短編 | 一生のお願い
「一生のお願いがあるの」
いままでにひろ子は何度言ったことだろう?
「一生のお願いがあるの。健さん、私と付き合ってください」
誰とも付き合わないと決めていたわけではないし、付き合っている女がいたわけでもない。僕はそれほど深く考えることもなく、ひろ子と付き合い始めた。
「一生のお願いがあるの。いっしょに沖縄に旅行に行きたいんだけど」
ひろ子にそう言われてから1年後、僕とひろ子は一緒に沖縄に行った。
今思えば、首里城が全焼してしまう直前に、僕たちは見学することが出来てラッキーだったのかもしれない。泳ぐことはなかったけれど、海辺でぼっーと二人で過ごす時間を持つことも出来た。
僕はひろ子の「一生のお願い」を聞いて、それを実現していくことに喜びを覚えるようになっていった。
きっとこのまま、僕たちは結婚するんだろうな、と思った。
プロポーズくらいは、ひろ子に「一生のお願い」と言われる前に、僕から言おうと思った。
クリスマスのイルミネーションが始まった頃、僕は指輪を買った。ホテルも予約しておいた。
クリスマスになった。予約しておいたホテルで食事をしている時、プロポーズした。
「えっ?ウソ。すご~い。この指輪、高かったでしょう?すっごく、嬉しいんだけど」
僕は言った。
「一生のお願いがあるんだ。僕と一生、一緒にいてくれないか?」
ひろ子はコクりと頷いた。
僕たちはそのまま、一晩中愛し合った。とても甘美な一晩だった。
明くる日、目覚めたとき、僕のとなりにひろ子の姿はなかった。その代わりに、机の上にはひろ子の手紙が置いてあった。
健さん、指輪をいただき、ありがとうございました。
一生のお願いがあります。
私のことは、一生、探さないでください。楽しい思い出をありがとね。
(通称) ひろ子
~おわり~
真染さんのイラストに着想を得て、書いてみました😊。
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記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします