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南米のコンキスタドール(Conquistador)をテーマにした新曲動画
こんにちは。
葬送のオーケストラ「墓の魚 PEZ DE TUMBA」
の作曲家です♪
「墓の魚」は、
先日、新作動画を投稿いたしました。
「荒唐無稽な叙情 LÍRICA DE LO ABSURDO」
という、この作品は
コンキスタドール(Conquistador)達の
歴史をテーマにした
ポルトガル風のラテン音楽で、
古めかしい雰囲気が漂う曲になっています。
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ところで
コンキスタドールとは何でしょう?
今回の作品は、
ちょっと独特で
難解な歌詞を持っているので、
ここで少し解説していこうと思います。
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コンキスタドールとは、
16世紀頃にスペインやポルトガルから
南米大陸を征服する為に
海を渡った
荒くれた冒険者、征服者達の事で、
彼らの侵略行為による
南米の植民地化は、
南米にスペイン・ポルトガル人達と
現地人や、黒人奴隷達の複雑な混血をもたらし、
現在、南米諸国は独立しながらも、
スペイン・ポルトガル文化の影響を
色濃く受けた
独特な領域となりました。
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当然、コンキスタドール達の話は、
多くの血が流れた
悲劇的な歴史ですし、
そこには奴隷の反乱や、
植民地時代の栄光に
いつまでも縋りつこうとした
南ヨーロッパ諸国などの
様々な物語があります。
近代になっても、
独裁者や、革命、貧困などの
様々な問題を抱えているのが
南米という国々です。
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侵略と、そこから生まれた子供達・・
そしてヨーロッパからの独立・・
それらを内包して、
南米の国々は新しい物語を始めたのです。
まさに、
「この世界は
悲しみを内包した喜劇だ」
と、言わんばかりに。
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いずれにしても、
それを誰よりも自覚しているのが、
こうした歴史を持つ
南米諸国の人々
なのではないでしょうか。
陽気な国と言われる
ラテン諸国の根底にある
貧困や、征服や、死を
決して忘れてはいけないのです。
なので、この作品
「荒唐無稽な叙情 LÍRICA DE LO ABSURDO」
の歌詞は、
世界の悲喜劇性を
キリスト文学的に歌った
複雑なものになっています。
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「コンキスタドール達の夢
イベリアの豚・夜の七つの幻想」より
第1の月 荒唐無稽な叙情
~棺の犬~
作詞作曲・黒実音子
◇◇◇
1
ああ、荒唐無稽な叙情を
死者の口紅から語ろう。
寂れた墓石に吹き抜ける風と、
棺桶のきしむ音こそが真実。
我々は涙のアミティエ、
聖マラトンの患者。
マルキシズムの夢に
身を捧げた男達のように・・
ああ 町人が恋を語り、
詩人はあの娘の歌を、
鳥達は愛をささやき、
街が愛に溢れているのだとしても
我々はやはり孤独なのだ!!
それは文学の文字が虚しいように、
夜明け前のバイロ・アルト通りを
ただ響く音のように・・
2
我が父はコンキスタドール!!
エンコミエンダの実行者!!
我らは棺が産み落とした褐色の幼子・・
ゴルゴダの男も、
バビロンの娼婦も、
ああ 薄情な事
人は他者に関わらずに歌う。
ああ 貴方には貴方の悲しみが!!
私には私の声が!!
人は見る事がないのだ。
お互いの魂の夢を。
ああ どうか詩人よ!!
唄い語り伝えておくれ!!
愚かな女の墓に添える言葉を・・
拙いクリオーリョ達の歌を。
ああ、天使達の祝福の鐘の音!!
厳粛なる浄化!!
それでも満たされない、
荒唐無稽な叙情。
魚の骨よ、教えておくれ!!
業の深い罪を許す祈りを!!
それでも何もかも砂になるだろう。
懸命な生き方すら。
あるいは、違う結末も望めたのだろうか?
そう、これは劇なのだ!!
脚本の無い遊びなのだ!!
ああ詩人よ!!
だが、空虚な墓石が讃えるものは・・
言葉と、破れた夢と、
死んだ魚の骨・・
◇◇◇
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さて、話を歌詞から
音楽構成の話に移します。
この曲を聴いてもらうとわかる様に、
「墓の魚」の音楽には
派手で何重にも
敷き詰められた伴奏がありません。
この様に、
古いラテン音楽には、
少ない音の中で
歌い手が激しく歌っていくものが
数多くあります。
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そして、そういう曲の作り方が
私達「墓の魚」の作品の
特徴でもありますね。
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ファドにしても
フラメンコにしても、
編成や、
音の少ない乾いた荒い伴奏の中で
力強い声が響く・・・
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これは、これらの音楽が、
決してポップスの様な
打楽器による[ノリ]
を第一に求めているのではなく、
深く、太く響く歌声による
[魂の叫び(ALMA)]
[人生の嗚咽(DUQUELAS)]
を表現する事を目的としていたから
ではないかと私は思います。
フラメンコでは、
重く、魂の籠った音楽には
ドゥエンデ(DUENDE(魔物))・・
つまり
[魔が宿る]
と言われています。
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現代日本での音楽の在り方は
[忙しい労働の日常の中で、
音楽により元気を出していこう
(今日も元気に仕事を続けていこう)]
という[応援歌]の側面が強く、
音楽で[悲劇性][嗚咽性]を出す事を
嫌う傾向がありますが、
古い時代のラテン音楽には
[人生の痛み]を共有し、
己の内面や、
人類の悲劇の歴史(差別や征服)と
ひたすら詩人として向き合う
側面があった様に思います。
労働よりも
[貧困]や[反政府]
[悲劇の歴史への嗚咽]
などの
人間の[個の事情]
こそが歌われたのです。
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さてさて、
という訳で、今日は
新曲と、ラテン音楽の
お話しをしてみました。
そんな私が作品を制作していく
オーケストラ
墓場(LA TUMBA)と、博物誌の
「墓の魚」を
これからも
よろしくお願いいたします~。
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【1000視聴突破ありがとうございます♪】
「墓の魚」のラテン詩と、
メメントモリ曲の融合した
配信動画
「死んだ珪藻とマキシロポーダのミサ」
こちらで公開中です↓↓↓
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