SS | 顔自動販売機
「この顔にも飽きてきたわ。ちょっと自販機で新しい顔を買ってくるわ」
最近、彼女は頻繁に顔を取り替えるようになった。ワイコインでお気に入りの顔を選べるのだから。
「またか。別にいいけど、やっぱり一番最初のキミの顔がよかったんじゃないか?」
彼女は不機嫌そうな表情を浮かべた。
「それは言わない約束でしょ?注意書きを読まずに使ってしまったのだから」
私には返す言葉がなかった。
顔自販機で売られている「顔」のパッケージには、小さな文字で次のように書かれている。
「お手軽にあなたの顔を更新することができます。(中略)ただし、装着後は、あなたの体と一体となり、もとの顔に戻ることはできません」
「本当に私の気持ちが分かりたいなら、あなたも別の顔に変えてみれば。私が一度の気の迷いでどれだけ苦しんでいることか… …戻れるなら戻りたい」
軽率な彼女を責めていた自分こそ、軽率だった。かけがえのない女。私も顔を取り替えてみることにした。
現在の私(↓)
現在の彼女(↓)
(409文字+イラスト2枚)
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記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします