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『国際協力のリアル』イベントレポート 原貫太さん×ペシャライト対談編

2024年6月8日(土)、九州大学にて、ペシャライトと哲縁会が主催し、「『国際協力のリアル』~国際協力師・原貫太さんと中村哲さんの実践から考える~」というイベントを開催しました。原貫太さんと中村先生の実践を通じて、国際協力の現実について考えるというテーマのもと、約30名の高校生、学生、院生の皆さんにご参加いただきました。本投稿では、講師としてお招きした原貫太さんと主催メンバーが国際協力について対談した内容を一部ご紹介します。ぜひ最後までご覧ください!


①支援する側、される側の間に生まれるギャップ

※対談は、学生が中村哲医師の著書の一節を紹介し、そこから生じた疑問を原さんに尋ねるという形式で行われました。

紹介された著書。
中村哲さんは現地に赴任当時、ハンセン症の治療をしていました。ハンセン病の合併症のひとつに足の感覚がなくなるというものがあり、現地の人が足に怪我をしないように、と
現地の文化を尊重したサンダルをつくるワークショップを開きました。

原さん:私は2019年の1月から2020年の3月まで、ウガンダの北東部で、生理用品を買うことができない女の子たちに布ナプキンの作り方を教えるというワークショップに携わっていました。貧困地域では、生理用品を購入する余裕がなく、マットレスの切れ端や古新聞、落ち葉などで経血をしのぐ女の子もいます。しかし、それでは十分に経血をカバーできず、女の子だけ毎月数日間学校を休むということがありました。それが原因の一つとなって、授業についていけなくなったり、進級試験に合格できずドロップアウトしてしまうということが問題となってました。

そのため、小学校から「生理用品を支援してほしい」という依頼を受けました。生理用品があれば、目の前の問題を解決できるからです。

一概には言えませんが、私が関わってきたアフリカの多くの地域では、良い悪いは関係なく、「今目の前にある問題をどう乗り越えるか」と今に集中して生きている人が多い印象があります。現地の他のNGOの方々も、「長期的な計画や逆算を考えることが苦手な人が多い」と話していました。

そのため、私が大量に生理用品を提供したとしても、私がいなくなった後に再び同じ問題が発生するのではないかと疑問を抱きました。そこで、物を与えるのではなく、現地で手に入る素材を使って作れる布ナプキンの作り方を教える活動を行いました。

「生理用ナプキンを支援してほしい」その現地からのリクエストの背景を考えることが重要です。例えば、地域によっては、「未来」「過去」の概念すらないという地域もあります。今この瞬間をなんとか生きる。そのような背景を踏まえずにリクエストをそのまま受け入れてしまうと、依存を助長する恐れがあります。こうした考え方の違いを理解しないまま行動すると、結果的に将来に悪影響を及ぼす可能性もあるのです。

学生メンバー「現地の考え方との違いを考えながら、相手のバックグランドまで考えて、持続的な支援をすることが大切だと思った。」

②情報を収集・発信するときに気を付けていること

紹介された著書。
アフガニスタンでは2000年以降、干ばつが顕在化しました。その被害は甚大で、多くの人々が飢えに苦しみ、日本では簡単に治るような病気でも、衛生状況が悪く、多くの人々が亡くなりました。

原さん:まず、情報発信についてお話しますね。僕の仕事は関心の集まりにくい話題について、いかに関心をもってもらうか、という仕事です。今でこそ、試行錯誤の末、30万人ほどチャンネル登録者数がいます。ですが、始めた当初はまったく見られませんでした。そこで、僕が感じたのは人間は必ずしも正義の方向へ動くわけではなく、人間は欲求の方向へ動くということです。

フェアトレードだとしても、「どれくらいの人が助かりますよ」という打ち出し方ではなく、「カッコいい」、「性能がいい」、その結果、現地の支援になるという方が良いと思いませんか。僕の動画に置き換えて考えると、「なんか見てみたい」「知的好奇心がくすぐられる」とまずは興味を持ってもらって、中身を見てみると、常に社会的なメッセージが発信されている。サムネイル、タイトルではメッセージ性を前面に出さず、どうやったら見てもらえるのかをまず考えています。

関心が集まりにくいことについては、皆が興味を持たないため、なかなか表には出てきません。しかし、現場に行くと、どこまでも人と人とのインタラクションが重要だと感じます。現場って有機体のようで、全部が理屈通りに動くわけではないし、人間って感覚的な動物だなって。こういったことを総合的に理解できるのは、現場に足を運ぶことでしか得られないものです。だから、できれば、現場に行く。それが困難なら現場に長く携わっている人に話を聞くことをおすすめします。

ネットが発達しているこの時代だけど、フィルターバブルに阻まれ、関心が集まりやすい部分にばかり焦点が当たってしまう傾向があります。そこで、「人を起点に話を聞く」ということを意識すると、意外なところで面白い話を聞くことができるかもしれません。そういった人と人とのコミュニティの中で、自分の世界観をアップデートしていく。そういう意味で、色んな人の話を聞けるコミュニティに入っているのは良いかもしれないですね。

学生メンバー「現場を見る、直接人から話を聞くというのは、ネットが発達した時代だからこそ大切にしたい価値観ですね。」

③「本当の豊かさ」とは?現地から学ぶこと

紹介された映画。

原さん:これについては、あげたら切りがないくらい例があります。
まず大前提として、国際協力という言葉自体をどう定義するのかが大切です。国際協力ってふわっとした言葉ですよね。私自身は「対等な関係を目指す」と定義しています。

私が学生の頃、団体を作って、現地に行くということをしていました。しかし、今思うと、現地の言葉もわからない、文化もわからない人間が何かをするというのはすごく傲慢だったと反省しています。

現在、ウガンダへのスタディツアーを年に2回開催しています。そこで伝えているのは、「何かできると思わないでください。現地の人から学ぶという姿勢で臨んでください」ということです。だから、「ボランティアツアー」ではなく、現地の人から学ぶというスタディツアーにしています。何かできると思った瞬間に視野がすごく狭くなってしまう。彼らの足りない部分、よくない部分ばかりに目がいってしまう。
でも、学ぼうと思った瞬間に彼らの良い部分に目がいくので、国際協力をする上で、対等な姿勢を持つことは非常に重要です。その時に、何かしてあげるではなく、現地から学ぶという姿勢が大切かなと思っています。

具体的な例として、いろいろありますが、アフリカの色んな国をまわったときに、本当に豊かな生き方をしているのは、現地の人か、僕たちかどうなのかな、という問いを突きつけてくれます。

YouTubeで話した例をあげると、ウガンダ、ブルンジ、コンゴでは、子どもがいじめで自殺する率が少ないです。なぜか、アフリカの多くの地域では、学校以外の友達とあう機会が多いんですね。所属するグループがうまく分散していて、リスクヘッジができているので、学校でうまくいかなくても他でカバーできます。

一方、日本の子どもたちのほとんどは、家族と学校しか居場所がありません。以前、女子高生が自殺したニュースを見ました。学校でいじめに遭い、さらに父親から性的虐待を受けていたそうです。

人間は、社会的な生き物なので、常にコミュニティやつながりがあります。
なので所属するコミュニティのすべてに居場所がないと感じた時、その人の自我や自分らしさは崩壊してしまい、自殺という選択肢をとってしまったのではないかと思います。もしその女子高生に別のコミュニティがあって、相談できる場所があったら、と考えてしまいます。

人間として豊かに生きるとは何なのか。経済的には苦しい生活かもしれないが、上手いこと人間関係を保てていると考えていれば、我々がむしろ彼らの生き方から学ぶことが多いと思います。

学生メンバー「アフリカの人たちがコミュニティをつくっている、人間的な豊かさから、どっちが豊かか考えさせられた。」



ここまでお読みいただき、ありがとうございました。次回は、参加者の皆さんと話し合ったディスカッションパートについてお伝えします。

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