うつ状態からの帰還 Episode 2
自分の症状を正直に伝える
全く体がいうことを聞いてくれなくなってしまい、途方にくれている僕を見て「今まで頑張ってきた疲れが出てるんだよ、体からのサインだから休ませてあげて、年内はとにかく休んだほうがいい」という妻のアドバイスがありました。
確かにそうかもなと思い、各方面に自分の状態を正直に話し、編集の締切を延ばしてもらい、実行委員をしている映画祭からもしばらく距離を置かせてもらうことにしました。このことでかなり気持ちが楽になりました。ご協力いただいた皆さんありがとうございました。
まずやってみたこと
それでも最初のうちはとにかく体がだるく、何事にもやる気が出ないので、ほとんど毎日のように寝ていたのですが、重荷を手放して気持ちが軽くなったおかげで、少しずつ動けるようになってきました。でも年内は休むと決めたので仕事はせずに、何か他のことをすることにしました。
僕にはギターを弾くという趣味があるのですが、うつ状態の最中は楽しいはずのギターを弾く気も起きませんでした。
そんな状態でも7月に乗替えた車の運転だけは楽しくて、意味もなく車を走らせることがありました。走っていると、悩み事や不安が車のスピードで頭から剥がれていってクリアになるような感覚がありました。
バイクが趣味だった父親の影響もあって、高校生の時から250ccのバイクに乗っていたり、もともとバイクや車は好きなほうで、常に車は所有してきたのですが、フリーになってからはお金が入るとすぐに撮影や編集機材につぎ込んでいたり、仕事が楽しくて仕方ないので、車を趣味にする感覚がなくなってしまい、機材運搬の道具としか見ていなかったのですが、新しい車に乗替えてから純粋に走ることが楽しくなりました。
車を乗替える予定はなかったのですが、昨年6月の車検時の整備費用がかなり高額になってしまい、ディーラーから修理するより乗替えを提案され、あまり考える間もなく前の車と同じメーカーの同じグレードの最新モデルに乗替えることになりました。
乗り味などほとんど変わらないと思っていたのですが、全然違っていて、運転が楽しい車に進化していました。10年ぶりの新車だったので愛着も湧いてきました。お恥ずかしながら、前の車は所有していた約10年間で1回も自分で洗車したことがなかったのですが、新しい車になってからは色々と洗車用具を揃えて自分で洗車するようになりました。
洗車場に行って車を綺麗にするためだけに黙々と体を動かしていると、冬でも結構汗ばんできます。寝てばかりいた僕には良い運動になりました。洗車場には他にも車好きの人たちがいて、それぞれの愛車を洗っている様子を見ると、特に会話をするわけではないのですが、なぜか心地良さを感じました。
こうして、車を運転したり、車の世話をすることが自分にとっての楽しみになりました。洗車して車が綺麗になったのを見ると、達成感を感じることもできました。この達成感を感じることができたのも、その時の自分にとっては大きなことだったんだと思います。
うつ状態の時にギターを弾けなかった理由を自分なりに分析してみたのですが、ギターの場合はどうしても上手に弾こうとするので、必然的に頑張るようになります。納得するレベルで弾けるようになるまでは楽しめないことがあります。
一方、車を運転したり、洗車をすることは何も考えずに手を動かすことができます。この、
何も考えずにできることをやってみる。
というのが、自分にとっては良かったのかなと今になって思います。
こうして、少しずつ体を動かせるようになっていきました。
Episode 1
Episode 3
Episode 4
Episode 5
※私は「うつ病」と診断されたわけではありません。過去の経験と自己判定により「うつの傾向」がありました。「うつ病」は心の病気なので治療が必要です。自分にも「うつの傾向」があり心配な方は、信頼できる医療機関を受診されることをお勧め致します。