wantって形容詞なの?
国語の授業で先生に
「動詞を1つ挙げてください」と聞かれた。
その前の英語の授業で「want」という動詞を覚えたばかりだったから、僕は自信を持って
「ほしい」と答えた。
先生がニコッと笑った。
「山根くん、残念。『ほしい』は形容詞です。日本語の動詞は『ウ段』で終わります。『イ段』で終わるのは形容詞ね」
先生の指摘で「あぁそうか…」と思ったのだけど、
「でもさぁ、英語では『ほしい』は動詞だと習ったんだけどなぁ」という疑問を持った。
疑問を持ったけれども、国語の先生のことがあまり好きではない…というか、大嫌いだったから、塾の先生に尋ねることにした。
家に帰ってから、塾に行った。
塾の先生に、学校の国語の授業のことを話したあと、僕は尋ねた。
「先生、英語では『want』は動詞なのに、日本語では『ほしい』が形容詞なのはなぜですか?」
「山根くん、『want』は『ほしい』じゃなくて『欲する』と覚えておけばいいんじゃない?」
「あぁ、そうですね。ありがとうございます」
塾の帰り道、チャリをこぎながら僕は思った。
「じゃあ、なんで学校の英語の先生は『want』は『ほしい』だと教えたのだろうか?」と疑問に思った。
その2日後、英語の授業があった。
僕はタイミングを見計らって、質問を先生にぶつけるつもりでいた。
チャイムが鳴った。先生に質問しよう!、と少し僕はドキドキしていた。
教室の扉が開いて、先生が入ってきた。
「うわぁ、先生、すごくきれい!」
心の中で僕は思った。
先生は美容院に行ってきたばかりだったし、今までに見たことがない新しい服に身を包んでいた。すごくかわいい、と思った。
結局僕は、緊張してしまって、授業中に質問することが出来なかった。当時先生は、新米教師で学校にいる女の先生の中でいちばん可愛かった。正直に言おう。僕は先生のことを「欲しい」と思った。
「欲しい」が形容詞か動詞かなんて、どうでもよくなった。ただ「欲しい」って思った。
でも、それからしばらく経って、先生のお腹は大きくなっていった。
あぁ、先生は結婚していたのか。
授業の最初の挨拶では、「Miss Aoki」ってみんなに言わせていたから、未婚なのかと思っていた。
なんで先生は「Mrs」なのに「Miss」を生徒に使わせていたのだろう?
結局なんでなのか聞くこともなく、先生は産休に入った。
その次の年は、英語の先生がベテランの女の先生に変わった。質問しやすい先生だったけれど、僕はなにも質問することはなかった。英語は、僕の中では超得意科目になっていたから。青木先生のおかげで…
あれから、長い年月が過ぎた。
何気なしに春先に、教員の人事異動の新聞を見た。
青木先生は、校長先生になっていた。
「ほしい」が形容詞なのか、動詞なのかは、もうどうでも良くなっていたし、先生のことを「ほしい」とも思わなかった。ただただ「懐かしい!」としか、僕には言い様がなかった。
…おわり
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記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします