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【人間の作る世界が大好き】 柴トラ夏子 インタビュー


柴トラ夏子 個展「柴犬はネコの夢を見る」を、2025年1月22日(水) – 2月2日(日)の期間にピカレスクギャラリーで開催いたします。

今回は、柴トラ夏子さんにご自身のことや制作エピソード、今回展示される作品についてインタビューしました。ぜひお楽しみください。


自己紹介をお願いします

私は主に日本画の画材を使用して絵を描いています。池袋駅をはじめとする駅前の風景や、動物や子どもをモチーフに創作活動をしています。

猫が亡くなった次の日に衝動的に猫の肖像画を描いて以来、自分の好きなことや心動く事を大切にしたいと思うようになりました。「柴犬とトラネコ」シリーズは小学生の頃からともに過ごしたシニアの愛犬と、事故にあい半身不随になっているところを保護した愛猫をモデルにしています。
二匹は空に昇りましたが、大切に絵を描いています。

現在の作品の世界観が生まれたきっかけを教えてください。

普段は人や車が行き交うにぎやかな風景を描いているのですが、今回展示しているのは雪に包まれた世界をテーマにしたものです。
この「雪の中を柴犬が歩いている絵」を初めて描いたのは、ここピカレスクギャラリーさんで人生初めての個展を開かせていただいた大学生の頃。猫が亡くなって数ヶ月の頃でした。

広い空間に柴犬がポツンと立っている風景は私の心境とも言え、絵を描くことで心を落ち着かせるためでした。その後、柴犬の後ろにはカートに乗った猫が登場し二匹がにぎやかな街中を歩く作風に変化していったのです。

柴犬が亡くなった今、もう一度このテーマに取り組んでいます。 

現在使用している素材で作品を作る理由を教えてください。

日本画と言っても色々ありますが、私が主に使っている絵具は「水干絵具」「岩絵具」「胡粉」です。これらは粉状あるいは砂状でさらさらとしており、これを接着力のある「膠」や「合成樹脂」等で練り込んで紙に定着するようにします。
チューブから出して使えない分すこし手間がかかります。最初は面倒でしたが、この手間がある事で描こうとしているストーリーについて考える時間が生まれていると感じています。

また、雪がテーマの作品には「胡粉」という白い絵具が重要です。貝殻や石灰岩を利用した白色で、もったりしています。この胡粉を塗った和紙の上がゲレンデにつもる雪のように見えました。
雪の絵を描いていると、胡粉の白色が全てを包み込むような感覚を覚え心が静かになります。穏やかで切ないこの気持ちを、作品を通して皆様と共有できれば幸いです。

普段、何からインスピレーションを受けていますか?

街の風景からインスピレーションを受けており、基本的に実在する景色を描いています。それは今回の雪の絵も同じで、雪に包まれてほぼ見えなくても場所の設定があります。

「お!この建物おもしろいな」「あの車かわいい形だな」「あそこの観光客は楽しそうだな」と観察し、惹かれる景色を見つけたら寄り道して散歩。あまりに良かったときは小さいエスキース帳や裏紙にひょろひょろっと描いておき、これをとっておいて後ほど見返すと良い感じのアイデアが浮かんだりします。

そうしたら頭の中で建物やクルマを配置して動かしてみたり、柴犬と猫を歩かせてみたりします。この時の頭の中は「どうぶつの森」で歩いている時のゲーム画面に似ています。前後左右に視点を動かして構図を作り、そうしているうちに構想がどんどん膨らみます。

影響を受けたアーティストや、作品はありますか?

子どもの頃から美術番組や作品を観るのが好きで、知らないうちにたくさんの作品から刺激を受けていると思います。
日本画家の中では田中一村の描く絵が好きです。中学校の美術室に置いてあった画集に衝撃を受けました。特に景色の切りとり方に共感し、あまりの魅力にワクワクしました。
後に美大に行くことを決めた際にも、なじみも無く謎も多い日本画学科を選択する理由の一つになりました。

これからどんな作品をつくりたいですか?

小さめのサイズを発表することが多いですが、今回展示する「雪の日のさんぽ 立派な新幹線」(15号/50×62㎝)のように大きめサイズをもっと描いていきたいです。両手で持つようなサイズになるとスケール感も増すので、もっと没入感ある絵を描きたいと考えています。
また、身長ほどある100号サイズも好きで、より積極的に発表できるようにしたいです。

今描きつづけているテーマも続けつつ、新しいテーマも見つけられるように興味関心を広げたいです。

ご出展いただく作品のコンセプトを教えていただけますか?

雪の日のさんぽ 再会


今回のメインビジュアルに採用いただいた象徴的な絵です。
柴犬の背中越しに雪の世界を観る構図はこのテーマを代表するものだと思います。

この絵で表現したかったのは老犬・柴犬の旅の最期。
猫を探して長い旅をした老犬は、ついに猫に出会えるのか──というシーンです。

ずっと探していた猫が向こうから歩いてくる姿が小さく見えます。老犬がそれに気がついているかはわからないものの、確かな足取りでそちらの方向に向かっている。そんなワンシーンです。
空は雲母と岩絵具を用いてキラキラ光るように、降り積もった雪はたっぷりの胡粉でしっとりと水分を感じられるように描きました。

老犬の瞳 / 猫の瞳

数年ぶりに写実的な表現で「柴犬とトラネコ」を描いた絵を発表します。
毛の一本、毛穴の一つ、まつげまでこだわりを持って取り組みました。
中でも瞳の中は試行錯誤しました。雪の反射、若くして亡くなった猫と年老いた犬の違い、粉っぽい日本画画材でいかに潤いを表現するか……など。

一番は、お互いの瞳の中に移る犬と猫の姿です!
ぜひ近づいてみていただけると嬉しいです。

風吹く丘の上


よく見ると書いてあるのですが、これは丘ではなく東京ドームなのです。
旅をしている老犬が、強風から逃れるために入場ゲートの下でやり過ごそうとしているワンシーンです。

今回の作品群には謎のいきものが出てきますが、彼らは人間が作った乗り物達。
この絵では一台のスポーツカー。人から大切にされてきた彼は、力強い立ち姿でその帰りを待ち続けています。

ボックス型パネルを包むように雲肌麻紙を張ってあり、横や上下から見ても絵を楽しめるようになっています。

お客様、ご来場予定の皆様に向けてメッセージをお願いいたします!

雪の絵は静かで、おとなしい世界です。
それでも雪の中には街や電柱、車、電車があり人間の温もりが残る世界を表現しました。
私は人間の作る世界が大好きです。人間が作った街や車も人間の事を好きでいてくれたらいいなぁと思います。
人々の帰りを待つ彼らの姿が、誰かの心を温められたら嬉しいです。

また、犬が猫を探す姿を描くこの作品群は別れや旅立ちがテーマでもあり、私自身を癒すものでもあります。それがめぐり巡って様々な形の誰かの想いに寄り添う事が出来ればいいなと思います。

日本画の画材で描いた独特な質感をぜひ、会場でご覧いただければ幸いです。

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柴トラ夏子さん、たくさんの貴重なお話をありがとうございました。
皆さまはどのエピソードが心に残りましたか?

ピカレスクスタッフは「私は人間の作る世界が大好きです。人間が作った街や車も人間の事を好きでいてくれたらいいなぁと思います。」という言葉が印象に残りました。

なぜ柴トラ夏子さんが「人間の作る世界が大好き」なのか、また柴トラ夏子さんが描く街や車が人間のことをどう思っているのか、作品鑑賞を通じて想像を膨らませてみたいと感じました。

柴トラ夏子さんの展示作品実物を一堂に鑑賞できる貴重な機会です。皆さまのお越しを、お待ちしております。

柴トラ夏子 個展「柴犬はネコの夢を見る」


〈会期〉2025年1月22日(水) – 2月2日(日)
〈詳細〉https://picaresquejpn.com/shibatora-natsuko_exhibition_2025/
〈柴トラ夏子 公式SNS〉
X(旧Twitter) https://twitter.com/shibatoraneko
Instagram https://instagram.com/shibatoraneko
HP https://shibatoraneko.tumblr.com

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【基本営業日時】
*営業 水 - 日・祝 11:00 - 18:00
*定休 毎週月火
*会場 Picaresque Gallery
*住所 東京都渋谷区代々木4-54-7
*電話 070-5273-9561

■開催中&過去に開催した展示一覧
https://picaresquejpn.com/category/information/
■開催&開催予定の展示一覧
https://picaresquejpn.com/exhibition-calendar/


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