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【映画の中の詩】『ハンナとその姉妹』(1986)

ウディ・アレン監督。
エリオットは妻ハンナの妹リーに恋をしてしまう。彼女への思いを直接には言えず、二人で立ち寄った書店でE.E.カミングズの詩集をプレゼントする。「112ページの詩を読むことを忘れないで!」と。

 『こんなところに来たことなかった』E.E.カミングズ
あなたのふとした視線が いともたやすく ぼくをひらいてしまう
 ぼくはゆびのように 自分を閉じていたのに いつも
 あなたはひらいてゆく ひとつひとつ 巧みに 神秘的に
 春が彼女の最初の薔薇の花弁をひらくように

ぼくは知らない あなたがなぜ ぼくを開くことも閉じることもできるのか
ただ ぼくのなかの何かは知る
どんな薔薇より深く 語りかける あなたのまなざし
雨よりも細やかな あなただけの手

カミングズについて検索していて意外だったのは「カミングズはアメリカで最もポピュラーな詩人のひとり」といった記述がいくつかあったことでした。
へー、そうなのか。勝手に「アメリカの藤富保男」的な立ち位置の人と思い込んでいた。

映画『In Her Shoes』(2005)より、

姉の結婚式でカミングズを朗読するキャメロン・ディアス(難読症の女性という設定)。

カミングズ「ぼくは君の心を奪う」(藤富保男訳)

ぼくはきみの心を奪う(ぼくはそれを
心にしまう)ぼくにはそれが必要なのだ (ぼくが
行くところにはきみも行く ぼくだけで
やるものは きみのことばかりだ
               どんな運命も
こわくない(きみがぼくの運命だからさ)どんな世界も
ほしくない(美しいきみはぼくの世界だからさ)

(後略)

『カミングズ詩集』海外詩文庫8(思潮社)

あちらの結婚式などでよく朗読される詩だそうです。


参考リンク
「経験の向こうの方によろこんで どこかに旅をしたことは ぼくにはない」藤富保男訳 『世界詩人全集 第21 新潮社』
https://dl.ndl.go.jp/pid/1349590/1/85


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