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映画『豚と軍艦』 (ネタバレ感想文 )まさかの娯楽大作
今村昌平初期(日活時代)の傑作と名高い『豚と軍艦』。初鑑賞。イマヘイは私の課題なんですよ。観てない作品(観るべき作品)が多すぎる。
ウチのヨメに謎の「長門裕之ブーム」が起きていたところに、ちょうどラピュタ阿佐ヶ谷で長門裕之特集上映があったもんだから足を運びました。
いろいろ驚かされる映画でした。
丹波哲郎と大坂志郎と加藤武と小沢昭一が西村晃をドツキ回すって、どんな豪華キャストよ。そもそも主役は津川雅彦の兄貴と芳村真理の妹だし(<面倒くさい言い方)。てゆーか、吉村実子17歳デビュー作だってよ。いろいろビックリ。
姫田カメラにも驚かされます。
なにその移動?パンフォーカスもやってる?麻雀シーンの主観カメラとかなにそれ?
この当時の技術でこの撮影は驚愕。あー、『復讐するは我にあり』(79年)の感想でも姫田カメラ面白いって書いてるな。
そして何より、私はもっと「重い話」を想像してたんです。そしたらめちゃくちゃ娯楽活劇だった。それが一番ビックリ。
この映画は1961年(昭和36年)製作ですが、舞台設定はリアルタイムなのかな?
んー、娼婦が米兵に吐く台詞で「朝鮮で死んじまえばよかったんだ!」って言っている(と思う。聞き取りにくい)から、朝鮮戦争(1950-53年)直後、50年代後半あたりの設定なんじゃないのかなあ。
子供が日本の成長を称える文章を読むでしょ。教科書か何かかなあ?経済白書が「もはや戦後ではない」と記述したのが1956年なので、その辺りの舞台設定じゃないかと推測します。
いずれにせよ、大島渚なら『青春残酷物語』(60年)ですよ。闘う姿勢をゴリゴリ全面に押し出し「社会派」「政治闘争」重視の大島渚に対し、イマヘイは「人間のバイタリティ」に重点を置く。「生命力」と言ってもいい。大島渚が「思想」なら今村昌平は「本能」。
さらにイマヘイは、したたかで逞しい「女性の力強さ」を描きます。サディスティック溝口が描く女性や成瀬巳喜男が描く女性とは全然違う。
でもね、悪女じゃないんですよ。女性讃歌にも思えるのです。
(2021.08.12 ラピュタ阿佐ヶ谷にて鑑賞 ★★★★☆)
監督:今村昌平/1961年 日