周 浩暉 『死亡通知書 暗黒者』 (ハヤカワ・ミステリ) 華文ミステリ最高峰の喧伝に偽りなしの面白さ!
劇場型シリアルキラーと警察との死闘。
華文ミステリの最高峰、ついに邦訳。
死すべき罪人の名をネットで募り、予告殺人を繰り返す劇場型シリアルキラー〈エウメニデス〉。挑戦状を受け取った刑事・羅飛は事件を食い止めようと奔走するが……果たして命を懸けたゲームの行方は? 本国でシリーズ累計120万部突破の華文ミステリ最高峰
(ハヤカワオンラインの該当ページより引用)
https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014589/
守るべきは法か正義か 敏腕刑事と殺人鬼、宿命の対決
金や権力を理由に罪を裁かれていなかった『悪人』をネット掲示板で募集しては処刑する、復讐の女神《エウメニデス》を名乗る劇場型シリアルキラーと警察との死闘が描かれたシリーズ第1作です。
過去に迷宮入りした警察官殺しの事件から18年後、その捜査を密かに行なっていたベテラン刑事が惨殺されたことから、止まっていた時間が再び動き出します。
この過去の陰惨な事件で全てを失い警察内部でも冷遇されていた敏腕刑事羅飛(ルオ・フェイ)は、その連続殺人鬼が再び現れたA市警察の精鋭チームに加わり、合同捜査を開始します。
個性的な捜査チーム どいつもこいつも信用できない!
切れ者ながら影のある羅飛はもとより、能力の高さに比例したのか専従捜査チームのスタッフも、高圧的なエリート隊長、好奇心旺盛で人懐っこい新米副官、人間兵器な特殊部隊隊長、態度は不真面目ながら超絶有能ハッカー、観察力抜群で紅一点の心理学者とキャラの立った曲者ぞろい!
この面々が素直に協力すれば捜査はスムーズに進みそうなものですが、そこは急造チームゆえ、怪しげな行動を取る者や密かに監視する者、さらに過去に秘密を抱える者と、どいつもこいつも油断できません!犯人追跡をしながらも、秘密裏に身辺調査し互いを牽制する絶妙な緊張関係です。
捜査が進むにつれ、事件の関係者たちの過去に抱えた業が次々と明らかになっていき、その都度万華鏡のように各人物の印象が変わっていきます。特に終盤で豹変したある人間には「お前、あいつか!?」とその正体に驚愕しました。
変貌するのは被害者や捜査チームだけでなく、主人公も例外ではありません。『The Boys』のブッチャーのように、突然一線を超えそうな、危うい状態のまま揺れ動く、主人公である羅飛。中盤あたり、めちゃめちゃ怪しくて思わず疑ってしまいました(笑)正直終盤も何するかヒヤヒヤ。
哀しき狂気の復讐者
警察をあざ笑うかのように《エウメニデス》は、ターゲットと日時を指定した上で次々と予告殺人を達成していきます。予告状に法で裁かれなかった罪状を添えながら。
この《エウメニデス》、とにかく隙を見せません!残す手がかりに二重三重のミスリーディングとトラップを仕掛け、厳重警戒の警察の裏の裏までかいてきます。まるで映画『ダークナイト』のジョーカーを相手にしているような不気味さです。野崎まど『バビロン』でも可。
終盤、18年前の事件の真相を告白する犯人の「何を犠牲にしても必ず仇を討つ!」というを常軌を逸した覚悟に当初困惑しましたが、その後の主人公との「法を免れる権力者たち真の悪を誰が裁けるのか」という一連の問答が、彼を狂気に駆り立てた告解にもなっていると感じました。ネットではこの犯人を『DEATH NOTE』の夜神月に例えている人を見かけましたが、個人的には『TIGER&BUNNY』のルナティックに近い印象でした。凶悪な私刑内容とは別に、哀しい人間性を感じさせる点で。
本作はシリーズ第1作ということで、犯行を完遂し逃走した犯人に対して、主要人物たちが決意を新たにする場面でこの巻は終わります。3部作ということですが、どう決着つけるのか着地点がまるで見えません!!続きを早く訳して読ませてくださいハヤカワさん!!