連載小説🛸宇宙語インフォーマント(下)[最終話]

前話はこちら(↓)

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宇宙語インフォーマント(下)  [ 最終話 ]

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　私はコメント欄に目を通してみた。さきほどの記事に対するコメントは、以下のようなものであった。

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💓💓💓💓💓💓💓💓💓💓💓💓💓
へぇ。私は元気だよ。
一回だけでもいい。私を抱き締めてくれないかな？
もう人肌が恋しくて仕方ないのよ。
もし、会ってくれたら、ベッドの上でたくさんお話したいなあ
💓💓💓💓💓💓💓💓💓💓💓💓💓

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　私は唖然とした。何の変哲もない記事にこのようなコメントが書かれるとは！
　たしかに「宇宙語」である。文脈を無視して、好き勝手なことが書かれている。

　そうこうしているうちに、先方からまた新着メールが届いた。
　長くなるので一部割愛するが、どのコメントも、記事の内容とはかけ離れた「自分語り」の宇宙語に満ち溢れたものだった。
　いくつか挙げてみよう。

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　まずは東北を旅行したというフォト・エッセイに関するコメントである。

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わんこそば、ねぶた、なまはげ。
私は犬🐶でも、豚🐷でも、ハゲ👴でもないよ～ん(*´∀`)♪💓

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　蕎麦はかためのほうが好きだ、という投稿に対するコメント。

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チン○ン🍄も、かためのほうが好きだよーん💓(*´∀`)♪💓💓
あたしのお○ぱいは、柔らかいけどね✨
笑( ´∀`)笑( *´艸｀)笑( =＾ω＾)💓

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　日本語であることは、かろうじて分かるが、やり取りが成立していない。
　私は気になって、同サイトの記事およびそのコメント欄を見たが、たしかに「宇宙語」が増殖している。

　だが、これは私の力で解読できるものなのだろうか？
　私の専門ではない。
　「語用論」や「社会言語学」の知見を総動員しても謎解きができる代物なのだろうか？

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　言葉は時代とともに変化していく。しかし、このような事例は私の知る限り、今までになかった事象である。
　どこにも書いていない内容を、さも本文に書いてあるかのように装い、好き勝手なことを書く。

　もしかしたら、心理学や行動経済学など、隣接科学の応援をあおがねば、解読不能な言語なのかもしれない。

おわり

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