ポップで糖衣された不謹慎! スペインの鬼才ミゲル・アンヘル・マルティンを知ってほしい
あと10日後に迫った文学フリマ東京38に出店するので「よりぬきSurfing on the Third Wave」について。
このZINEは両A面になっているので左から開くとスペインのサブカル界の鬼才ミゲル・アンヘル・マルティンのコミックの翻訳本になっている。
まずはミゲル・アンヘル・マルティンとの邂逅から語りたい。今を遡ること20余年、2002年にわたしはワールドカップで沸く日本の喧騒を避け、8年ぶりにバルセロナの地にいた。バルセロナには大学を卒業した後2年ほど住んでいた青春の思い出の地である。当時、まぐれみたいな成り行きで映像翻訳者として一応デビューはしていたが、そもそもがまぐれなので、ふだんは派遣社員として糊口をしのぎ翻訳の仕事は年に2本あればいいほうだった。
これまでの人生、「パンがなければ自分で作ればいいじゃない」のDIY精神でやってきた。ならば、自分で仕事を作ればいいじゃない。さすがに映画を買い付けるのは現実的ではないが、面白そうなコミックを探して、出版社に売り込むのならできそうだ。なぜコミックなのかというと、バルセロナにいるときに日本の漫画をいくつかスペイン語に訳してギャラをもらったことがあった。(どう考えても不法就労だが、もう時効だろう)スペインのコミックは日本ではまだ全然知られていない。ブルーオーシャンでは?
そのときに買い込んだコミックの中に絵柄に惚れ込んで買ったミゲル・アンヘル・マルティンの「Sicotronic Records」があった。(さらに言うと「リアリティのダンス」の原書も見つけて大興奮したのだが、それはまた別の話)日本に帰ってから持ち込みしなきゃな~と思いつつもグダグダしているうちに年月は過ぎて行った。わたしは思いついたらやってみる行動力がある一方で、何かとダラダラもしがちなのである。日本でじっくり読んでみたら、持ち込みに適した出版社が思いつかなかったというのも大きい。そりゃそうだ。まだないマーケットを対象にしているのだから、すぐには思いつかなくて当然だと今なら思うが、そのころはあんまり深く考えずそのまま有耶無耶になってしまった。
機会があったら漫画の翻訳もやりたいな… と頭の片隅で思いながら幾星霜。なんと今年の1月にセルバンテス文化センターで彼の展示があり、オープニングパーティーでコーパス・グラインダーズの名越さんの演奏に合わせてライブドローイングをすることが分かったので当然駆け付けた。もし、日本での出版の話があるなら翻訳者として立候補しようという目論見があったことは否めない。22年前に買った「Sicotronic Records」を出してサインをお願いすると、おっ!という顔。少し話した後に日本での出版の話があるのか聞くと、ないとの返事。自分は翻訳者なので出版化の際はぜひと名刺を渡して一度は帰りかけたのだが、出口でふと「ないなら自分で作ればいいじゃない」と思い引き返して「例えばZINEみたいな自主製作版とかはあり?」と聞いたところから、とんとん拍子で話が進みパイロット版ならいいよと言われて今回の出店に相成りました。
とはいえ、ちゃんとした出版社から完全版を出してほしい。編集者に届けーーー!
う-57〜58 (第二展示場 Eホール)「ゆる結社うっかり」で待ってます。