うつ状態からの帰還 Episode 1
はじめに
2019年末から2020年にかけて経験した「うつ状態」について書いてみようと思います。今ではほとんど復活していますが、同じような状態が誰にでも起こり得ると思うので、僕の経験が少しでも参考になればという思いと、自分のリハビリのためにも残しておこうと思います。
フリーランスになって生活が一変した
フリーランスになってから、とにかく突っ走って来たので、サラリーマン時代のように毎日昼休みがあり、毎週末に定期的に休みを取る生活から一変して、仕事に没頭する時は食事や睡眠も疎かにしがちな生活が数年続いてきました。
好きな事を仕事にしているので全然苦ではないんですが、気づかないうちに身体がついてこなくなって、比較的大きなプロジェクトを終えた時などに、燃え尽きたような状態になってしばらく動けなくなることが何度かありました。
そんな時は「あ、またか」という感じで、数日休んでいれば復活できたのですが、2019年末に起きた症状は今までと違っていて、もしかしたらこのまま「うつ病」になってしまうのではないか、と恐怖を覚えるような経験でした。
妻のうつ病
なぜ恐怖を感じたかというと、実は数年前に妻がうつ病になったことがあり、間近でその症状を見ていたからでした。当時はまだサラリーマンだったのですが、寝ている妻を見ながら出勤し、会社から帰ると妻が朝家を出た時と同じ状態で寝ている、という毎日でした。
仕事中も不安に襲われた妻からの電話が鳴り続けることがあり、一人だと何をするか分からないので、ひと目を盗んでは電話して対応していました。また、朝の出勤時に症状が悪くなると、時間通りに出勤できず遅刻や欠勤が増え、大事な会議に出られなくなるなど仕事にも支障が生じ、社内での立場も悪くなっていきました。
特に泊まりの出張で家を空ける時などは妻の症状が悪化してしまい、疲れて帰宅して機嫌の悪い妻を見ると、何のために働いているのか分からなくなってしまい、喧嘩が絶えませんでした。
その頃になると完全に僕のキャパシティを超えてしまい、一時は結婚生活が破綻しかけました。
精神科を受診する
もう二人ではどうにもこうにも解決できない、第三者の助けが必要ということが明らかだったので、信頼できる友人に助けを求め、紹介してもらった精神科を受診しました。
その結果、完全に「うつ病」と診断され、投薬での治療が始まりました。精神科の受診は僕たち夫婦にとっては救いとなりました。この耐え難い状態は病気のせいなんだ、ということがはっきりと分かったことで、それまでお互いがしていた、自分の至らなさを責めることから開放されたからです。
自分たちのせいじゃない、という福音でだいぶ気が楽になりました。処方薬の効果もあり次第に妻の症状は良くなり、薬の量も減っていき、やがてうつ病を克服できました。症状が出始めてから治るまで1年ほど要したと思います。一番辛い時期に相談にのってくれた友人、精神科の先生には本当に感謝しています。
一番辛かったのは妻だったと思いますが、あの状況を二人で乗り越えられたことは僕たち夫婦にとって大きなことでした。
辛かった思い出がよぎる
過去の経験から、うつ病になるとどういう状態になるか分かっていたので、11月末に自分にその傾向が現れ始めた時は、かつての妻のような状態に自分もなってしまうのか、と恐怖を感じました。
経緯
10月末から11月初めのモンゴルでの撮影を前に、機材のテストや装備を揃えたりと段取りの毎日で、緊張状態がしばらく続いていました。
そして事件は渡航3週間前を過ぎた頃に起きました。ぎっくり腰になってしまったのです。
一時は撮影を辞退しようかと考えたのですが、それほど症状が重くなく、日頃から体のメンテナンスでお世話になっているオステオパシー整体の先生のケアもあって、残された日数でのリハビリで十分完治できる見込みがあったので、日々の準備事項にストレッチと筋トレがメニューに加わり、ストイックな毎日を送ることになりました。
その結果、無事にモンゴルロケを敢行し、11月末で編集もほぼ完了したのですが、今度はインフルエンザA型にかかってしまいました。数日前に妻が高熱を出して寝込んでいて、看病からの発症でした。
このインフルエンザが思いの外長引き、治るのに半月ほど要しました。その後も体のだるさが一向に抜けず、何事にもやる気が出ず、何もできずに一日が終わり、仕事部屋はちらかり放題という状態が何日も続きました。
明日こそ、あれをやろう、これをしようと思うのですが、次の日になってもやっぱり何もできず、罪悪感と後悔が積み上がっていきました。
これは何かがおかしいと感じ始め、うつ病診断のサイトで自己判定すると
”うつの傾向が疑われます”
”心や体が不調になっている可能性があります”
という結果が出てしまいました。
具体的にどのような症状かというと、下のような感じです。
・体がだるい、疲れやすい
・夜寝付けない
・朝起きれない
・喉の奥に何かつかえているような違和感がある
・物事をネガティブに考えてしまう
・普段なら楽しいことが、気が進まない、やる気が出ない
・身の回りのことが億劫で、シャワーも浴びず髭も伸び放題
・外出したくない、人と会いたくない
・活字が頭に入ってこない
・普段なら気にならない少しの音が耳障りに感じる
ちょうど12月中旬頃で、年内締切の編集作業や、参加することになっているイベントがあり、何も手につかない毎日が過ぎていく中で焦りの気持ちが大きくなっていきました。
1年がかりで進めている短編映画のプロジェクトがあり、撮影量が膨大ということもあって、どこから手を付けていいか分からず、刻々と期限が迫るプレッシャーで仕事部屋に入れない状態が続いていました。
加えて、立ち上げから参加している映画祭の実行委員会が一泊二日で長野で開催されることになっており、参加の予定で往復の新幹線チケットも取っていたのですが、前夜にパッケージ作業を始めると咳が止まらなくなってしまい、結局出席できませんでした。各方面に迷惑がかかると分かっているのですが、どうしても体がいうことを聞いてくれませんでした。
Episode 2
Episode 3
Episode 4
Episode 5
※私は「うつ病」と診断されたわけではありません。過去の経験と自己判定により「うつの傾向」がありました。「うつ病」は心の病気なので治療が必要です。自分にも「うつの傾向」があり心配な方は、信頼できる医療機関を受診されることをお勧め致します。