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AIを利用したコンテンツ制作の可能性や法的リスク(前編) ~AIと著作権の関係について基本的な考え方~

ピラミッドフィルム クアドラ(以下:クアドラ)は2023年8月24日(木)に、生成AIを利用したコンテンツ制作の可能性や法的リスクをテーマにウェビナーを開催。
ChatGPTやMidjourneyをはじめ、急速に普及している生成AIが著作権にどのような影響をもたらすのか、法律専門家と共に解説していきました。

今回はプロデューサー溝渕和則と塚本貴洋が登壇。

生成AIを法的観点で解説していただくのはタイラカ総合法律事務所の平山先生です。

noteでは本ウェビナーでお伝えした内容を前後編の2回に分けてまとめていきます!


本ウェビナーの趣旨

まず、改めて本ウェビナーの趣旨を説明します。

今年に入ってから急速に普及している生成AI。すでに日々の業務やコンテンツ開発で利用されている方、興味関心を持っているもののあまり触れたことがない方など様々だと思います。
生成AIは非常に便利なツールではありますが、便利なものほどどこかに落とし穴があるものです。

今回は法的観点(主に著作権)でAIの解釈を提示。さらにコンテンツ制作における具体的なケースを交えながら、現行の著作権法の考え方を基に安心してAIを使うためのポイントやトラブル回避術を共有してきます。
※今回お伝えする内容は、2023年7月時点の法的見解になります。

生成AIの開発と利用について

本題に入る前に我々がよく使うChatGPTやMidjourneyなどの生成AIサービスがどのように生まれて、どういった流れで利用されているのか、基礎中の基礎から簡単にご説明します。

データベースに集約された生のデータを学習用データセットとして成形。それを学習用プログラムに組み込むことで、機械学習や深層学習を行い、我々が利用するAIのモデルが開発されます。
そのモデルに対して、利用者側がプロンプト(AIに対しての指示や命令)や画像を入力することで、画像や文章が生成されます。

開発・利用フェーズそれぞれで、画像生成AIは肖像が利用される可能性があること、文章生成AIにおいては個人情報が利用される可能性があることを考慮する必要があります。

AIと著作権の関係について

著作権とは?

ではここからAIと著作権の関係について解説していきます。

そもそも著作権とは何なのか? 著作権法に書いてある「著作物」の定義は以下の通りです。

思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

著作権法2条1項1号

冒頭の「思想又は感情」という部分ですが、これは単なるデータや事実の羅列では基本的に著作物として認められないという意味です。
著作権法にも「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」は著作物にならない、と書いてあります。ですが、時事の報道などに論評を加えたりすると著作物として認められます。

これは「創作的に」という部分にも関連しますが、ありふれた表現といって、誰が書いても同じ表現になってしまうようなものも著作物としては認められません。例えば、請求書の書式などです。

また「表現したもの」という部分ですが、これは「表現」についてのみ保護されますので、アイディアや作風・画風といった「表現」の前段階のものは著作物として保護されません。

そういったことを踏まえつつ、写真やイラストなど実際にどういった条件が整うと著作物になるのか解説していきます。

著作権の範囲

①写真に著作権が生じるケース

写真の場合、被写体と撮影者、それぞれ別々の権利が生じることを理解しておく必要があります。
被写体については人であれば肖像権、絵画であればその絵画の著作権が生じますが、ここでは撮影者の権利、つまり写真が著作物となる場合について解説します。

写真は撮影時に構図や明るさなどを少しでも考えて撮影すると著作物として認められます。
逆に言えば、そういったことを全く考えられていない機械的に撮影した、証明写真やプリクラなどは著作物にはなりにくいです。

②イラストに著作権が生じるケース

イラストについても写真と同様に、構図などその人の意思がどこかに反映されていて、どこかに「もの」としての「表現」があれば著作物になります。

例えば、マンガの一コマであっても、作者の思いや個性が感じ取れれば著作物となります。反対に、黒一色のコマ、記号を描いただけなど単純な表現は著作物とは言えません。

また、先ほど説明した通り、「表現」の前段階である作風・画風は著作物として保護されません。ですので、作風・画風が似ているからといって著作権侵害を訴えることは難しいです。

ちなみに、子どもの落書きであっても著作物になります。著作物とは、芸術性の高さで判断されるわけではなく、その人の「気持ち」が表現されていれば著作物になるのです。

③文章に著作権が生じるケース

文章も基本的な考え方は写真やイラストと同じです。
小説、 脚本、 論文などの文章は「言語の著作物」にあたります。しかし、何かを表現していない、単なる事実の羅列や短い文章だと創作性が認められないため、著作物にならないことが多いです。

AIと著作権の関係について基本的な考え方

ここからは著作権に関する理解にAIがどのような影響を与えるのか考えていきます。
まず、ポイントとして、AIは現時点では単なるツールにすぎないということを理解しておく必要があります。例えば、PhotoshopやWordなど、今あるツールであってもメーカーが行う開発・学習段階と、ユーザーが行う生成・利用段階に分かれるため、2つの段階について順に考えていきます。

AI開発・学習段階で注意すべき点

①画像生成AIの場合

まず、開発・学習段階において一般的なツールであれば、著作権侵害しているソフトウェアやツールは開発しないでしょう。
ただ、違法に作られたソフトを使用してコンテンツ制作をしたから違法になるというわけではなく、適法なソフトであろうと違法なソフトであろうと、それらを使って違法なことをすると違法になるのです。
つまり、ツールの問題というより、それを使って何をするのかが大事な視点になってきます。

ただ、画像生成AIの場合は開発・学習段階で大量のデータを読み込む必要があるため、特殊な論点への配慮が必要になります。
例えば、
・第三者が著作権を有しているデータ(他人が作成した文章等)を読み込ませる
・登録商標・意匠(ロゴやデザイン)を読み込ませる
・著名人の顔写真や氏名を読み込ませる
といったことです。

この時に学習用にデータを読み取ることは、一昔前の著作権法では複製権などの侵害といって基本的には違法とされており、開発段階にすでに違法な行為が含まれていたため、AI開発がしづらかったという現実がありました。
その点が他のツール類の開発とは異なっていた点です。

しかし、最近は法改正がされ、著作物に表現された思想や感情の享受を目的としない場合、原則として著作権者の許諾なく利用可能となりました。
簡単に言うと「著作権者が不利益を被らないならAIに学習させても良い」ということです。

②文章生成AIの場合

文章生成AIの開発・学習段階において注意すべき点は、基本的に画像生成AIと同じです。しかし個人情報や機密情報といった論点が顕在化しやすいため注意が必要となります。

我々が生成AIを利用している際に個人情報や機密情報を入力すると、そのデータを学習用として読み込まれ、第三者に使われてしまう可能性があります。
こういった行為は違法となりかねないため注意が必要です。

そして、最近ではAI開発 / 提供者の透明性向上図るため、生成AIの監査・認証制度の検討など、政府の対応についてニュースも出ています。
各国では、AIで生成したものにはAIであると明記しなければならない、個人情報を読み込ませることを禁止するなどの規制が始まっています。

AIを使えば、いかにも本当らしいものを作ることできるため、フェイクニュースなどへの対策が問題となります。
しかし、AIは単なるツールであり、PhotoshopやWordでも同様のことができます。そのため、AIに特別な規制をかけることは難しい問題だと平山先生は考えています。

AI生成物を利用する際に注意すべき点

次は、AI生成物を利用する際に注意すべき点を解説していきます。

文章生成AIは質問すると便利に答えてくれますが、架空の内容が含まれているケースがあります。
そもそも画像生成AIは架空の写真などを作り出すため、文章生成AIも同様に架空のものを出力するツールだと割り切って使う必要があります。

架空の文章やイラストであっても他人の権利を侵害していなければ違法にはなりません。
ただ、知らず知らずのうちに著作権侵害をしていた場合、違法となるかはまだ整理がついていない状況です。
平山先生の見解としては、本当に知らないのであれば違法にはならないと考えられますが、事例がないため最終的に裁判所とかでどう判断されるのかは分からないようです。

いずれにせよ、知らなかったと言い張れば自由に利用できるわけではないため、商用利用する際には注意が必要です。

また、広告業界においては、知らなかったとはいえ似てしまうと炎上のリスクがあります。その点も踏まえたリサーチやファクトチェックは必要になってくるでしょう。

さらに、生成AIは細かい利用規約を定められていることが多いため、利用規約をしっかり確認することも大切です。例えば、 Midjourneyの場合、無料会員は商用利用が不可となっています。

前編のまとめ

AIと著作権の関係について解説していきました。
ここまでは概念的な内容が中心となりましたが、後編ではコンテンツ制作における生成AI利用の具体例を挙げながら、法的観点で注意すべきポイントを解説していきます。後編もぜひご覧ください!

また、本ウェビナーの録画データは以下からご視聴いただけます。ぜひご覧いただけますと幸いです!

▼お問い合わせはこちらまで
株式会社ピラミッドフィルムクアドラ レポート事務局
pfq_report@pfq.co.jp

タイラカ総合法律事務所
info@tairaka.jp

(この記事の内容は2023年9月14日時点での情報です)

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