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2月2日(日)〜5日(水) ゼロ年代はまだこれから

2月2日(日)

こないだ佐藤さんに借りた幻の同人誌、『タンデムローターの方法論』を読んだ。

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読んでみて思ったのは、編集者の太田克史さんの力がやっぱりすごいな……。なんかこれはすごいぞ、ここでやばいことが起こっているぞ、という演出をするのがものすごくうまい。魔法使いというか詐欺師というか。
今度文学フリマに出す同人誌の参考になるかと思って借りたのだけど、これは真似できないな、と思う。編集のプロの仕事だ。僕は「文章書ける人が集まってるからみんながいつも通りに書けば同人誌ができるだろう」くらいの発想で同人誌を作ろうとしていたのだけど、そんな軽い気持ちでやってはだめだったのでは、編集をやるならもっとちゃんとしたコンセプトやビジョンがなくてはだめなのでは、と自信をなくした。

『タンデムローターの方法論』を読んだら、その流れで生まれたファウストも読みたくなったので『ファウストvol.1』を読んだ。

これもすごい雑誌だな。魂を削って異常な情熱で作られている。今はもうこんな雑誌は生まれてこないんだろう。
佐藤さんと滝本さんと斎藤環さんが鼎談していて、そこで佐藤さんと滝本さんが初対面だという話をしていて、ぐっときた。

ファウストすごいなー、面白いなーと思いながら読んでいたら、佐藤さんが、
「太田さんがphaさんのことを褒めていましたよ」
と教えてくれた。
「え、どういうこと?」
「いや、phaさんが文学フリマで出す同人誌の参考として『タンデムローターの方法論』や『ファウスト』を読もうとしてる、という話をしたら、それは素晴らしい、と」
「ほう」
「今までの文学フリマで一番成功した本は『タンデムローターの方法論』なので、そこから学ぼうとするというのは偉い。流石だ。と大絶賛していました」
「それ、僕のことを褒めてるというより、太田さんが自分はすごいと言っているだけなのでは……」
まあ実際すごいんだけど。

僕はもともと二十歳前後の頃に綾辻行人(確か『時計館』から読んだ)を読んだ衝撃で新本格を読み漁り、そして京極夏彦(確か『魍魎の匣』から読んだ)を読んですげーって思って夢中になって全部読んで、メフィスト賞もすごく大好きで西尾維新くらいまでの受賞作は大体読んでいたのだけど、その流れなら読んでいてもおかしくないファウストは全然読んでなかったんだよな。ファウストが出る時期くらいからなんとなくミステリを読まなくなったのと、エロゲ的な文脈にあまり興味がなかったからだろうか。今もミステリはほとんど読まない。
あの頃の講談社ノベルスやメフィスト賞は楽しかったな。すごい作品や変な作家がたくさん出てきて豊穣で勢いがあった。京極夏彦、森博嗣、清涼院流水、浦賀和宏、殊能将之、舞城王太郎、佐藤友哉、西尾維新……。
ファウストを読んだらゼロ年代はいろいろあって楽しい時代だったなという気分になってきた。テン年代の間は「俺の90年代はまだ終わってないぞ」という気持ちでいたので、20年代は「俺のゼロ年代はまだ終わってないぞ」という気持ちで行こうかな。90年代の頃は70年代のものが好きだったし、20年前というのがちょうどいいのかもしれない。

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