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2021年 共通テスト数学IIB 感想戦

今となっては時期を逸したと言わざるを得ないようなタイミングだということは重々承知の上で、共通テスト数学IIBの感想戦を行おう。数学IAの記事を作成してから約1ヶ月半遅れての投稿となるが、IAのときと同じくかかった時間を目安として残しておく。

IIB第1問[1] 三角関数(合成・最大最小) (2分16秒)

三角関数の合成と最大値を求める問題が繰り返される。途中、cosへの合成が必要となるが、誘導として「加法定理を用いると」という文言があるためそこまで難しくない。ただし、慣れ具合によって時間のかかり方に差は出る。こういった式変形は日頃の訓練が物を言うので、数学の対策を考える上で計算力はやはり侮れない。

難易度は全体的に普通である。一つずつしっかりと計算すれば問題は特に見当たらない。

IIB第1問[2] 指数関数・対数関数(背景:双曲線関数) (4分36秒)

タイトルにもあるように、「双曲線関数」を背景とした指数関数・対数関数の問題であった。

数値計算、最大最小、方程式を解くといった基本計算から始まり、2つの関数の相互関係を指数法則に基づき示したり、「加法定理」を導いたりと独特な問題で戸惑った人もいたかもしれない。ただし、花子と太郎の会話がヒントになっており、「βに何か具体的な値を代入して調べてみたらどうか」という花子の発言を見落とさなければ、すべきことは明白であった。

難易度はこれまた普通の難易度である。

ちなみに、背景の双曲線関数とは、cosh(x) = (e^x + e^-x)/2, sinh(x) = (e^x - e^-x)/2 と定義される関数であり、cosh^2(x) - sinh^2(x) = 1 や、(cosh(x))' = sinh(x), (sinh(x))'=cosh(x)など、三角関数と類似の関係式を持つ関数である。双曲線のパラメータ表示としても用いられることから、双曲線関数と言われる。

IIB第2問 関数のグラフ・接線・面積 (5分17秒)

二次関数・三次関数のy切片における接線について求め、接線と曲線や直線で囲まれる面積を求める問題であった。また、グラフとして適当なものを選ぶ問題も複数出題された。

与えられた条件から一つずつ計算を進めれば確実に計算でき得点できる問題であったため、難易度は普通からやや易しめである。また、三次関数のグラフの対称性やグラフの概形の特徴を知識として持っているとほぼ計算することなく答えが導ける問題にもなっていた。もちろん、知識がなくとも計算でどうにでも対処できるので、知識を身につけようと躍起になっても仕方ないことには注意しよう。

IIB第3問 読書時間の確率分布・同じ母集団への異なる統計的推測(16分00秒)

読書時間を題材に、ある高校での読書時間に対する無作為抽出による調査結果を分析する問題であった。序盤の計算は定義に従って順当に求められる。後半で同じ母集団に対して異なる標本調査を行ったときの結果の比較、推定の違いを考察する問題が目新しい問題となっている。

確率統計と推定の分野は、各数値の定義と意味がわかれば実はそこまで難しくはない。ただし、二次試験で必要となる大学がほとんどない関係から、選択者が少なくなる分野である。かくいう自分も、模試の作成などで必要となるから解いているといった感じである。そのため、「不慣れさ」がそのまま所要時間に反映されてしまった。難易度自体はそこまで高くない。

IIB第4問 等差数列・等比数列と漸化式を満たす数列 (7分41秒)

複数の数列が絡み合った漸化式を与えられ、それぞれの数列の一般項について考える問題であった。

誘導がこれでもかと与えられていたため、一問一答を繰り返していくうちに最後までたどり着く構成であった。こういった構成の問題では、序盤に計算ミスをすると大問全体が壊滅する恐れがあるので、折に触れて見直しをできるように余白をうまく使う必要があった。この辺は過去問や問題集でどれだけ対策できたかにかかっていると言えよう。

登場する数列の数が多く、処理量も少なくない関係で手間はかかる。ただ、一つ一つの計算などはかなり基本的な計算ばかりなので、すべきことが明白になっていさえすれば難易度は低め。問題は、これが試験時間60分という緊張状態の中で出題されると言うことであり、そのような状況でも平常時と同様に計算できるかが問われる。(ただし、それは数学力とは全く違う能力である。)

IIB第5問 正五角形・正十二面体とベクトル (8分18秒)

正五角形とベクトル表示を出発点とし、正十二面体におけるベクトルの内積・大きさを経由し、うまく4頂点をとると正方形が作れるという正十二面体特有の性質を証明する問題であった。

第4問に引き続き、誘導がはっきりしているため、すべきことは一問一答である。ただし、数列のときよりも「なにが求めたいものなのか」を意識して式変形しないとドツボにはまる。また、途中に現れるaの値があまり綺麗ではないため、式の値や内積の値を計算する際のaの扱いによっては計算が大変になりかねない。日頃の学習から計算の工夫を考えたり、値の代入のタイミングをうまく取れるよう考えたりといったことができているかが問われる。

数値計算がやや面倒なだけで、難易度は普通の問題である。慌てず騒がずきっちりと計算し切れれば問題なし。

IIB全体としての感想

IIBは昨年度と比べても易化したように思えたし、実際平均点はかなり高くなった。(59.93点だった)

傾向としては、グラフや特徴を選択肢から選ぶ問題がやや増えた。定量的な考察だけではなく、定性的な考察も行えるように日頃から学習したい。また、誘導がしっかりと与えられる問題も多かった。そのため、計算力勝負になってしまった問題も多かった。短い時間で正しい計算が行える計算力を早いうちから意識して養わなくてはならない。

全体的にIAと同じく、共通テストに向けての対策ばかりに気をとられてはいけない。数学の基本である「なぜそうなるのか」がわかる状況をしっかりと作っていくことが、数学ができるようになるための最善策である。そして、ただわかるだけではなく、問題を通じて「できる」ようにしていくことも忘れないようにしてほしい。そして、できたものについて、解答の吟味をしたりだとか、より一般化させてみたりだとか、「考察する」ことを通じてより深い理解を養っていくことが欠かせない。

根本に立ち返り、しっかりと数学に向き合えているかをしっかりと自問しながら学習を進めたい。

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