短編 | 暗闇女・佐代子
北海道に住む娘のもとへ向かった。娘から誘われたわけではないが、どうせ旅行するなら本州から出てみるのも良いだろうという安直な考えだった。
半年ほど前には、広島へ異動した息子のもとを訪れたが、予想以上に嫌悪された。しかし、今回は息子より気立ての良い娘だから、温かく迎えてくれるのではないか、という甘い期待もあった。
約束のレストランで私と久しぶりに会った娘は、若い頃の私に似て相変わらずの美人だった。息子とは違って、娘は私にニコっと微笑みかけてくれた。
「あ、本当にお母さん、はるばる北海道まで来たんだね」
「そうよ、かわいい1人娘だもの」
私がそう言うと、娘の顔が強ばった。
「この前は広島に行ったじゃない?その後、何も話を聞いていないけど、どうだったの?」
「大歓迎されたわよ。お母さん、もっと長く広島にいてくれないかなぁ?、なんて、かわいいことを言ってくれて」
それを聞いた娘の目から涙がこぼれた。
「お母さん、どうしていつもそんな見え透いたウソをつくの?私、本人からちゃんと聞いてるのよ。頼んでもいないのに広島まで来られて大迷惑だったと言っていたわ」
この子ったら、いつからこんなに性格がひねくれてしまったのかしら?
あっ、そうだ。久しぶりにカラオケでも行けば、この子の気持ちも変わるかもしれない。
「ねぇ、二人でカラオケに行きましょうか?」
「お母さん、いや、佐代子さん、あなたは全然人の気持ちがわかってない。私、佐代子さんの娘であることを恥ずかしく思う」
そう言い残して、娘は私の元から立ち去っていった。
息子も我が儘なら、娘も我が儘ね。
私は仕方なくホテルに戻り、1人カラオケをすることにした。
私には、6,000人を超えるフォロワーがいる。ほらっ、私がなにげなしに歌った投稿にも1,000以上のビューがついている。
今回はアニソンでも歌おうかしら?
たとえ家族から嫌われたとしても、私には6,000人を超えるフォロワーがいる。投稿してアクセス状況を確認すれば、いかに私が人気者であるのか、分かるというものね。
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