短編821文字 | 週末土偶人(二重人格ごっこ?)
「土偶ってかっこいいよね」
僕が片想いしている百合ちゃんが言った。
「えっ、どこが?」
僕は目の前の着ぐるみの土偶を見て、正直な感想を言ってしまった。
「あの可愛さが分からないの?超愛くるしいし、足の短いところが、超セクシーじゃない?それが分からないなんて、感覚がどこかおかしいんじゃないの?」
そ、そうかな。可愛いと言われれば、そうかな?、とは思う。しかし、セクシーかなぁ?でも、百合ちゃんがそこまで褒めるのならば、なんとしても土偶を着なければなるまい。
イベントが終わったあと、僕は土偶の着ぐるみを着てみたい旨を、偉そうな主催者らしき人に伝えた。
「?」という顔をされたけれど、
「いいよ。来週の土曜日にバイトできる人を探してたから」とアッサリとOKが出た。
「さっそく、試しに着てみるかい?」
僕はコクリと頷いた。
「チャックを開けて、右足から入ってごらん」「よし、次は左足だ」
あっという間に僕は「土偶人」になった。
「ちょっと見づらいけど歩いてごらん」
思ったより歩きにくい。
「慣れれば大したことないから」とおじさんが言った。
とその時である。僕は尿意をもよおした。土偶人のまま、「あの~、トイレに行きたいんですけど」
「小さいほうかい?小さいほうだったら、その土偶のヘソに穴があいてるだろう。そこから、一物を出せば、着ぐるみを着たままオシッコできるから」
僕はそのままトイレに駆け込んだ。言われた通り、ヘソからアレを出すことができた。無事オシッコをすることができた。
そろそろ戻ろうかな?
「??!!」
出したはいいが、着ぐるみにひっかかって、出したものがしまえない。ヤバい。
僕は懸命にアレをしまおうとしたが、どうしても無理だった。仕方ない。
「あ、あの~、すいません。助けてください」
その声を聞きつけて来てくれたのは、百合ちゃんだった。
「し、信じられない。最低~。あんた何してんのよ。変態~」
百合ちゃんの声は、少し笑いを圧し殺したような感じだった。
(821文字)
💝フィクションです💝
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