短編小説 | 仲良し相関図
(1)
誰と誰が仲がよくて、誰と誰が仲が悪いのか?
「仲良し相関図」で検索すると、ファンと思われる人たちが、自分の応援しているアイドルグループの相関図を数多く書いていることが分かる。
自分で集めた情報やうわさ話をもとにして「仲良し相関図」を作っているのだろう。人間関係というものは、端から見ている限り、おもしろいものなのだろう。
「三人集まれば派閥ができる」みたいなことが言われることがある。
今の時代では、命まで取られてしまうことはマレだと思うが、できれば自分の生存にとって有利なグループのほうに属していたいものだ。
(2)
今となっては昔のことだが、小学生時代や中学生時代には転校が多かったから、「仲良し相関図」みたいなことを意識していた。
あえて紙に書くことはしなかったが、新しい学校に行ってまず心がけたのは、どの人とどの人が仲がよくて、どの人とどの人が仲が悪いのかということを見極めることである。
新しいクラスに入る。授業が始まる。勉強のことよりも、このクラスの「権力者」は誰なのか?、ということに注目したものだ。
とりあえず、新しい学校に慣れるまでの間に、「権力者」(ガキ大将的な人物)と親密になることが一番大切である。こういう人物とは、すぐに張り合ってはいけない。
だいたいどの中学校でも、「野球部」のキャプテンが「権力者」であることが多かったように思う。
(3)
とりあえず、「面従腹背」にせよ、権力者と話ができる関係になったら、次にすべきことは、「人間関係の要(かなめ)」あるいは「人間関係のハブ」になっている人物と仲良くすること。
こういう人物は、一見したところ、権力があるようにはみえないのだが、そのクラスの情報が彼(あるいは彼女)に集まってくる。
一般的に言って、情報が集まる人物というのは、「権力者」ではなく、「口のかたい人物」である。人の話はたくさん聞くが、決して軽々しく自分の知り得た情報を他人に話すことはない。しかしながら、そういう人物の近くに常に陣取っていれば、私の耳にもあらゆる情報が聞こえてくるようになる。
(4)
ここまで来れば、しめたもの。「権力者」および「情報ステーション」を知れば、その他大勢の「相関図」をゆっくりと作成すれば、だんだん過ごしやすくなっていく。
誰に話をすると、誰に話が通りやすいのか?
この人になら、たとえ本音を吐露したとしても、他の人には伝わらない。
そういうことが分かってくると、悩み事を相談したり、誰と遊ぶと楽しいのか、この人とは話しても喧嘩にしかならないなとか、そういうことが分かってくる。
(5)
ひとつ大切なことを書き忘れていた。新しいクラスの「担任の先生」のこと。本来は「仲良し相関図」的なものは、先生が把握しておくべきことだと思う。
人気のある先生は、「仲良し相関図」の使い方がうまい。
誰一人孤立しないように、うまく席替えをしたり、うまく生徒に話しかけることができる。
人間関係に疎い先生は、何でも学級委員長や成績の優秀な人にしか話しかけない。彼らならクラスのことを把握していると思い込んでいるのだろう。
学級委員なんて、権力者ではない。面倒臭い仕事が多いだけで、割に合わない「商売」だ。嫉妬の対象にもなりやすい。
なんだか知らないけど、二学期の終わり頃に引っ越してきて、その次の三学期に学級委員長をやらされたことがあった。
「これってイジメじゃね?」
まぁ、いいや。その頃には「権力者」と「情報ステーション」と仲良くなっていたもんね。
おしまい
120%フィクションです😄。