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「エレクトリックベースのソロ演奏」の世界。おすすめのアルバムを紹介。

「楽器のソロ演奏」といえば、どんな楽器の種類が思い浮かぶでしょうか。多くの方はピアノヴァイオリンなどのクラシック、サックストランペットなどのジャズなどを思い浮かべるかも知れません。しかし、広大な音楽の世界にはクラシックやジャズだけには留まらない、楽器の数だけのソロ演奏があります。

ソロ演奏は、ピアノやサックスなどのアンサンブルの花形だけのものではなく、「エレクトリックベース」にも存在します。一般的には「バンドの低音楽器」のような印象を持たれやすい楽器ですが、ベースラインだけではなく、広い音域でコードやメロディーを演奏することができる、幅広い表現力を持った楽器であることは、まだまだ知られていません。

今回の記事では、ベースの可能性と魅力を伝えるべく「エレクトリックベースのソロ演奏」を収録したアルバムのオススメを、年代順で紹介していきます。

アルバム紹介

Jaco Pastorius - Honestly (1991)

アメリカのベーシストであるJaco Pastoriusの作品。晩年のライブとスタジオでのソロ演奏を集めた音源。Pastoriusはジャズ、フュージョンを代表するベーシストであり、ベースの奏法に革命を起こし、ジャンルを超越した影響力は、ベースの歴史において避けて通れません。晩年の演奏には、やや陰りも見られますが、貴重なソロ演奏なので紹介。ソロ演奏以外で、彼の全盛期の演奏が聴きたい方は、1stアルバムの「Jaco Pastorius」もオススメします。

Eberhard Weber - Pendulum (1993)

ドイツのアップライトベース奏者であるEberhard Weberの作品。本作では、エレクトリック・アップライト・ベースと、エフェクターや多重録音を駆使した、幽玄なアンサブルが聴けます。ECMを代表する名作。

Victor Wooten - A Show of Hands (1996)

アメリカのベーシストであるVictor Wootenの作品。エレクトリックベースの革新者として名高い彼の独自のスラップ奏法、コード演奏タッピングなどを、余すところなく聴くことができます。一部の曲に、ボーカルや声が入っていますが、基本的にソロ演奏が中心なので紹介しています。

Michael Manring - Soliloquy (2005)

アメリカのベーシストであるMichael Manringの作品。Jaco Pastoriusに師事していた過去があり、独自の演奏方法を追求した演奏家として知られています。フレットレスベースや、10弦などの多弦ベースまでもを次々と持ち替えて使いこなす、彼の多彩な技巧と、巧みなフレージングを堪能できます。

Jeff Schmidt - Outre (2007)

アメリカのベーシストであるJeff Schmidtの作品。2005年に開催された、「Bass Extremes International Solo Bass Competition」という世界大会の優勝者である彼は、規格外の演奏技術を誇ります。隙のない両手タッピング奏法は圧巻です。

Jean Baudin - Solace (2008)

アメリカのベーシストであるJean Baudinの作品。9弦11弦12弦などの巨大な多弦ベースタッピング奏法スラップなどのあらゆる技巧と、エフェクターを駆使して弾き倒します。「オーバーダビングなし」という説明文は、膨大な修練と矜恃を感じさせます。

Squarepusher - Solo Electric Bass 1 (2009)

イギリスの電子音楽家、ベーシストであるSquarepusherの作品。2007年にフランスのパリで行われたライブパフォーマンスの音源。1本の6弦ベースを、コード演奏スラップなどのあらゆる技巧で弾き倒す、多彩な超絶技巧は圧巻です。

Björn Meyer - Provenance (2017)

スウェーデン出身のベーシストであるBjörn Meyerの作品。6弦ベースを使用しつつも、決して技巧をひけらかすことはなく、アンビエントのように静謐な「音色」と、叙情的で美しいメロディーが魅力のアルバムです。一部の曲でアップライトベースが使用されていますが、基本的にエレクトリックベースのソロ演奏です。

Ichika Nito - he never fades (2018)

日本のギタリスト、ベーシストであるIchika Nitoによる作品。2010年代の後半に、SNS上に突如として現れた彼は、両手タッピング奏法を駆使したエレクトリックギターの演奏で、新世代のギターヒーローとして世界的な評価を獲得しました。近年ではロックバンドDiosのギタリストとしての活動も、国内で注目されています。彼はベースの演奏技術も圧倒的で、得意とする両手タッピング奏法によるピアノのように繊細な強弱表現が、幽玄な残響音の中で響き渡ります。

Andi Douwt - Elegy (2019)

ドイツのベーシストであるAndi Douwtの作品。心象の描写を追求したダークなメロディーと、オーバーダビングによる金属的なアンサンブルや、効果音がユニークなアルバムです。

JESÚS RICO PÉREZ - SCARS III - music for solo bass guitars (2020)

スペインのベーシストであるJESÚS RICO PÉREZ による作品。ベースフレットレスベースを使用した作品。超絶技巧をひけらかす奏者ではなく、繊細な強弱表現間のとり方など、卓越した表現力で深淵なメロディーを奏でます。ベースのソロ演奏には、繊細な感情を呼び起こす力があるのだと感動します。

Damian Coccio - This Strange Life (2021)

アメリカのベーシストであるDamian Coccioの作品。5弦ベースと、4弦、5弦、6弦のフレットレスベースを使用しています。伸びやかなレガートや、豊かな残響を含んだ内省的な演奏はアンビエントのようで美しいです。

Halil Çağlar Serin - Hypnopedia (2021)

トルコ出身のベーシストであるHalil Çağlar Serinの作品。キレのある速弾きから、温かみのある音色コード演奏まで堪能できます。「コードを演奏するならギターにすればいいじゃないか」とはならない、ベースの魅力を引き出す確かな演奏です。

Sujong Park - Monowhale (2022)

韓国出身のベーシストであるSujong Parkの作品。タッピングスラップを多用した、メロディアスなフレーズが光ります。確かな技巧を突き詰めつつも歌心のある演奏なので、とても聴きやすいアルバムです。

最後に

如何だったでしょうか?ベースのソロ演奏は、バンドでは聴くことができない、多彩な楽器としての魅力が引き出されることがわかると思います。

ベースの音色は優しく温かみがあり、幽玄な低音域や、伸びやかな高音域には、瞑想的な魅力がありますよね。

「エレクトリックベースのソロ演奏」の作品は、紹介するメディアが殆ど存在せず、情報が少ないので探すことが困難です。これからも新しい作品を発見次第、本記事に書き加えていきたいので、ベース愛好家のお役に立てれば幸いです。

ここまで読んでくださった方へ、オマケといってはなんですが、私が作成した「ベースのソロ演奏曲」を集めたプレイリストを紹介して終わります。記事では紹介しきれなかった曲も多く収録しているので、お気軽にどうぞ。

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