ネパールでよく使われるダルの解説とタカリの黒いダール「カロダル」の美味しい作り方
ダールは味噌汁
ダールって本当美味しいですよね。カレー哲学者は清貧な食事を好むので、暇さえあればすぐにダールを煮ます。
「ダール」というのはインドやネパールでよく食べられているひきわり豆のことですが、そのダールが使われている料理自体もダールと呼ばれます。語源は「分けること」という意味のサンスクリットのダラ("दल dala")。なので同じ豆でも納豆は”ダル”ではなく、ひきわり納豆は”ダル”です。これは結構大事なことで、豆は煮えるのに時間がかかるので水で戻す必要がなく、火の通りも早くなるように皮を剥いて挽き割り加工しています。ダルと圧力鍋は偉大な発明なのです。
ベジタリアンの多いインドやネパールのような国では豆は日々の貴重なタンパク源であり、本当に毎日ダールを食べています。というかそれくらいしかタンパク質を摂れるものがないのかもしれませんが。
ネパールで全土で食べられている食事といえば「ダルバート」ですが、「ダルバート」は「味噌汁ご飯」くらいのノリ。基本的にどんな食事でもダールがついて回ってきます。「ダルのうまいダルバートはうまい」という言葉もあるくらいダールは大事です。
ポカラの方のトレッキングでは基本的に食事は民宿で出てくるダルバートしかないので、どのくらいのクライムなのかを尋ねるのに「How many dal bhats?」という冗談みたいな話があるくらいダルバートは普遍のようです。
ネパール現地に行った体験上、安い食堂では薄くてしょっぱいスープ状になったダールが多く、少し高級なお店に行くと逆にもったりしたポタージュ状のダールが多くなりました。安いところではおかずも少ないのでなるべく薄くしょっぱくして、原価を抑えながら米を食べさせるという目論みもあるんでしょうね。部活のあとのメシみたいなコメをかきこむ快感もあります。
ネパールでよく使われるダルの種類
ネパールでは「豆はミックスして使った方がうまい」と言われることが多く、よく複数種類の豆を混ぜて使ったりします。発芽した9種類の豆を合わせた特別な日に食べられる料理(kwati soup)もあったりします。多くの種類の豆を食べるというのはとてもリッチな体験なんですね…。
調べてみるとものすごく多くの種類の豆があるのですが、今回はネパールでよく使われる代表的な豆を5種類ピックアップしてみます。それぞれ同じ種類の豆でも、ホールでそのまま使うもの、皮付きの挽き割りで使うもの、皮なしの挽き割りで使うものなど多くの使い分けがなされていて、豆の解像度が高すぎて全く追いつけぬ...。
Maas - ウラドダル
もやしでお馴染みの「ブラックマッペ」という豆と同じで、日本語だとケツルアズキとも呼ばれる。ネパールでは皮付きの挽き割りで使われる。煮えるのに時間がかかるが、とろみが出て徐々にポタージュ状になる。粘り気が強いので壁の材料にされることもあるらしい。(ほんとかな)
Mugi, Mung - ムングダル
いわゆる緑豆で、アズキの仲間でもある。緑色の豆を挽き割りにして皮を除く加工をしたもの。
早く煮えて消化にいいとされているので家庭でもポピュラーなやつ。
Musuro - レンズ豆、マスールダル
いわゆるレンズ豆。ヒラマメとも呼ばれる。「レンズ」の語源はこの豆が先。凸レンズが豆に似ていたことが由来。西アジア原産で人類が利用してきた中でも最古の豆で、旧約聖書にも登場している。
オレンジ色だが煮るとすぐ豆の色になる。早く煮えるので使いやすい。ネパールではウラドダルとミックスされて使われることが多い。
Rahar - 黄色レンズ豆、トゥールダル
日本語ではキマメ。南インドで特によく食べられている印象。
ネパールでは少し高い豆で、裕福な家庭やいいレストランで使われる。
Chana - ひよこ豆、チャナダル
インド周辺ではひよこ豆はいくつかの種類がある。黒褐色の皮を被ったものがデーシー種と呼ばれ、白い大粒のものがカーブリー種である。チャナダルとして使われているのはデーシー種の表皮を取り除いて中の子葉を二つに割ったもの。
豆も色々な種類があり、よく食べてみると味は種類によってさまざま、せっかくなので今度、豆だけの食べ比べ実験とかやってみたいな…。
カロダルを作ろう【レシピ】
ネパールだけでもダールには無限のバリエーションがあるが、今回は皮付きの黒いウラド豆のみで作るダール。
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