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オディシャ料理伝道師がご来印/モーラム酒店/プドゥチェリーミールス:カレー哲学の視点(11/14〜11/20)
寒くなってきて、死の季節が身近に迫っていると感じる今日このごろ。今週のニュースレターです。
カレーと遊び
『カレーZINE Vol.3』のテーマでもある、「遊び」というものについて最近考えている。遊びってなんだろうか。なぜ人間は遊ぶのか。カレーを遊ぶとはどういうことか。
一人遊び、ごっこ遊び、遊園地、遊び人、女遊び…。遊びと名のつく言葉は多い。建材の隙間や余裕のことを「遊び」と呼んだりすることもある。
そうやって言葉の意味だけを考えると、なんだか漠然としている。それに遊びは必ずしも楽しいだけのものではなく、ときには危険だったり無謀だったりもするものだ。
そこに共通するのは、何か別の目的があるのではなくそれ自体を目的意図した、自己目的的な行為であるということだ。
遊びは、直接生存することには役に立たないのかも知れない。しかし、日々自分が生きていることを実感できるのは何か別の目的を持った手段としての時間の過ごし方ではなく、自己目的的に没頭できる「遊び」の方だと思う。
めちゃくちゃ遊んでいるカレーもあれば、真面目な仕事をしているカレーもある。ただ、セオリーを崩してめちゃくちゃやっているだけ遊びではなく、ひたすら型を守るというのも遊びになり得たりする。
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そもそもカレーという料理自体が、様々な香りのする木の皮や種子などを組み合わせて新たな香りを楽しむという「感覚遊び」のようなところがある。入れなくても十分美味しいのに、スパイスを付け加えることで新たなものに昇華させるプロセスは遊びそのものだ。
そんな、成り立ちからして遊びであるカレーというものを通して、人間と遊びとカレーについて具に考えていきたい。
オディシャ料理伝道師がご来印
東京マサラ部室に、おそらく日本に一人しか居ないと思われるオディシャ料理研究家のpatsu curryさんがはるばるいらしてくれました。
短時間で6種類の料理を手際よく仕上げてくださり、最高でした。
地味で映えない、野菜ばっかり、パンチャフタナ(パンチフォロン)ばかり、マスタードばっかりで似たような味という固定観念が自分の中で既にできてしまっていましたが、そんなオディシャ料理の概念がいい意味で覆る経験でした。伝道師すごい。
全体的ににんにくや生姜、砂糖をしっかりと効かせたメリハリのある味わいが多く、パンチフォロンを使ったものはひとつだけ。和食にも通ずるようなものが多く、素朴だけど満足度の高い料理たちでした。
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サバのマスタード焼き。マスタードペーストを塗ってマスタードオイルでこんがりするまで焼く。
引くくらい大量のマスタードオイルを使わないとやっぱダメなんですね。
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青唐辛子と一緒にマトンを煮込み、カシミールチリなどを使って真っ赤に仕上げたマトンカレー。
ポン菓子のようなムリというパフライスと一緒に食べます。
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ミックス野菜の蒸しもの。本当なら水の量は少なめに仕上がるそうだが、日本の野菜は難しいらしい。生姜を使い、水で戻したココナッツをトッピングに散らすのがポイント。
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にんにくがガッツリと効き、牛乳とダルが少々入った野菜の煮込み。パンチャフタナ(パンチフォロン)を使ったのはこの料理だけで、使用量もほんの少し。Ghantaとは使用している野菜は同じだが全く異なった味わいになった。Santuraのほうが小さめに野菜を切るのがポイント。
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ライスはKanika riceというカシューナッツやレーズンを入れて甘く炊き込んだプラオのようなものでした。
メリハリの効いた味で、ときに滋味深くときに激しく受け止めてくれるオディシャ料理の魅力再発見といった感じでした。
外部から来た人にここまで一通りの料理を作ってもらったことというのはマサラ部史上初。大変ありがたい経験でした。
干しマンゴーや現地のお米やジャガンナートの神様のポラロイドなど、貴重なものをたくさん頂いてしまいました。
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タイ東北モーラム酒店
久しぶりに生身で食事会というものに参加して、興味深い話を聞くことが出来た。人間はどんどん忙しくなっている。オンラインの情報の欠落で失われたものは結構あるのだが、オンラインで完結するのは楽だ。生身で向き合ってコミットして一緒に時間を過ごす、というのはこれからどんどん貴重な時間になっていくのだなと思った。
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ここはタイの労働者が働いた後に食べに来る食堂をコンセプトにしているお店で、現地さながらの銀皿がいい味出している。タイ東北部の田舎の料理そのままであり、辛さのレベルなども容赦がない。
タイ料理はあまり詳しくないのだが、ハーブの使い方が面白い料理も多い。ゆくゆくはタイ料理の勉強もしたいな。
タイ料理のボキャブラリーがなさすぎてあまり何も書けない事に気づいた。
ケララバワンのプドゥチェリーミールス
ケララバワンでイドゥリパトロールをしつつ、プドゥチェリーミールスをいただきました。
ここのイドゥリは何度も食べているがそのたびに表情を変えるのが愛おしく思う。3つという半端な数も、行進しているかのように並んで出てくるのも謎が多くて良い。今回はいつも以上に太りぎみの、ボリューミーでよく蒸されたイドゥリだった。
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プドゥチェリーといえばタミル・ナードゥに存在する、最近までフランス領だった歴史を持つ土地だ。その料理はフランス料理の影響を受けていて、タミル料理とハイブリッドになっていたり、そうでもなかったり…?ミクスチャーのクレオール料理はもはや失われかけているという話も見かけた。
ケララバワンという店名でありながらプドゥチェリー料理を出すとは何事かと思ったけど、ど派手で美味しいミールスだった。特にカニ出汁のニャンデラッサムは日本人泣かせで、ポンニライスがcan’t stop。アジョワンとクミンの入ったプリもよかった。
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