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私小説

言葉が消えたとき
世の明かりが失われた
ただ音が聞こえている
水の滴る音

そこに存在した肉体は
私とは明確に隔離されていて
孤独
だけど心はつながると思ってた

愛は届かない
そこに愛はなく
かつてあったはずの愛は
ひとりよがりな自己愛で消えてしまう
落ちる
自己増殖する迷路、終わりはない
断ち切られた思い
それは断ち切っていて
自己愛の程度を知る

泣いていれば大声を出し
救いたいと思った
叫んでいれば抱きしめて
愛おしさを感じた
そんなもの、
自分を愛しているだけだろう
カタストロフは叫びだす
心に棲む鬼はとても自分で
音が滴る
ああ、何も変わらない最悪の存在
ここにいるべきではない
自分でこの世から退場しようとしているのに
今はまだできていない

孤独の肉体は
ひどく傷んでいて
退場
を待ち望まれている足踏み

私の心は流行病
誰とかかわろうとしても自分自身で破壊工作
そして袋小路ばかりの迷路
迷うことのない二律背反
愛していた気持ち
それはただ愛されていただけで
痛みを緩和してくれた
受け取るばかりの特典

ただ

あのとき確かに笑っていた
暖かい日差しを浴び
何の不安もなく
ただあのとき心に触れ合った
何の障害もなく
あのときの愛しさの真実
あのとき確かに安心していた
ふたりの笑顔
それは今もある
だけどもっと遠くにはあのときの笑顔
あのときの気持ち
そこに帰れない
この世には違う何かがあると信じたい
だけどもうおしまい
愛おしいあなた
愛しい日々
ふたりの笑顔
忘れない
暖かい日差し
空を見て手をつなぐ永遠



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