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「貧乏ダルバート」と「金持ちダルバート」の食べ比べ。品数が多い方が満足度は高いのだろうか。
今回はマサラ部室でやっていることの紹介も兼ねて、レストランのダルバートと安食堂のダルバートを作った時のことを書いてみる。
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ダルバートは品数が多い方が満足度が高いのだろうか?
ネパール料理といえばダルバート。東京マサラ部室では毎月テーマを変えながらインド亜大陸料理研究をしており、2023年一月はネパール料理研究としてダルバートばっかり作って食べていた。
中でも特に参考にさせていただいていたのがこの本。世田谷でOLD NEPAL TOKYOを営む本田さんの『ダルバートとネパール料理』という本なのだが、この本はすごい。
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どのようにすごいかというと、このようにすごい
・使える手札の少ないネパール料理というゲームで最大限に活躍できるような提案がなされている。
・素人が思いつくような組み合わせや調理法はすでにだいたい書いてあった。
・分量の指定が細かくて、その通りにやればシュッとした味になる。
要はレシピの完成度が高くいじる余地があまりない、と思う。
この本の先頭パートにいくつか実際のダルバートの作例がある。例えば「タカリレストランの豪華なダルバート」とか「安食堂のダルバート」とか「ちょっと裕福な家庭の土曜のランチ」とか「何かいいことがあってお母さんの機嫌がいい時のダルバート」とか(本当にそんなのあったっけ?)。
その中から、貧乏なダルバートと金持ちのダルバートを作り比べよう、という企画が持ち上がった。(ダジョが言い出しっぺだったような気がする)
当日は以下のようなラインナップで、作例に倣いつつも内容はちょっと改変し、「レストランのダルバート」と「安めの食堂ダルバート」の2チームに分かれて料理を作ることになった。
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今回のレシピは基本的に『ダルバートとネパール料理』からの抜粋。マサラ部員以外にも希望者数人が集まってくれて一緒に料理を作ったが人間の写真が全く残っていなかった。
料理の担当を割り振ったものの同時並行的に作業が進んでいくため、狭いキッチンでかなりバタバタしてしまった。水牛のカレーと山羊肉のカレーは煮込み時間が結構かかり、なんだかんだ3時間くらいで完成した。いや、こんだけの品数が良く3時間でできたと思うよ。
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レストランのダルバートと安食堂のダルバートの料理の種類を比べてみる
レストランの方は肉のカレーが2種類もついているし品数も多い。対して安食道は空白を一つヨーグルトで埋めてしまっているし、動物性タンパク質が魚しかない。見た目だけでいうと結構貧相に思えるが…。
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レストランのダルバート
・水牛のカレー
・山羊肉のカレー
・トゥールとマスールのカレー
・トマトとティムールのカレー
・グンドゥルックのアチャール
・ミックスアチャール
・じゃがいもとインゲンのタルカリ
・菜の花のサーグ
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安めの食堂ダルバート
・トマトとティムールのアチャール
・サバのディープフライカレー
・じゃがいもとオクラのタルカリ
・ウラドムングダール
・ほうれん草とクレソンのサーグ
・ムラコアチャール2種類
品数が多ければ確かに満足感も高まるが、シンプルな構成のダルバートが好きだ
凡庸な結論だが、両方とも美味しかった。
ただ実際に両者を食べ比べてみて、ダルバートにおいて品数はやはり多ければいいというわけではないと思った。少なく全体がシンプルにまとまっている方がご飯が一気に進んで食べやすい。グルーヴが生み出されやすいというか、食べる時に迷子になりにくいというのもある。
ビュッフェスタイルで食べるわけではない限り、ワンプレート上のアイテムに全て必然性が欲しい。ミニマムな構成で成り立っているダルバートはかっこいい。
自分は数年前ネパールに行って実際に60円くらいから3000円くらいまでのダルバートを20種類くらい食べ比べたのだが、価格帯によって確かにある程度傾向はあったような気がする。
例えば安食堂ではおかずの品数は少なく、ノンベジのカレーは肉の量に対してスープ部分が多く、塩分濃いめの味付けにしてたくさんのご飯を食べさせるようなところが多かった。対して高級店になるとお酒がついてきたりして品数が増え、一品一品の具材の量が多くなり汁気が減ってくる。
そのような傾向はあるんだけど、「美味しい」とか「満足度」という観点では値段とは相関しない。
確かに安すぎる食堂では砂利が混じっていたり、本当に薄い豆と塩だけのスープだったりということも実体験としてあった。ただし高ければ高いほど美味しいかというと、一定の値段を超えればそこまで大差はない。「めちゃくちゃ美味しいダルバート」にはお金を積んでも出会えなかった。
「めちゃくちゃ美味しいダルバート」ってなんだろう。とても難しい問題である。ダルバート、そのままでいて。
ネパール関連のnoteたち
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