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読書会レポート『ドーナッツホール読書会 vol.4』

2025年2回目のドーナッツホール読書会を先週開催しました。今回はアイスブレイクとして積読本の開陳🔓をしていただきましたが、その人それぞれの個性が積読リストにも出ていたのが面白い始まりとなりました!今回は数名のキャンセルありましたが予定時間を超過するくらい本の話が尽きない回になりました。

今回の投稿でもみなさんが持って来られた本と、各本についての紹介や感想を要約してみました。要約だとその時の雰囲気が出なかったり不正確になっていたりするかもしれませんが、当日どんなことが話題に出たかが伝われば。そしてその中に興味ひかれる本があればぜひそちらも読んでみてください。


紹介された本

村田沙耶香『消滅世界』
https://calil.jp/book/4309416217

小山清『風の便り』
https://calil.jp/book/4904816366

三島由紀夫『金閣寺』
https://calil.jp/book/4101050457

久保寺健彦『青少年のための小説入門』
https://calil.jp/book/4087754421

宮地尚子『傷を愛せるか』
https://calil.jp/book/4480438165

三島由紀夫『命売ります』
https://calil.jp/book/4480033726

永井路子『望みしは何ぞ』
https://calil.jp/book/4120025470

『小山さんノート』
https://calil.jp/book/4909910190

畑正憲『ムツゴロウの青春記』
https://calil.jp/book/4323008112


お話の要約

村田沙耶香『消滅世界』

人工授精が当たり前で、恋愛をしない結婚が推奨される、恋愛や結婚、出産といったことの価値観が大きく変化した世界を描いた作品。男性すらも出産するような世界だと、現在のマイノリティやマジョリティといった見方がどう変化しているのか、ということを考えながらOさんは読んでいったそうです。そしてその結果、本作に書いてあることもおかしくはないかな、と思えたそうです。
前回の読書会で村田沙耶香さんの本が紹介されていて、今年は村田作品を読みまくろううと思っているそうですが、村田作品は高田純次に似ていると例えていたのが面白く、気持ち悪いけどはまってしまう魅力があるとのことでした。

小山清『風の便り』

太宰治の弟子だった小山清の随筆、詩、エッセイなどを集めた本。夏葉社から出版され、表紙や挿絵は高橋和枝さんによるもので、それもOさんにとってはこの本の魅力であることを話されていました。
太宰治と通じるようなちょっと屈折したところのある小山清ですが、この本の文章はすごく美しくて前向き。特に娘について書かれた文章が感動的だったそうです。

三島由紀夫『金閣寺』

1950年に起きた金閣寺への放火・炎上を題材に書かれた三島由紀夫を代表する小説。
Kさんは以前読んだ際には理解できず、最近改めて読んで感銘を受けたそうですが、その読書や言語化は一筋縄はいかなかったことを語ってくれました。

再読も最初は「これ読み終わったんだって言いたいためだけに読んでいる」と気づいて、また最初から読み直したことで分かったり共感できるところに気づいたそうです。
主人公の溝口は、極度に接触を嫌っていたり世の中に対する童貞の憧れや嫉妬、そして自己嫌悪のある人物で、その心理描写がこの作品の優れているところです。また美も重要な主題となっていて、金閣は溝口にとって美の象徴ですが、他人に理解されないことやそんな自我を金閣に投影していたのでないか、燃やすことでそれまでの人生と決別できたのでないか、とKさんは言葉にされていました。

他の参加者からは、他の作家も最高の小説と評しているという話がありました。また、この作品で初めて心象風景というものがどういう表現かを理解できた、という参加者もいました。
Kさんはこの作品が好きな人と話してみたい、とのことでした。今後の読書会でそういう会話を聞きたい!

久保寺健彦『青少年のための小説入門』

いじめられっ子の少年と、字が読めない不良少年「あんちゃん」が出会い、小説を書くことを通じて成長していく物語。
坊っちゃん、筒井康隆、サリンジャーなど、本好きにはたまらない、様々な本の話題が盛り込まれているそうです。
ストーリーも「あんちゃんが…」と泣ける展開ですが、人は見かけによらない、どんなきっかけがあっても変われるというメッセージが感動的な作品としてMさんが紹介してくださいました。

宮地尚子『傷を愛せるか』

こちらもMさんの紹介本。現代社会における心の傷との向き合い方を、精神科医の視点から描いたエッセイ。NHKの番組で紹介され、話題になったそうです。
具体的な対処法ではなく、心の傷との向き合い方を優しく語りかける書き方で、読んだことのある他の参加者も「静かな本」という感想がありました。精神科医による心の傷についての本ですが、対処療法ではなく、傷は傷として残していてもいいという優しいスタンスに感銘を受けられたそうです。

三島由紀夫『命売ります』

Iさん紹介の1冊目は偶然にも三島由紀夫の本でした。ルックスの良い若い男性が、新聞広告で自分の命を売りに出し、様々な依頼を受ける中で、生の意味を見出していく物語。
一方で、主人公の男性に好意を寄せる女性がひどい扱いを受けたりしています。三島自身が持つ同性愛的な美意識やめんどくささ、理想と現実の葛藤が反映された作品とのことです。
こちらは金閣寺と打って変わって、割腹自殺をした三島が書いていたとは思えないコメディタッチのスタイル。映画化もされたそうですが、あまり目にせず、図書館でもそんなに見かけないほど隠れた作品となっているのはもったいないと思えるような面白さのある作品と感じられました。

永井路子『望みしは何ぞ』

昨年の大河ドラマ「光る君へ」では藤原道長が主役として登場しましたが、この作品は道長の息子・能信よしのぶを主人公とした歴史小説。
家系図はあるものの似た名前が多くて紛らわしく、「藤原何人出てくるんだ」という突っ込み感想も可笑しかったですが、藤原氏の摂関政治の体制が変わる転換点を描いているということで、題材からして深そうな本です。
「永井路子らしい書き方とかありますか?」という質問に永井ファンのIさんが回答された「会話が鍵かっこでなく、脳内会話のように書かれている」という文章表現にも興味がわきました。

『小山さんノート』

2013年に都内の公園で亡くなったホームレスの女性である小山さんが遺した1991年から2004年までの日記をまとめた本。
この日記が書かれたノート(遺された14年のだけでも80冊を超えたそう)は生前も「読んでいいよ」と言われていたそうですが、実際に読まれたことはなかったそう。それが火葬の際、一緒に納棺される寸前で一読した人たちに「これは残さないといけない」と救われ、活字化のプロジェクトが始まり2023年に出版されました。

小山さんは家庭内暴力から逃れ、貧しさのためホームレスとなりましたが、そのような状況下でも、貴重なお金で喫茶店に入りコーヒーを飲みながら日記を書いたりしていたそう。困難な状況の中で、書くことに生きる意味を見出していたことが伝わってきます。紹介されたOさんはこの本を以前から読んでみたかったそうですが、この日記を通して、小山さん精神的な豊かさ持ち、それを保っていたことを知ることができたそうです。

ホームレスの女性の日記というだけでも珍しいですが、達筆で膨大な量の日記を、有志のメンバーによって活字化したという他に聞いたことがない経緯で出版された本です。Oさんがそんな本に関心を持ったのは、高橋源一郎さんの番組で紹介されていたのがきっかけだったとのことでした。

畑正憲『ムツゴロウの青春記』

ムツゴロウこと畑正憲さんが大分県日田ひたでの中高時代(と少し東大進学しての上京生活)をアツく描いたエッセイに近い私小説。動物に関すること以外の本以外では、これがムツゴロウさんの最初の著作のはずとのことでした(ムツゴロウシリーズは本作の後も何十冊も出ています。ムツゴロウさん、意外な人気作家!)。
中学で出会った後の奥さんとなる純子さんとの恋愛や性を赤裸々に書いているだけでなく、勢いのある文章でスラスラと読ませる本、と紹介されていました。

テレビで放映もされた動物王国で知られるムツゴロウさんですが、創意工夫にかける情熱がすごく、独自の勉強法で東大受験の準備も高2で済ませてしまうほど頭のキレる人だったようです。
文章も抜群にうまく、短く刈り込まれているけど、情熱的で勢いのある文章は、今のライターや文筆家では絶対に書けない文章とのことでした。

Mさん持参の本はカバーがなかったのですが(1971年出版の本で書影もなかったので、上の画像も実物を撮影したものです)、そこから「なぜ古本屋にはカバーがない本が多いのか」というのが話題になりました。
Oさんのお兄さんもそうとのことでしたが、買ったらカバーを取ってしまうのが常の読書人もいて、そういう人の蔵書が放出されて買い取られたものが多いからなのかもしれません。


最後に

ご参加いただいた皆様ありがとうございました!
今回は初めて夜の時間帯での開催でした。落ち着いた雰囲気の中での会となりやってよかったと思える一方、お子さんがいる等でご都合あわなかった方もいらしたので、またいろいろな時間帯で開いていきたいと思います。
次回は少し間が開いてしまうかもしれませんが、決まりましたらこちらでも告知するので、よろしければフォローしてまた見にきてください(スキも大歓迎です♥️)

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