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国立西洋美術館で写本の世界に心舞い上がるーいとも優雅なる中世の小宇宙ー展
何が書かれているか全く分からない、けれど見た目がとてもキレイ!女心くすぐられる!
それが中世ヨーロッパの写本です。
以前からとてもとても楽しみにしていた、国立西洋美術館で開催中の写本の展覧会に行って来ました。
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テンション爆上がりです!
訪れた感想は…
遊び心も満載で、写本という小さな空間の中にキラキラ光る宝石が詰め込まれているようでした。その一葉一葉にワクワクし、鑑賞し終えた後も余韻に浸ることができた展覧会でした。
中世ヨーロッパの人たちの美意識にうっとり
写本にも色々種類があるようなのですが、もっとも普及していたのが聖書だそうです。
中世の人々にとって聖書は言ってみれば、(あくまで私の感覚ですが)学校の教科書のようなモノのはず。
若かりし頃学校から支給された教科書はほとんどモノクロでしたが、中世の写本はとてもカラフルです。
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ズヴォレ聖書の画家(彩飾)
「ズヴォレ聖書」零葉
本当に夢のように美しい。
こうやってカラフルに装飾するのはやはりキリスト教の宗教観だったり、神様に関係するものだから色とりどりにしようということなのでしょうか。
日本人の感覚にはあまりないような気がします。
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「ヨシュアに語りかける神」
にしても、何もないところにこんな素敵な装飾を施すなんて素晴らしいですね。
美しい装飾の数々にうっとりします。
特に私がいちばん素敵だと思ったのが、会場入って最初に展示されていたこちら↓
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とても小さな一葉
一瞬、息を止めて見入ってしまいました。
所々にキラッと光る線に胸が高鳴り、わくわくしました。
写真だとなかなか伝わらないですね〜汗
ぜひ足を運んで間近でじっくり観て欲しいです。
そして、そこに書かれていたコレクターである内藤氏のエピソードに大共感しました↓
パリのセーヌ川沿いに続く屋台の古本屋で見つけました。「金に赤や青という派手な色でありながら、折り目正しさがあり、一方で、よく見ると狭い世界の中に、融通無碍なデザインが隠れるようにちりばめられていて、おおらかな遊び心が見えてくる。そのたくまざる品のよさに、食い入るように見入った。」*購入した5枚ほどをホテルのベッドの上に広げて見たとき、そこにある美の世界がゴシック美術そのものだということに気づき、断片とはいえその本物を身近に置けることに、体が震えるような喜びを覚えたといいます。
私もただひたすらに続く日常を離れて、美術館へ赴き、観賞後図録を購入し、ホテルにその図録を持ち込んで、ただひたすらそれを眺めるその時間がたまらなく好きです!
ちなみに、今回の図録にはコレクターである内藤裕史氏(筑波大学・茨城県立医療大学名誉教授って…やっぱりすごいお人なのですね〜)と画商のストーリーも載っていて興味深かったです。
お金持ちが美術や芸術のためにお金を使ってくれて、こうして一般公開してくれるのはありがたいですね。
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会場を飾っていました
小さな完本の展示もありました。
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教会に行き、この小さな本を開ければ、カラフルな世界が一気に開かれます。
中世ヨーロッパの人たちはこの小さな本を手に手に教会に集っていたんですね。
動物の皮をここまでキレイに!そして写字生や絵師の技術に注目!
実はたまたま以前購入して、字の多さにほったらかしていたこちらの本↓
今回の展覧会に合わせて本棚から引っ張り出して読んでいきました。
と言っても全部読めずに半分くらいまでしか読んでないのですが(・_・;
それでも、羊皮紙を作る過程がとてつもなく気が遠くなる大変な作業だというのはインプット済みです。
羊皮紙について
いかに羊皮紙を作るか。皮を石灰水に三日間漬け込む。枠に張り両面を鋭いナイフで削り取り、乾かす。軸に巻く分だけ作り、絵具で描く(ルッカ手稿490)
クラウディア・ブリンカー・フォン・デア・ハイデ
一條麻美子 訳
なんて書かれていました。「この世で人間は動物より卑しい存在(人間は死んでも何も残さないから)」とも書かれていて、動物の皮がとても価値あるものだったことが伺えます。
パッと観ると普通の紙に見えるけれど、近づいてみると動物の皮膚だと分かり感動しました。
特にカットしてあるものや、ヨレヨレになっているものはよく観るとその動物の皮の感じが分かります。
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動物感が出ています
これほどまでに綺麗にする作業…その大変さが伝わって来ました。
罫線が引いてあるのも確認できました↓
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罫線を引くのは字を均一に書くため
事前に本で勉強しておいて、こうして楽しめたのが良かったです。
文字を書くすべを知らぬ者は、それがいかに苦痛を伴うか分からぬだろう。詳しく聞いてみたいというなら、教えてやろう、この仕事がどれほどつらいかを。目はかすみ、背は曲がり、あばらと腹はつぶれ、腎臓が悲鳴を上げる。こうして全身が痛むのだ。
クラウディア・ブリンカー・フォン・デア・ハイデ
一條麻美子 訳
↑これは書記の苦労を述べています。
ペンはラテン語でペンナというそうで、「苦痛」という意味のペナは掛詞のように使われたそう。
日常、本当に何気なく使っている「ペン」という言葉が、中世の写字生たちの苦痛が由来とは…うーん、おもしろい!
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ペンの代わりに可愛い乙女を側に置きたいと祈りのパロディを残している人もいたようです↓
ああ神よ、願わくは汝の慈しみよりて/我らに頭巾と帽子/マントと上着/山羊と鹿/羊と牛/多くの女を与えたまえ、子供はなしで(ハイデルベルク大学図書館、ドイツ館、20番、246葉表)
クラウディア・ブリンカー・フォン・デア・ハイデ
一條麻美子 訳
本当にユーモアたっぷりですよね。
ちなみに会場のキャプションでは「羊皮紙」ではなく、「獣皮紙」と表示されていたました。
これは、羊だけではなく牛の皮も使われていたからみたいです。最初訳した人が間違えたらしいと、山田五郎さんがYouTubeで言っていました。
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自分が今どこにいるのか確認できました
それから写本の種類も一目で分かるようになっていました
中世ヨーロッパの人たちの遊び心が楽しすぎる
ただ眺めてるだけでもすごく楽しいけれど、細部を見るとたまにおや?という絵があります。
鳥がすみっこで餌を食べていたり↓
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何かくわえてる男とか↓
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本物は見入ってしまい撮影し忘れました
これは、スプーンを鍋の中に投げ入れると、そのスプーンが勝手におかゆを口に運んでくれる図らしいです^^; なぜ?
そして、このキリストの顔↓これでオッケーなのでしょうか?
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うーん、遊んでるよね!笑
最初の映像が見れなかった涙
国立西洋美術館に入り、受付を済ませて階段を降りるとこの景色です↓
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気持ち昂ぶります!
実は振り返ると映像が流れていたんです。
内容はパッと見、写本の作り方の再現だったのかなぁ。
本物の写本を見たくて、わくわくし過ぎて、先を急いでいた私。
あとで戻ってじっくり見ようと思って、会場に入りました。
そして、鑑賞を終え戻ってみました。
結果、スタッフの方に止められてしまいました。涙
スタッフの方に懇願するも、困らせてしまっただけでした涙
無念です。
また入場料払おうかと真剣に考えました。
まとめ
この日はまだかまだかと、しばらくの間この日のために生きていたくらい楽しみにしていた写本展でした。
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けれど、見事な装飾にうっとり
とてもキレイで繊細で、遊び心もあって、この夢のような空間に居られることが幸せでした。
当時の写字生や絵師、羊皮紙を造る職人、それから写本を使う人々の生活に思いを馳せることができました。
しっかり図録も購入しました。
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表紙がとても綺麗
手元に置いて眺めていたいですね
しかし、展示されていた全ての写本が図録に載っている訳ではないようです。
あれ写真撮っておけば良かったという作品が何点かあります。
それでも、この日の宿に持ち込んで中をじっくり見渡す時間は至福の時でした。
ルドンに出会えた小企画展
さて、映像見れずに落ち込んでいた私ですが、気を取り直して常設展へ。
企画展を見た後、常設展も観れるのは、国立西洋美術館のとても良いところですねー。
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常設展入口すぐの天井が
好きです
中は外国人観光客で賑わい過ぎ感があり(平日でした)ちょっと残念でしたが、それでも名画を観られるのは嬉しいです。
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「罠にかかった狐」
この絵、目の前で狐がもがいているようで、
見入ってしまいます
実は以前からオディロン・ルドンの絵にいつか会いたいと思っていました。
不思議な絵を描く画家だなぁと思っていて、可愛さと寂しさが伝わって来て何とも言えないキューっとなる感じがあります。
絵画ではなく、リトグラフだったのですが、彼の作品がなんとここに!(というか、小企画展、「西洋版画を視る リトグラフ:石版からひろがるイメージ」展です)
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「キリスト」
やっぱり寂しさが伝わって来て、切なくなります。
いつかルドンの絵をもっと観てみたいです。
相棒ができました
この日、上野駅を背に国立西洋美術館にまっしぐらだった私なのですが、どういう訳かチケットセンターに吸い寄せられ、カウンター横で目があってしまったのです。
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絶対やるでしょ!
ということで、ゲットしたのがこちらの相棒です。
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かわいさが伝わるといいです
家の机の窓際で私をいつも見守ってくれています。
ここまで読んでくださりありがとうございます♪
またnote書きます。