ポートタウン
海はいつも穏やかで
鉄の塊が浮くという
いや潜るのさ
港かドックか分からない
浮かぶ海と河
煉瓦造りの建物は
しんとして
過去から重なる半透明
贅沢な空間から
時が止まっていて
緑
突き抜ければ広大な
繰り返し磨く自己と
日差しを浴び
港は九つの嶺に囲まれて
大いなる場所
だけどとても狭くて
マクロとミクロが入り乱れ
流れ込む光景がすべて
しみついた記憶
このポートタウン
坂が終われば階段
細道ばかりの隠れ家
いや迷路の中で
崖か家か分からない
記憶の奥の戦争
石垣の崖にはりついた
蛇の抜け殻
人も息づく生の故郷
階段は毛細血管
どこまで登っても
路地
平地を少し歩けば
目の前は崖か海か
家ばかりの石垣
時と生と死が過ぎてゆく
大いなる場所
そこはとても細くて
見える緑と瓦は広がり
誰が生まれ歩んだ
いつかのポートタウン