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ムンバイでイラーニーカフェ巡り

ムンバイの街を歩いていると、街中に独特の雰囲気を漂わせるコロニアル風の建築物を見かけることがある。レトロな雰囲気が漂っており、天井にはファンが回り、ショーケースにパンやビスケットが並び、重々しい木でできた扉は開くのか開かないのかわからない。築100年以上経過しているものも珍しくはないようだ。

これらは俗に言うイラーニーカフェというカフェであり、ムンバイやプネー、ハイデラバードに多く存在している。日本の喫茶店のようにゆっくりできるわけではないが、地元の人たちが朝からチャイやバンマスカを楽しんでいる様子もよく目にする。バンマスカはほんのり甘い丸いパンを軽くトーストしてバターを塗っただけのもの。チャイに浸しながら食べるのが鉄板スタイルで、シンプルながら簡単な朝食になる。

バンマスカとチャイ。

イラーニーカフェは19世紀から20世紀初頭にかけ、政治や経済の情勢不安のためイランから移住してきたイラーニーたちによって始められた。彼らは生計を立てるために飲食店を開き、イランで楽しまれていた料理やお菓子などを中心に提供していた。やがてインドの料理と融合していって新しい料理スタイルが定着していった。10世紀ごろにインドに移住した古いゾロアスター教徒たちはパールシーと呼ばれており、新しく移住した人々がイラーニーと呼ばれているようだが、厳密な区別がされているわけではないらしい。

イラーニーカフェは地元住民の社交や憩いの場となり、近代化の象徴として庶民やエリート層を問わず利用され、今でもその役割は続いている。ムンバイのフードカルチャーはこのパールシー料理なくしては語れない。南ムンバイやフォート地区など昔ながらのムンバイが残っているエリアに多いのだが、最近では少しずつ数が減っていている。1950 年には 550 軒ほどあったが現在営業しているのは 20 軒程度と言われる。

中でも最も有名なのはフォート地区のBrittania and Co.だろうか。数年前訪れた際、ベリープラオを頼んだら山盛りなのが来て大変なことになった。

また、同じくフォートにあるLeopold Cafeは2008年にテロリストの襲撃対象となり多数の死傷者を出した現場でもある。行ってみたもののここは外国人観光客でかなり混雑しており入れなかった。

そのほかにも街中にはたくさんのイラーニーカフェがある。南ムンバイの方に2ヶ月ほど実際に暮らしていたときの記憶を元に、イラーニーカフェについていくつか書いてみる。


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