カレーの玉ねぎを強火で炒める必要はあるのか?比較実験@八丁堀wacca【東京マサラ部活動レポート】
カレーを考えることは玉ねぎを考えることだ、と俺は古くからじっちゃんに言われて育ってきた。特に、飴色玉ねぎを作ることはカレー作りにおいて最重要な課題とされてきた。
実際に飴色玉ねぎの作り方について調べてみると、大きく分けてレシピには二つのパターンが登場する。
両方とも同じ飴色玉ねぎではあるが、同じ脱水量(重量)を目指すにしてもたどり着くまでの時間や工程、温度変化が異なるため当然味わいも異なるはずだ。
では、具体的にどのように異なるのだろうか。八丁堀のカレー屋wacca三浦さんの全面的協力を得て、強火炒め玉ねぎと弱火炒め玉ねぎの比較実験を行い、レポートにまとめてみた。途中でwaccaさん直伝のチキンカレーのレシピも掲載しています。
玉ねぎ実験第二弾はこちら。
飴色玉ねぎのカガク
ちなみに、玉ねぎはなぜ飴色になるのだろうか?また、生の状態では辛味と刺激臭を持つのに加熱すると甘くなるのはなぜなのだろうか。
変色することを褐変反応と呼ぶが、食品を切って空気中に放置した際に茶色く変色するのは主に酵素の働きによるものである。非酵素的に玉ねぎの色の変化に影響を及ぼす反応として、大きくカラメル化、メイラード反応、炭化が存在する。玉ねぎを加熱するときは、同時にいろいろな反応が起こっている。
(※この辺素人なので間違っている点はご指摘ください。)
問い
インド料理においてはよく"golden brown"という表現で、強火で表面を焦がすようなレシピが多いのだが、中の水分が飛ぶまでじっくり炒めることは少ない。それどころかケーララやタミル料理などでは玉ねぎを軽く色づくまでしか炒めないケースも多い。
反面、日本で紹介されているカレー用の玉ねぎレシピでは水を差しながら炒めていてカラメル化しか起きていなく、「色が付けばOK」とされているケースもある。逆に強火で炒めすぎて炭化してしまい、香ばしさがうまく引き出せていないケースもある。
大量の油を使い強火で加熱し続けるインドカレー的玉ねぎの炒め方は、弱火でじっくり炒めて焦がさないように色づけていく洋食の玉ねぎ炒めとは対極にある。洋食の世界では、強火で炒めた玉ねぎは雑味の原因になり素材感を損なうのでNGとなっている。
果たして、双方の玉ねぎ炒めのアプローチの差がカレーの仕上がりにどのような影響を与えるのだろうか。また、同じ水分量(重量)に合わせた既製ソテードオニオンを使った場合はカレーの味わいにどのような差があるのだろうか。検証してみたい。
仮説
今までの経験から言って、玉ねぎの炒め方によって味わいには差があるはず。結果の予想はこうだ。
検証方法
・玉ねぎは3mmのみじん切り(荒くなったが)。差分が出ないよう、複数人で切ったものを均等に混ぜたものを同量ずつ使用する。今回は写真の玉ねぎを使用。
・強火で多少の焦げは気にせずガンガン玉ねぎを炒めた場合と、最小限の弱火で焦げないようにじっくり玉ねぎを炒めた場合の差異を検証。水は使わない。
・玉ねぎ200g重量に対し20%(40g)の食用油を用い、油の重量を引いて元重量の15%(70g)になるまで炒めた。その際に仕上がりまでに必要な時間を計測した。
・火の大きさに関しては弱火は業務用コンロでの最弱、強火はフライパンの底を舐める程度の強さ。
・できあがった時点で強火15%玉ねぎ、弱火15%玉ねぎ、15%ソテードオニオンの3種類の官能評価をする。
・それぞれの炒め玉ねぎを用い、同じレシピ(後述)で同じ火力、同じ加熱時間、同じ重量になるように3つのチキンカレーを作る。
・官能評価を行い、仮説検証、考察、新たな問いについて議論。
実験に使用したチキンカレーレシピ
官能評価結果
炒め玉ねぎ単体の評価
いただいたサポートは全てカレーの材料費と東京マサラ部の運営資金となります。スキやSNSでのシェアもお願いします。 インド料理やカレーの本を出したいです。企画案がたくさんあるので、出版関係の方、ぜひご連絡ください。