読了:凍りのくじら
覚え書き。
ネタバレしかありません。
感想
2回目の読了。
でも、読む前に覚えていたのは、最後のテキオー灯に照らされるシーンのイメージと、別所あきらの正体だけだった。
あんなに堕ちていった若尾のことも、郁也のことすらすっかり抜け落ちていたなんて。
ただ、別所の正体を知っていたからこその視点で読めたので、それはとても良かった。
あのシーンもこのシーンも、別所がそうだと思って読むと、しっくりきたり、全然違って見えるのだ。
ふみちゃん
分厚いメガネ〜と見た瞬間、ふみちゃん!!!となった。
これのあとにメジャースプーンを読んでいたはずなのに、全然気付かなかった。
郁也の新しいSF
理帆子が郁也につけた、新しい「少し・○○」はなんだったのか。
結局どこにも書いていなかったと思う。
知恵袋で、こんな回答を見つけた。
なるほど!と思った。
なんなら、「Sugoku Family」だ。
こういうの、よく思い付くなあ。
インタビューの答え
この問いに対する理帆子の答え。
冒頭と、最後に出てくるが、本編を読む前と後で、こんなにも印象が変わるのか、とびっくりした。
正確には、言葉の解像度が上がったのだと思う。
それにしても、こんなにも変わるものかとその振れ幅に驚いた。
テキオー灯の愛情
カメラのシャッターすら押せない体の別所あきらが、このときだけ懐中電灯を動かしていた。
別所の思いの強さだと思うとたまらない。
そして、テキオー灯の名前を、知っていたのに知らないふりをしたのは、自身の正体を隠すためだったのだろうか。
松永の恩
松永が返し切れない程に感じている恩とは、郁也のことを教えてくれたことで合っているのかな。
ほぼそうだろうと思っているけれど、確信は無い。
疑問点いろいろ
別所の正体
気付かないものなのか?!
と思った。
父親の旧姓って忘れるものなのだろうか。
あきらという名前が同じでも、全く予想もしていなかったら、まさか父親だとは思わないか。
高校生の姿だし。
でもやっぱり謎だ。
親の旧姓と同姓同名で名乗ってきたら、まさか同一人物とは思わなくても、一瞬でおや?とは思うだろう。
ましてや顔だって全くの別人ではなく、若くなっただけの父なのだから。
しかも、理帆子が見つけた遺品のネックレス。
安っぽいくて石がはまっていたというのは、理帆子が別所と一緒に買いに行ったものとは違ったのかな。
まあ、そこは小説だから、ということになるのかなあ。
ドンキの袋
理帆子の家のドアに度々掛けられていたドンキの袋。
これは別所あきらから理帆子に向けた警告と解釈したけど合っているのかな。
若尾が自分で置く訳はないし、他の人はみんな、直接理帆子に警告できる。
いや、別所も話せるのだから、直接警告はできるのか。
「甘く見ない方がいいよ」とは言っていたが、なぜもっと強く警告しなかったのだろう。
ビニール袋じゃ気が付かないよ。
あと何かあったかな。
郁也の呪いは解けて本当に良かったよ。
お母さんの写真集にも泣いた。
帰り際の写真
そうそう、お母さんは帰り際の理帆子の写真を毎回撮っていたらしいけれど、理帆子は毎回病室の窓を見上げていたはずなのに、なんで気付かなかったのかな?
カメラが窓からこっちを向いていたら、気付きそうなものだけど。
別所
別所にもたくさん、謎がある。
・なんで今頃現れたのか
本当に、失踪してすぐ身投げしていたのなら、その時点で出てきそうなものだ。
・なぜ高校生の姿で現れたのか
決まりは無いにしろ、失踪したときの格好で出てくるものでは無いのか。
・結局、正体はなんだったのか
理帆子の生み出した幻覚にしては、理帆子が知らないことを知っていたりする。
・なぜ疾走したのか
自分のやつれていく姿を見せたくなかったという説はよく分かる。
が、別所の父親も失踪していたそうではないか。
それなら話は別だと思う。
よっぽど辛かったように、同じ思いを大切な家族にさせるのか。
それ程までに、自分が弱っていくところを見せたくなかったのか。
「ずっと待っていろ」と言われた自分と反対に、「待たなくていい」と言ったことによって、巻き返したつもりなのか。
・病院で亡くなった誰かは別所の家族ではなく、無関係の誰かだったのか。
考えれば考えるほど謎も増える。
読み応えのある作品だ。
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