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記憶のかけら

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日常で感じたあれこれを、切り取って残しています。
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夏の終わりを感じた夕暮れ

夏の終わりを感じた夕暮れ

夏が終わる。駅のホームに、涼しくて爽やかな風が吹いた。湿気で胸が苦しくなるような熱風はそこにはなく、軽やかなその風は確実に秋の気配をまとっていた。その瞬間に、ああ、もう夏が終わってしまったのだと悟る。

うだるような暑さと、じっとりと腕にまとわりつくような湿気を帯びた空気は、いつの間にかいなくなっていた。

ふと街行く人の足元を見ると、サンダルを履いている人がほとんどいないことに気づく。私の足元だ

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虹を見ると思い出す、あの日の空

虹を見ると思い出す、あの日の空

帰り道に虹が出た。しかも、2本。スーパーに寄って買い物を済ませて、外に出た瞬間のことだった。

「わあ、虹だ」

誰もいないのに1人でそう呟き、とっさにスマホを構える。撮った写真を送る先は、彼だ。

「虹出てた」

そう一言添えて、送信ボタンを押した。おそらく返信は来ないだろうなと思いながら。

買い物袋を抱えて家までの道を歩きながら、私はあの日見た夕暮れを思い出していた。

それは、私が彼と同棲

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