
マルチモビディティってなに?鍼灸師必須知識を理解しよう。

こんにちは!HAMTライターのてっちゃんこと白石です。
我々鍼灸師は、「鍼灸」の専門家として鍼灸治療を提供するのが基本的な役割です。ただ、訪問の現場では一歩引いた視点として「患者さんの意思決定を支える役割」を担う専門家としても関わる必要があります。
そういった役割を担う上で、フィジカルアセスメント・リスクマネジメントなど医学的な知識の研鑽も必要となります。
そんな皆さんに対し、今回は訪問鍼灸師必読のテーマ「マルチモビディティ」について解説していきたいと思います。
とは言え、「マルチモビディティ」という言葉が聞き慣れない方も多いのではないでしょうか。まずは今回の記事を通じて「マルチモビディティってこういうことなのね」と全体像を掴んでもらえたらいいかなと考えています。
1.マルチモビディティってなに?
マルチモビディティの明確な定義はまだ存在していませんが、”多疾患へ依存”と訳されることが多く、「2種類以上の主たる慢性疾患が併存している状態」と言われています。
以下の項目はイギリスのマルチモビディティのガイドラインで、「介入することが望ましい患者さんの特徴」を述べたものになります。
担当している患者さんで以下のいずれかに当てはまっているものはありますか?
・治療やADLを管理することが難しいと感じる
・複数のサービスからケアを受けていて、追加のサービスも必要
・長期にわたる身体的・精神的な疾病をもっている
・フレイル
・転倒歴がある
・救急医療を頻繁に受けている
・日常的に複数の薬が処方されている
また、マルチモビディティの割合はどのくらいいるかというと、「65歳以上では62.8%が該当」しているそうです。
我々が出会う患者さんに限れば、体感的にはもっと多いように感じています。おそらく、訪問で日常的に介入している「患者さんのほぼ全例はマルチモビディティに該当している」と言っても良いのではないでしょうか。
そう考えた時、マルチモビディティに対する正しい知識は在宅鍼灸師にとって必ず知っておきたいものであることがお分かり頂けるのではないかと思います。
2.マルチモビディティの視点がないとどうなる?
実際に普段我々訪問鍼灸で遭遇している患者さんのほとんどは複数の慢性疾患が併存している状態となるわけです。
各疾患それぞれに対して治療が行われていたらどうなってしまうのでしょうか。
仮に担当している患者さんが複数の慢性疾患を抱えていたとします。
ではそれぞれの疾患に対し最適な治療を選択すれば良いのか?
— てっちゃん|パーソナルトレーナー (@physio_tetsuya) August 5, 2024
Boydによると、79 歳の女性で、骨粗鬆症、変形性関節症、高血圧、2 型糖尿病、慢性閉塞性肺疾患を持つ患者に対し、ガイドラインに沿った治療を行った場合、12種類19錠の薬を1日5回服用する必要があるそうです。https://t.co/uIVhS2fiwl
上記の論文はあくまで架空の症例となるのですが、疾患それぞれに対して治療を行った場合、「ポリファーマシー」と言われる多剤併用を引き起こしてしまう恐れがあります。
【ポリファーマシー】
「Poly(多くの)」+「Pharmacy(調剤)」の造語。
単に薬が多いことだけでなく、薬が多いことによって、有害事象につながる状態につながる問題のことをいいます。
我々鍼灸師が薬の処方に対して何かできるわけではないですが、薬の処方のみならず治療介入にあたりマルチモビディティの知識をもつことで「過剰な治療介入を減らし、患者さんにとって過不足ない最適な治療を選択できる」ようになります。
3.マルチモビディティ患者への基本原則「バランスモデル」

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