モデル思考 | 渋滞学
「モデル思考」と言っても、ファッションモデルのことを書くつもりではなく、まして「モデル志向」の話をするわけでもない。
「モデル思考」とは、経済学のような社会科学で用いられるような思考法のことである。
たとえば、伝統的・標準的な経済学では、「ホモ・エコノミクス」(合理的経済人)という、自己の経済的利益の極大化を目指す人間というものを仮定する。そして、そのようなホモ・エコノミクスを前提として、数理的なモデルをつくり、人間の経済活動を分析・考察する。
私が学生のときは、数理モデル自身の難しさもさることながら、ホモ・エコノミクスの仮定や欲望不飽和の仮定というものが納得できず、学ぶ気持ちにならなかった。
それからしばらく経って、NHKの爆笑問題が司会をする番組で、西成活裕さんが出演したことがあった。そこで知ったのが、「渋滞学」というもの。
簡単なモデルではあるが、赤信号で車が止まったあとに、青信号になって車が動き始めるときの様子をうまく再現できている(ように思った)。
今回の記事は、セルオートマトンを使った簡単なモデルについて書いてみたい。あとで知ったことだが、中学1年生の数学の教科書のコラムでも紹介されたことがあるようだ。
では、本題に移る。
今、3台の車が次の図のように止まっている。進行方向は右から左である。
この状態で信号が青に変わる。すると、①の車は、前に車がいないので、左へ進むことができるが、②の車は①の車がいる間は動けない。③の車も②の車がいる間は動けない。1秒後は次のようになるだろう。
いま現在、前に車がいないときは、1秒後に、車1台ぶん前進し、いま現在、前に車がいるときは、1秒後もいま現在の位置に止まる。すると、次のようにその後の車の動きを予想することができる。より抽象的な図を描くと次のようになる。5台の車を動かしてみよう!
いま現在
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1秒後
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2秒後
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3秒後
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4秒後
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5秒後
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けっこう実際の車の動き方に近いように思う。
おそらく実際の動きはもっと複雑かもしれないが、渋滞時の車の動きをうまく再現できているようだ。
ちょっと頭がごちゃごちゃっとしたときは、モデル思考してみると意外と簡単に説明できることもあるに違いない。