミサトの幸せのために行動するのかにつながってくるのもいい。
物語もAIを取り扱う作品では驚異的に描かれたりすることが多いシンギュラリティについてかなり肯定的に扱っており、シオンの自発的な行動が功をなすことが多い。
シオンの善意が好転し、作中の人物が抱えてた問題が解決していき、その影響を受けた他のキャラがまた思いやりの行動で誰かが少し救われる…という風に善意の連鎖で進んでいくのがいい。
時にその善意が仇となってトラブルが発生するけれど、結局それも元は誰かへの思いやりから発生した行動なので上手い方向に転がっていき、最後は綺麗なハッピーエンドに収束していく。
とっても素直で真っ直ぐな構成だ。
AIを題材にしたSF(サイエンスフィクション)ではあるけれど、
シオンがシンギュラリティに至った描写などがあるとはいえ、大分ごまかしが効いている作風ではあるのでこういったジャンル特有の社会派な物語を求めてるとがっかりするかもしれない。
しかしこの作品は青春の物語なので却ってそういう捻くれた話はない方がいいように思える。
総じてどこまでもポジティブに、そしてどこまでも優しい
王道のエンターテイメント作品で観た後とても晴々とした爽やかな気持ちになる、そんな気持ちのいい一作だった。