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短編 | 東京ドーム



 小さい頃から野球に対して全くいい思い出がない。
 好きな見たい番組があっても、巨人好きな親父がチャンネル権を持っていたから、野球中継が長引くと裏番組を見ることが出来なかった。
 裏番組じゃなくても、9時くらいで終わるはずの野球中継が延長されれば、僕の見たい番組はそれ以降になったり、中止になることがあった。
 その頃は、スポーツと言えば野球であり、水泳をしていた僕には何の関心もなかった。

 本当は野球になんか全く興味がない人でさえ、話を振られれば、「私は野球になんか興味が全くありません」なんて言えない雰囲気があった。

 中学生の頃、僕の担任の先生は大の阪神ファンで、岡田・掛布・バースが活躍したときは機嫌がよく、大負けした次の日には不機嫌だった。僕は野球には全く興味がなかったが、先生の機嫌を予想するために、阪神の試合結果を気にしていたものである。

 僕の親友は、当時では珍しいパ・リーグの西武ファンだった。パ・リーグとセ・リーグだから、日本シリーズを除けば、話題が競合することなく、同じ野球ファンとして、先生とよく野球談義をしていた。

 「野球なんてどうでもいいわ」という僕は、先生と親友が野球の話をしている時には、こちらに話題が振られないように距離をとっていたものだ。

 「山根くんはどの球団が好きなの?」なんて聞かれたら大変だ。しかし、運悪く話に巻き込まれることもあった。

 先生に対しては「好きな球団はないんですけど、掛布ってすごいですね」と言い、親友に対しては「大田選手って勝負強いよね」などと、話を合わせている自分に嫌悪感を抱いたものだ。

 僕の記憶では、中学生の頃に、巨人の本拠地が後楽園球場から東京ドームになった。その頃は、西武が強かったから日本シリーズを見るために、僕の親友が出来たばかりの東京ドームにひとりで出掛けた話を聞かされた記憶がある。

「東京ドームって、すご~くデカいんだ」という、別に実際に行かなくても分かるような話を延々と聞かされた記憶がある。僕は「どうでもいいわ」とも言えず、適当に相槌をうつしかなかった。

 高校生になってすぐの頃に、Jリーグが始まった。その頃になると、野球とサッカーの人気が二分されて、別に野球ファンじゃない人でも、少し居心地がよくなった。

 僕はどちらにも興味がなかったが、野球ファンの前では「サッカーファンなので」と言い、サッカーファンの前では「野球ファンなので」と、お茶を濁すことで、どちらの話題もうまく避けられるようになった。その意味で、Jリーグが出来て本当によかったな、と思ったものだ。

 大学に入学した頃には、野球やサッカー以外のスポーツにも光が当たるようになって、スポーツにほとんど興味のない僕にとっては過ごしやすい時代になりつつあった。

 しかし、就職活動の頃には、野茂選手が大リーグに行って、野球の話題から逃れる難しさを知った。面接の時に、不意に野茂選手の話題が振られた時には「すごいですね、野茂選手のあの投げ方は…」としか言えず、場が凍りついた。
「あの…山根さんのご意見はそれだけですか?」と聞かれ、思わず「野球には興味がないんです」と答えたら、最終面接で落とされた。野球にはろくな記憶がない。

 なんだろうな。僕は、WBCとかW杯があるときには多少野球とかサッカーに興味を持つんですけど、いつも「にわかファン」でして。
 日本代表とか高校野球で、日本とか地元のチームが勝ち残っている間は、そのスポーツに関心を持つのだけれど、大会終了を前に興味・関心が萎んでしまうことがほとんどである。

 幼稚園の頃から続けていた水泳だって、テレビで「世界水泳」とか「オリンピック」の中継があったら見ることはあるけれども、やはり見るよりも実際に自分で泳ぐほうが好き。

 別にそれでいいですよね?
 まわりがどんなに盛り上がろうと、無理やり興味・関心をもたなくたって。

 今までの人生を振り返ってみると、ずっと好きが持続しているのは、水泳と英語だけ。別にまわりに水泳や英語に関心がある人がいなくたって、自分で泳いだり、自分ひとりで英語を勉強したりしているときが、いちばん幸せを感じるのだから。。。










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記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします