モノではなく体験にお金を払う時代?:【エネルギー産業の2050年 Utility3.0へのゲームチェンジ】
(screenshot by Amazon)
基本情報
◎著者:
・伊藤 剛( アクセンチュア 戦略 コンサルティング 本部 素材・エネルギー グループ )
・岡本 浩( 東京電力パワーグリッド取締役 副社長)
・戸田 直樹( 東京電力ホールディングス経営技術戦略研究所 )
◎時期:2017年9月第一版
◎ボリューム:ページ数160(Kindle版2621ページ)
◎推薦:経営共創基盤 代表取締役CEO 冨山和彦氏 おすすめの一冊
◎一文で言うと:少子高齢社会である日本国内における、エネルギー業界のトレンド(5D)が生活消費スタイル全般に与えるであろうパラダイムシフトの影響について分かりやすく書かれた一冊
ポイント
・生活スタイルと密接に関わっている電力業界について5つのD(人口減少、脱炭素化、分散化、自由化、デジタル化)を切り口で整理している
ー 電力のデジタル化、地方分散化、自由市場化について述べられている書籍や文献は多いですが、日本の社会構造の場合、より注目すべきは「人口減少」「脱炭素化」の部分ではないでしょうか。
・2013年度の日本の温室効果ガス排出量は約14億トン(88%がエネルギー起源)、それを2050年に80%のCo2排出量削減という目標に向けたシナリオ試算(①発電の脱炭素化 ②非電力需要の電化)
ー 単に生活スタイルをオール電化することが温室効果ガス排出量削減に繋がるとは限りません。そもそも、「どのように電力を作るのか」の部分において、旧来原子力発電所に頼ってきた日本は特に取り組む必要がありそうです。
・「モノには無関心で、利用価値に重点を置く消費者」の台頭とそれに対応する2つのビジネスモデル。①顧客の先回りをするビジネス(e.g. Amazon)、②体験ニーズの創造を通したビジネス(e.g. ナイキ)
ー 「体験」にお金を払うビジネスモデルは既に大きな波となっていると感じられるところまで来ていると思います。例えば、「現地に住む」ような「旅の体験」を提供しているAirbnb、「スムーズな移動体験」を提供しているUberなどが代表例ですよね。
ただし、この著書でのポイントは”電力は利用体験を実感しずらい”という点です。電気はあって当たり前という感覚が生まれてから私達には刷り込まれているからです。では、電力業界ではこのような「体験価値」ベースのビジネスモデルは生まれないのか?
そうではありません。
電力とは、私達の生活を「アクティブ」にする際に使いますよね。例えば、冷蔵庫、掃除機、HIヒーター、床暖房 etc でも私達はその冷蔵庫や掃除機の商品自体に価値は感じていないはずです。
「冷たいものを安全に新鮮に保管し、美味しい料理を食べる」という体験
「自分の家が綺麗でゴミが落ちていない快適な暮らし」という体験
冷蔵庫などは、そのための「道具」として買ったはずです。その「道具」にスイッチを入れるのが電力である、と考えるのであれば、近い将来にそれらの「道具」を売っている会社が「体験ベースのビジネスモデル」に移行していくことも考えられますよね。そしてその場合、電力業界のビジネスモデルはどのように変化していくのでしょうか。
この体験ベースのビジネスモデルの台頭は、私にとって大きな衝撃と共に、シェアリングエコノミーやストーリーベースで購入を決めるミレニアム世代との相性の良さを感じられずにはいられません。
「体験」にお金を払うという視点で新たに自分の世界を見てみると、案外いろんなものに商品としての価値を感じていないにも関わらず、その「体験」のためなら枚挙を厭わない瞬間って沢山あるな、と感じました。
人の記憶に残る「体験」を作り出すようなビジネスモデルはいつ見てもわくわくするものですね、
おわり。Cheers xx
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