柗井綾乃 写真展 ~ayano matsui~
表通りから1本入った路地に、和の佇まいをしたカフェがある。店内は畳で、私の世代の者にはどこか懐かしさを感じさせてくれる。
ここは、郡山市にある『Cafe 虎丸舎』
インスタグラマーの写真展で知り合った、カメラ仲間のテレビユー福島アナウンサー柗井綾乃さんの個展が開かれているお店なのだ。
今日は結構歩くことになるだろう。装備はなるべく身軽がいい。FUJIFILM X-E4/Pergear 25mm F1.8。
新白河駅 8時42分発 東北本線下り郡山行き。
四両編成の三両目に乗り、柴田哲孝、執筆の「下山事件 ~暗殺者たちの夏~ 」の活字に視線を落とす。
二ページ分を読み終えたところで列車が動き出した。近頃、視力の衰えが激しく、動く列車の中では活字は読みにくい。本は鞄にしまい、車窓の眺めを楽しむことにした。見慣れた街のはずなのに、列車の車窓から見たそれは、まるで知らない街の風景のように新鮮で、それでいて、心に何か寂しさに似た波紋を広げる。約40分、心地よい車両の揺れに陶酔していると終点郡山に着いた。
ここから虎丸舎まで、徒歩で20分。X-E4 片手にアーケードの続く歩道を、被写体を探しながら進んでいく。考えるよりシャッターを押す。そんな感じで枚数を稼いでいく。アーケード街を過ぎると、時折、雲間から太陽が覗き、私は自分の影と一緒に西へと歩いて行く。
さくら通りと名のあるメインストリートから逸れて、静かな裏通りへ入る。
ここは車の往来も、歩く人も少なく、ゆっくり歩いて撮るにはちょうどいい。開展まで時間があるので、1時間くらい撮ってられるだろう。
10時28分、虎丸舎に着くと、すでに10人ほどが開店するのを待っていた。10時30分になりお店の入り口が開くと、店内にはテレビで拝見する時と同じ柗井さんの笑顔が待っていた。早速お写真を拝見させていただく。柗井さんは世界各国を旅されていて、その行った先々で写真を撮られている。見た事のない風景に目を奪われる。中でも、現地の人達を撮られた写真に目が止まる。どれも笑顔が素晴らしい。柗井さんの人柄が、世界中の人の笑顔として返ってくるのだろう。アナウンサーとしてだけでなく、カメラマンとしての柗井さんにも魅了された。
たくさんの来展客の居る中、手土産の揚げまんじゅうを手渡し、少し会話を楽しんで虎丸舎を後にした。
帰り道も何か見つけてはシャッターを切る、の繰り返し。駅までの往復の40分ほどで122枚も撮っていた。これは一般的に多いのか少ないのか分からないが、私にしては多い方になる。
写真展会場で誰か仲間と会うだろうと思っていたので、在廊時間は長くなるだろうと考えていたが、その予感ははずれ、予定より早めの帰りになった。
駅に着いてもシャッターチャンスを狙っている。
やはり写真を撮るのは面白い。楽しい。
やがてホームに新白河行きの列車が入ってきた。
二両編成の先頭に乗り込み、この記事を書きながら時間をつぶす。15時から地元の知り合いのお店で、三月に開催するグループ写真展の件で人と会う約束がある。早めの帰りになったので、それまでには充分時間ができた。家に帰ったら昼食にしよう。今日もそれなりにスケジュールの詰まった日曜日。それでも暗くなる前に、まったりする時間が作れるだろう。
列車は速度を落とし、滑り込むように新白河駅のホームへ入っていった。